2011/10/22

LD50と許容差の疑問

Kazz先生の掲示板
http://www2.ezbbs.net/12/kazz/
にも投稿しましたが、記録のためこちらにも転載します。

機能限界であるLD50から安全率や許容差を求めるときに、以前から疑問に思っていたことがありますので、皆様のご意見をいただきたく。

放射能の例でいきますと、LD50=4000mSvが仮に正しいとした場合に、個人差による放射能への耐性は4000mSvの周りでばらつきますね。

このとき、その個人差の大きさにかかわらず、許容差が一意に決まる理屈がいまいちすっきりと理解できません。

LD50が同じでも、人の放射能への耐性が大きく分布しているとき(例えば100~8000mSv)と、分布が小さいとき(例えば3500~4500mSv)とで、安全率は同じでよいのでしょうか?
(感覚的には、100mSvで死んでしまう人がいる前者のほうは安全率を大きくとりたい)

これは線量を許容値内に維持するコストより人命コストが十分大きいことから来る錯覚なのかもしれませんが。。。

CH.ラ・ヴェリエール2009

 秋の健康診断が終わった(そのために2日間禁酒した:短っ!)。昨年より通勤に徒歩を取り入れるなど、健康管理にはそれなりに気を使ってきたせいか、思いのほか尿酸値が改善傾向あり、ちょっと嬉しい。

 それでというわけでもないのだが(結果がどうあっても飲むくせに)、涼しくなってくると赤ワインの季節、ということで梅田に出たついでに成城石井に寄って、赤ワインとつまみを調達。

 ワインはCH.ラ・ヴェリエール2009(ボルドーシューペリュール)で、樹齢30年以上の葡萄を使ったもの。2009なので若いのかな?と思いつつも、店のオススメだったので即購入(1500円くらいだったかと)。ついでに、写真にあるアスピック(ハムなどをゼリー寄せしたもの)とスモークタンを。それに野菜がたっぷりとれるラタトゥユ。奥は胃によいキャベツがっつりのアンチョビパスタ。うめぇ。

 食欲・読書・芸術(書道)・スポーツ(体力づくり)、すべて当てはまりの秋です。

外乱の代用としての内乱なのか、その逆なのか

 ノイズ因子の話である。いろんな教科書を読んできたが、内乱(劣化や個体ばらつき=寸法や物性値の変化・変動)と外乱(市場での使用用件・使用環境など)の区別が書いてあって、その関係が書いてあるものは大抵、以下のような記述がある。

「実物の機能性評価では外乱を与える(ことが多い)が、シミュレーションによる評価では、外乱を与えることができないので、外乱の代用として内乱を与える

 逆なのではなないだろうか。本来、ロバストネスを確認・確保するためには、未知の外乱を含めた将来/未知の予測、未然防止の考え方が入っていなければならないはずである。そのためには、外乱を想定するのではなく、結果系のノイズとしての内乱を考えて評価する、というのが原則ではないだろうか。

 コンピュータが発達する以前の評価では、実物によるそれが多かったため、本当はさまざまな結果としての内乱の組み合わせを取りたかったのだが、実物で内乱を取ることは容易ではなかったため(理由は少し考えれば分かるはず)、そのようなさまざまな内乱の組み合わせを発生できるような外乱の組み合わせで代用した、のではないだろうか(ITEQのN氏は最低10以上の外乱を考えて評価すべしと言っている)。

したがって、

 「実物では、内乱の代用として外乱を与える

のである。現在、容易にコンピュータを扱えるようになって、機能性評価もコンピュータシミュレーションで行えるようになった。その場合は、当初のロバストネスの考え方のとおり、内乱を与えればよいのである。決して、実物の評価で与える外乱の代用としての内乱ではない、はずである。

 実物に外乱を与える評価方法ほうを正と考えてしまうのは、多くの信頼性試験や規格試験が、そのようになっているからであり、その連想から「実物は外乱、シミュレーションは外乱の代わりに内乱」という倒錯した誤解が生じているように思えてならない。

 このことは細かい違いを論っているのではない。なぜ品質工学で将来/未知の予測ができるのか、未然防止ができるのか、のロジックにかかわる問題である。

2011/10/17

QC検定1級合格

QC検定の合格発表が本日あり、9月に受験した1級で合格いたしました!

論述式試験の採点方法が不明だったので、発表があるまでは安心はしていませんでしたが、とにかくよかったです。

次の目標は・・・実は決まっていますが、今は内緒。
来年の受験に向けてまた頑張ります。

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追記

下記に合格率が出ていました。16.73%でした。
http://www.jsa.or.jp/kentei/qc/pdf/h23-2jyoukyou.pdf

2011/10/09

「東日本大震災と品質工学の役割」を聴講して+【今日の言葉100】

 先日の関西地区品質工学シンポジウムで、アルプス電気の谷本技術顧問より「東日本大震災と品質工学の役割」と題して講演があった。結論は出ていないが一部感想を示したい。

 講演のなかで「1000年に一度の災害にいくらコストをかけるのか」という問題提起が行われた。対策を品質工学的に言えば損失関数と安全設計コストの話になるのであるが、下名が思ったことの1つは対策の話ではなく、今後「総損失が最小になるような対策を」ということが、世の中的にますます通じにくくなるのではないか、という懸念である。

