2015/05/31

日本品質管理学会で初発表

5月30日(土)に東京の日本科学技術連盟にて、日本品質管理学会 第107回研究発表大会が開催され、約40件のテーマで研究発表された。下名も先に紹介した「クロスチェック付きなぜなぜ分析(XCN)」の内容で20分の発表、5分の質疑応答を行った。聴講者は40名程度であったと思う。

2名のコンサルタントの方からご質問をいただいた。

1つ目は、自動車業界ではISOやTS規格でFMEAの実施が要求されているが、それとの整合はどのうようになるか、というもの。
回答:弊社も自動車メーカ向けに車載用機器や部品を製造販売しているので、そのような製品群についてはこれまでどおり、要求にしたがってFMEAを実施している。XCNがFMEAに取って代わるという意味ではない。システム製品では部品点数が膨大になるため、FMEAではなくXCNが有用となる(車載用製品以外の)製品群に主に適用している。

2つ目は、XCNではFMEAのように重篤度(Criticality)や可能性の評価はないのかというもの。
回答:予稿集本文や口頭での説明は割愛したが、予稿集のチェックリストの図でも示しているように、外乱発生の頻度(可能性)と、内乱のシステム機能への影響度(重篤度)は評価する仕組みがある。

そのほか、タカタのエアバッグの事故はFMEAで防げたかなどの話題となり、「最終的には人智だけでは、あるいは経済性の制約から信頼性を100%確保することは不可能であり、信頼性設計と安全設計の両方を行うことで対応していくことが重要」とコメントした。

補足
安全設計はそのシステムの機能はだめになったとしても、安全に故障ようにということである。しかし発表のあと考えたことであるが、エアバッグのような、そのものが安全装置のような場合は、それが故障することと、安全に壊れることとは両立しない概念である。このような場合の安全設計とはいかなるものであろうか。シートベルトの着用や車室のひしゃげ方の設計など、いくつかの安全装置で全体の安全性を担保するということしかないのであろうか。


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

2015/05/23

告知:品質工学入門セミナー(関西)

来る6月3日(水)~4日(木)に、日本規格協会(関西支部)にて、恒例の品質工学セミナーを開催します。
(関西品質工学研究会の方は、維持会員価格の半額を補助)

さて、今回は下記投稿にありました、三菱電機オリジナル手法であるXCN(クロスチェック付きなぜなぜ分析)を、報文4ページを用いて紹介します(ノイズ因子抽出の1手法として紹介)。手法考案者による口頭説明、質疑応答を社外セミナーで実施するのは本邦初ですので(海外でもありませんが・・・)、ご興味のあるかたはこちらもお楽しみにしてください。もちろん、プロのコンサルタントの方の聴講も歓迎しています。


(以下、前回案内から転載)

関西の研究会でも「機能の考えかたが分からない」「基本機能とは?目的機能とは?それらの違いは?」など、初学者にとっては理解しにくい、それでいてあまりテキストには詳しく説明がない疑問がでてきました。

品質工学の入門で重要なのは、技術における品質の考え方と、品質(機能の安定性)を評価するための3種の神器(機能、ノイズ、SN比)をしっかり押さえることです。
特に、機能についてはこの講座で、オリジナルの「考えるためのコツ」を伝授します。

今回も、下名と、同社の鐡見氏の2名体制で、「熱い」講義を提供したいと考えております。
ご興味のあるかたは、上記Webのフォームに入力いただくか、日本規格協会関西支部(担当;秋枝さん)までご連絡ください。

また、今年は8月に福岡でも開催しますので、近県の方はぜひご検討ください。

<本コースの特徴>
●品質工学の全体像がつかめる
●基本や本質が理解できる
 ・セミナー指定教科書「はじめての品質工学」以前の、あまり本には書いていないけど“本当は大事なこと、あまり言ってくれないこと”が分かる
 ・実際に困る点への対応や、ちょっとしたコツが分かる
 ・どういう場面で品質工学(特に、機能性評価とパラメータ設計)を使うのかが分かる
 ・演習で考え方を体感できる
●計算やツールに対するフォローもばっちり
 ・帰ってすぐ使える「パラメータ設計実験シート(Excel)」付き
#次回以降の配付は未定です。

<本品質工学セミナーの基本方針>
●とにかく、基本である「機能性評価」が大事!
 これをシッカリ理解して帰っていただきます。
 これが分からずパラメータ設計に走ってはいけません。
●実際に便利なのは「パラメータ設計」!
 すぐに理解しにくい「直交表」「SN比」「要因効果図」は
 ツール(無償配布)に任せて、まず実務で“使ってみる”
 ことが出来るようになることを目標とします。
●それ以外の手法は、概要を押さえていただきます。

