2018/02/19

MS社の入社試験問題と言語分析哲学?

Facebookのお友達の中で少し盛り上がったので、こちらに転載して少し考察を。

窓を作るMS社の入社面接で以下のような問題がでたそうだ。筆者は、問題の意図が分からず、そのまま「30じゃないの?」と思ってしまった(浅はかダネー)。
※この次に答えが出てきますので、考えたい方はここでいったんストップ!

出典:KADOKAWA社「笑う数学」より

クイズを出すことがこの投稿の意図ではないので、最初にこの本に載っていた回答を要約すると、
「高さが最大となる直角三角形は、直角二等辺三角形なので、斜辺が10cmだと高さは最大で5cmとなる。したがって高さ6㎝の直角三角形は存在しないので、求められない。」
というものです。

筆者の印象は「くそぅ!ひっかかった!」という素朴なもの。
この投稿に対してのFacebookでのコメントはさまざま。

①「ひっくり返した時に6が9に見えるので10×9÷2をしてしまうとか?」
②「 何で企業面接で、小学生レベルの問題を出してきたのかと(コンテキストから)警戒できるかどうか。正答に至らなくても、その辺りは観察したいところです。」
③「平面上では成り立たない。条件を満たす曲面が存在するのでしょうか?(誰もユークリッド平面とは言ってませんヨ、的な)」
④「答えを確認したあとは、『もしどうしてもこの問題を通して答えを出さなければならないとしたら、私だったらどうするかな。』とおもいました。」
⑤「そもそも無い物をキッパリと求めなさい。と言うのは、問題のクオリティ面でアウト。」

みなさんさすがですね。①はユーモアセンスあり、②は出題のコンテキストを疑う、③④は隠れた前提が無いかまでさかのぼって考える、⑤は存在しないことを指摘した上で、語用論的な批判に及んでいます。これらは「30」と即答した筆者よりも何歩もリードしていると言えるでしょう。

で、気になったのはここから。⑤は非存在を指示対象とする批判で、言語哲学的です。
「現在のフランスの王はハゲ」のように「文章中の指示対象(現在のフランスの王)が存在しない場合、その文章は意味を成すのか、真・偽の値をもつのか」という問題はラッセルの記述理論で一応の解決を見ています。「有意味かつ偽」という結論です(もちろん批判もあります、特に今回の問題のような命令文については)。

MS社はひょっとするとそこを突いているのかもしれません。そこで、受験者は下のように答えることで目的を達成できる=自分の優秀性をアピールできる可能性があります。

受験者「その問題文前半の『この三角形』は『Xが図示された直角三角形であり、そのようなXが存在する』の省略形です。これは偽なので、問題文前半は偽となり、それを指示する後半の命令文『Xの面積を求めなさい』を実行することはできません。」

これぐらいの変人、いや論理学やメタ思考を操れる人間でないとこの会社には採用されないのかもしれませんね。

…しかし、これでは説明がくどいし、ユーモアのセンスに欠けるのではないか。

そこでMS社のそっけないユーザインターフェース風に、以下のようなエラーメッセージを一言ぶちまけてはどうだろうか。

受験者「オブジェクトが見つかりません。」