 谷本氏の指摘の前にも、田口玄一博士は「100年に一度の災害のために過剰な構造物を作るのは経済的でない」という趣旨のことを述べていた(出展調査中)。しかし、今回は1000年に一度が起こってしまったのである。これでは、いよいよ「万全の対策」「100%の安全を」というスローガンが叫ばれ、損失燗素敵な総コスト最小の考え方が等閑されるおそれがまずます高まった。「人命のコストは○億円」という言い方も、世論(=sentiment、≠輿論)は許さない風潮になる。これをどうしたものか。「仕分け人」の見識と、世論の理解が試されるところである。

 2つ目の感想に関することは、「今回も技術は災害を防ぎきれなかった」、「科学・技術への信頼が揺らいでいる」・・・という主旨の論を耳にするにつけ、日本人の世論にさまざまな自覚が足りないのではないかということだ。もともと人が行うことに完全はないのだということに対する無自覚、技術のおかげで実は今回の被害はかなり小さかったのかもしれない(Ex.走行中の新幹線での事故はなかった等)という可能性への無自覚、そもそも原発に限らず科学や技術の成果は社会の選択を経て世の中に出てきているということへの無自覚・・・などである。

 日本人の精神が本当の意味で近代化していない、というのは言い古されていることかもしれないが、自治体や政府の非をとがめるのも、事故が起こってからこの技術はまずいと非難するのもあまりに容易で、カタルシスにはなっても前には進めない。

 品質工学を含めて現在の技術では今回の地震も予測できなかったし、有効な未然防止もできなかった。その事実を謙虚に受け止め、企業、学会、市民、そして個人として、具体的に何ができるかを考えなければならない。エネルギーシステムや社会システムを提供する企業の一員として、そのようなことを漠と考えた次第である。

 しかしマリナーズのイチローいわく、
「あこがれを持ちすぎて、自分の可能性をつぶしてしまう人はたくさんいます。自分の持っている能力を活かすことができれば、可能性が広がると思います。」

 凡人は背伸びはしすぎないように、1つ1つ積み重ねれば、いつかは程遠い理想に少しでも近づくと信じるようにしたい。

2011/10/08

【今日の言葉099】

私たちは常に何かを受け取っているということです。そしてその人間の経験と知識の泉に 何かをお返しができるようなものを作るのは、すばらしい気分です。

スティーブ・ジョブズ---Apple社の創設者の一人。56歳の若さで永眠。

オリジナルなものを生み出して、社会に何かお返しができる、というのは商品やサービスを開発する者の冥利ですよね。

2011/10/02

【今日の言葉098】

あんまり誰かを崇拝するということは、自分の自由を失うことなんだ。

「ムーミン谷の仲間たち」よりスナフキンの言葉

最寄の居酒屋「炙り家ええねん」(番外編)

 ワイン以外のお酒はあまり紹介しない当ブログですが、(私をよく知っている方はご存知のように)ほとんどどんな酒でもたしなみます。そろそろ涼しくなってきたということで、娘の運動会帰り(昨年も同じ時にいったので1年ぶり)に自宅から最寄の居酒屋「炙り家ええねん」に行ってきました。

 もともと家族での夜の外食は普段は少ない家ですので、近隣の店とはいうのは昼食を除いてはほとんどいかないわけです。昨年の運動会終わりに、当時小1の娘が「学校にいくの途中の店で気になるところがあるので、行ってみたい」というので、昨年、今年と運動会終わりに行ってみました。

 写真のとおり、結構渋い洒落た感じの居酒屋(和風ダイニング)で、「なんで小1の娘が?」と言う店なのですがまず店に行ってから知ったことなのですが、こんな近くの店のマスターが、『ぐるなびシェフ BEST OF MENU 2010』で全国優勝。なんという嗅覚(将来酒飲み間違いなし!)

 実際、コンテストで優勝した料理ももちろん、ほかの料理もグレードが高く、大変満足できました。今回は、地元の「老松」のぬる燗(写真なし)からはじめて、最後は摂州男山の冷酒で舌鼓をうちました。

2011/10/01

ジェローム・キヨ・コート・デュ・ローヌ

少し前になるが、我が妻のン十歳の誕生日に、コード・デュ・ローヌを買ってきて祝った。
普段の赤ワインと言えばいかり肩(ボルドー)がほとんどだが、たまにはやや贅沢に東地区のワインもいい(もちろんおいしいのだが、それなりのワインはそれなりに値が張る)。

ミディアムボディでベリー系の果実味が印象的。

料理はこれまでにも何度か出ていますが、メインは近くの丹波牛専門店おがわ屋さんの、赤味のステーキと、タコ・セロリ・ポテトのマリネ。ベーコンフランスも合いますね。

ただ、最近(10月1日現在)夜が涼しくなってきたので、やはり日本酒のぬる燗がよい季節になってきましたねぇ。

【今日の言葉097】

現存の理論系に都合の悪いと思われるような事実が観察されても、そのことがそのまま、旧来の理論系の転覆に直接連なることはほとんどなく、たかだか、その多少の手直しで済まされてしまうことが多い。(中略)新しい理論体系を樹立するという営みは、どのような事実が観察されたか、ということとは直接関係をもたないような形で起こることが多い。

村上陽一郎「科学・哲学・信仰」より

超光速かもしれないニュートリノが発見されても、すぐさま論理系の転覆につながらないのはこのため(もちろん計測精度の問題が残っていることもある)。
物理学も品質工学も、きわめて多くの理論や原理が組み合わされた複合ネットワークであることは同じで、観察事実はこのような理論ネットワークとの位置関係によって、意味づけられることになる。つまり、「観察事実の意味」は、人間の側の作り上げ作業に依存している。
その意味で本書では「理論を打ち倒すのは事実ではなくて理論である」と結論している。