 本品質工学セミナー用に書き下ろした最新のテキストを使用します。よいセミナーにしたいと思っていますので、初心者の方、もう一度品質工学の基礎を学びなおしたい方、社内での教えかたのヒントを得たい方など、ご参加をお待ちしております。

2015/05/13

三菱電機XCN手法が日刊工業新聞に掲載

以前の記事でご紹介した、設計段階で品質リスクを未然に抽出する、三菱電機のXCN手法が、2015年5月13日付けの日刊工業新聞に掲載されました。

XCN手法の概要のほか、弊社で推進している設計品質向上(DQI)活動の紹介も、今回初めて公開されました。設計品質向上のリーダ(キーマン)を今年度中に1000人育成し、将来的には弊社の技術者12000人に展開していく計画です。

■掲載記事
・三菱電機、ツール開発 品質のリスクXCNで予測
 日刊工業新聞 2015年05月13日 朝刊 10面 4段 図あり

 日刊工業新聞 Bussiness Line 2015年05月13日
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0320150513bjao.html


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

2015/05/04

パラメータ設計とT法を融合した開発手法の提案(細川氏)

日本品質管理学会誌「品質」のvol.45、No.2、pp.64-72(2015)に、リコーの細川氏らによって、応用研究論文「パラメータ設計とT法を融合した開発手法の提案」が投稿された。この内容のベースは、品質工学会の2012年の品質工学研究発表大会(QES2012)で「T法によって拡張されたパラメータ・スタディー」として発表されていた(ちょうど、下名の発表の1つ前だったのだ)。

今回、品質工学誌ではなく、品質誌に投稿された意図を知るにはご本人にうかがうしかないが、それはともかく、本論文を読んで思う所がいくつかあったので、記録に残しておきたい。

QES2012では「パラメータスタディー」となっており、今回は「パラメータ設計」と変更になっているが、内容的には前者の表現ほうがしっくりくる。すなわち、氏が提案している方法論は、品質工学で目指している再現性の確認や、制御因子の水準最適化を行うパラメータ設計ではないということである。これは論文を精読するまでは下名も気付いていなかったが、氏も品質誌の論文内で「直交表の全ての行を実験する必要はない」「利得の再現性評価のための確認実験の必要はない」「(実験の打ち切りによって)実験期間の短縮に大きく貢献できる」などと記しているとおりである(その意味で、本論文の方法論がパラメータ設計から逸脱しているという批判は的外れであるーー論文タイトルに「パラメータ設計」と挙がっていること以外はーー)。

一見、パラメータ設計のような要因配置になっているこの実験計画がパラメータ設計でないとすれば、どういことなのかということがこの論文、またこのblogの記事の主旨である。

本方法では直交表を多数の現象説明因子ーーメカニズムの記述に関係するものであり、この中に「システム全体の評価が可能なもの」である「基本機能」に関係する因子が含まれていることに注意するーーの変化のバラエティを得るのに活用している。制御因子が直交表のいくつかの行の指示する組み合わせで設計された場合(このあたりはパラメータ設計的ではあるが本質ではない)、現象説明因子は制御因子に対して従属であるために、現象説明因子はいろいろな値にふるまう。

現象説明因子のふるまいと、目的特性(SN比や、計測特性yの分散)の関係を調べることで、目的特性がなぜ良くなった(悪くなった)のかを知ることができる。ここで、制御因子を割り付けた直交表の行の一部しか実験おらず、また一般には現象説明因子は多数あるので、現象説明因子を説明変数とした目的特性の解析は、過飽和計画となる。そこで、ここにT法をもちいて、現象説明因子と目的特性の解析を紐解く(T法が過飽和計画の一種であることは、このblogの記事(1)(2)でも指摘したとおりである)。過飽和計画の場合、たまたま目的特性のふるまいを説明してしまう因子が出てくるリスクがあるがその対処方法も詳しく記載されおり、まさにかゆい所に手が届いている。

さて、下名が感銘をうけたのはこれからだ。原因説明因子には、基本機能に関係する因子が含まれていれば、システム全体の改善指標である目的特性(SN比等)とその因子の挙動とは相関関係にあるはずである。そのような因子を見つけ出せれば、【実験的に基本機能を見出すことができる】のである。あるコンサルタントからは「基本機能とは発明である」「センスが必要」などともいわれたことがあるが、この方法論を用いれば、基本機能をシステマチックにーーもちろん技術が創造である以上、工学的・技術的な発明やセンスは必要なのは変わらないがーー見出すことができる。これはこの方法論が示す極めて重要かつ独創的なポイントであり、技術開発における機能定義の考え方に新しい視点をもたらす。さらには「基本機能とはなにか」「どう定義すべきか」という品質工学における永遠のテーマに対する具体的行動を提供するものである。

株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)