2022/05/31

設計・開発業務でこんなこと起こっていませんか~悪魔のサイクル~③

 (つづき) 

 お客様のところで不具合となった製品は,交換や修理という形で処理がとられます.設計起因の不具合の場合は,まだ不具合が発生していない多数の製品についても将来不具合が波及する可能性がありますので,メンテナンスや改修を行ったり,場合によってはリコールで製品を回収する場合もあります.応急の処置後は,その不具合の発生原因を究明する必要があります.もともと不具合を出そうとは思ってはいないわけですから,未知,無知,想定外の要因であることも多く,原因究明に時間がかかります.

 不具合の原因がみつかれば,それをこれまでの経験や知識を使って改善します.いわゆる職人的な経験や技能によって修正しなければならないこともあるかもしれません.発生した不具合についてはこれでいったん治まったように見えます.しかし注意しなければならないのは,今回の対策は「発生した不具合」に対してのみ有効だということです.それ以外の故障モード(壊れ方)や,原因に対しては十分に対策が打てていないのです.本質的な設計改善になっていないという心の傷を持ちながらも,その設計が次の開発のベースモデルとなります.つまり不具合の「種」は仕込まれたまま,次の市場での不具合発生の機会をうかがっているのです.試験でわからない不具合の種は,さまざまな条件で多数のお客様が使用した結果,初めてわかることになるのです.




図表1.4.1 設計・開発における「悪魔のサイクル」



2022/05/30

設計・開発業務でこんなこと起こっていませんか~悪魔のサイクル~②

(つづき) 

 設計が(一応)完了すれば,製品の試作を行い,信頼性試験や耐久試験などの規定に則った試験を行います.1.5節でも触れますが,このような試験は目標寿命に対する判定を行ったり,故障が発生するまで試験したりするため非常に時間がかかります.しかし規定にのっとった試験のため必ず実施する必要があります.1回目の試験で合格すればまだいいのですが,不合格になるとその原因を調べて,設計を手直しするという手戻りが発生します.試験はもう一度実施する必要がありますので,このロスは非常に大きなものです.

 開発期間が延びて,納期が迫ってきます.納期までに「設計した品質」が「設計すべき設計」の目標値を達成できない場合は,納期が守れなくなります.お客様に迷惑がかかるか,あるいは季節商品の場合は市場投入ができずに商機を逃すこともありえます.あるいは,納期必達の場合は,当初の目標としていたスペックを落としたり,お客様の使用条件や使用環境を制限する形で製品を出荷することになります.あるいは,改修不能でこのままでは製品にできないという場合は,開発自体を断念する場合もあります.これらはお客様に迷惑をかけるだけでなく,大きく経営上のリスクとしてのしかかってきます.





図表1.4.1 設計・開発における「悪魔のサイクル」

 製品が合格品として出荷されますが,製品の出来によっては,お客様の使用段階で不具合(故障,機能低下)が発生します.出荷前の試験で合格したのにもかかわらず,不具合が起こるのです.「設計した品質」のレベルが不十分であると,温度変化や繰り返し加わる力,長期間の使用による劣化などによって,製品の働きである機能が変動したり,ばらついたりして,最終的には故障にいたります.形ある製品は,いつかは壊れるものですが,お客様が期待していた寿命よりも短期間で壊れてしまっては迷惑がかかり,クレームとなります.(つづく)


2022/05/29

設計・開発業務でこんなこと起こっていませんか~悪魔のサイクル~①

  視点をみなさんの職場,設計・開発の現場に移して,現状の仕事の進め方の考察をしていきましょう.これから説明する内容はワーストケースですが,みなさんの仕事の進め方にも当てはまり,「あるある」と思えたことは,忘れないようにより具体的にメモしておいてください.そしてそのあと,その現状が事実なのかどうかを現場・現実・現物(3現,つまりデータ)で押えておくことが重要です.これは,改善や問題解決の計画を立案する際に,最初に考えるべきことだからです.

  図1-4-1は,一般的な設計・開発のプロセス(仕事の進め方)における現状と問題点を示しています.これを「悪魔のサイクル」とよんでいます.サイクルですので,同じような出来事が開発のたびに起こります.順にみていきましょう.




図表1.4.1 設計・開発における「悪魔のサイクル」

 まず時計で12時の位置にある「リソース不足での設計・開発」から説明をはじめます.設計・開発部門におけるリソース(主にマンパワー,時間,お金)が十分にあってゆったりと仕事が進められる職場はほとんどありません.経営者は必要最小限のリソースで最大の成果を挙げたいと考えています.技術者は案件や対象機種を多くかかえ,また新規で未知の部分も多いため,検討に時間がかかります.設計仕様の変更を要求される場合もあります.計算や実験での検討時間が足りない場合は,過去の設計流用ですませたり,試作試験での検証の結論を先送りしたりして,不完全なまま次のステップに進んでしまいます.デザインレビューにも問題点がありそうです.十分検討時間を取るために,開発を早く始めればよいのですが,すでに出荷した製品のトラブル対応に追われる結果,現在の開発スタートも遅れてしまいます.(つづく)


2022/05/28

「設計品質」とは何だ?②

(つづき)

 ところが,そのような「設計すべき」ものである「ねらい」がどのくらい設計図面に反映されたか,という品質もあります.これは品質目標ではなく,設計の結果です.この品質の中核となるものが,さまざまな使用条件や環境に対する機能の安定性です.いくら製造が図面通り正確に作ったとしても,この機能の安定性が設計で確保されていなければ,安定性の悪い製品が量産されて大量に出ていくだけです.そのあと,これらがお客様の使用段階で不具合を発生させます.

 製造段階の検査でわかるのは,部品の寸法や外観,完成品の性能的な特性(定格出力,騒音など)だけです.「設計した品質」が正しいかどうかは,製造現場では図面が正しいとしていますので,わかりません.「設計した品質」の確認や確保は設計・開発段階でしかできません(あるいは,使用段階で露呈するかです).つまり外観や性能だけでなく,機能の安定性まで確保した設計を,図面に反映させておかなければならないのです.

 そうしますと,一言で設計品質といっても,市場やお客様の要求を反映した企画としての設計品質は「ねらいの品質」,「品質目標」,「設計すべき品質」といえますし,設計した結果(図面)がどれくらいねらいに当たっているのか,その図面通りに作られた製品の品質は,「設計のできばえの品質」,「設計した品質」といって区別するとわかりやすくなります(図表1.3.1).設計した結果得られる機能の安定性は「設計した品質」の一部を指しています.断りなく「設計品質」といえば,「設計段階で決まる品質」程度の広い意味を表すこととします.

図表1.3.1 設計品質の分類と定義(筆者による分類)




2022/05/27

「設計品質」とは何だ?①

「設計品質」という言葉を筆よく使います.しかし,さまざまな人がいろんな文脈で使用するため,設計段階で確保すべき品質なのか,設計者の品質なのか,設計プロセスのしくみの品質なのか….さらに「品質設計」という言葉まで飛び出してくるので,頭がこんがらがります.ちなみに「設計品質」の定義 を調べると,以下のように記載されています. 


「品質特性に対する品質目標(JIS Q 9025).製造の目標としてねらった品質.ねらいの品質ともいう.(中略)また,実現された品質を製造品質あるいはできばえの品質という」

設計品質は「ねらいの品質」というので,お客様の期待を反映して何を設計すべきかという,企画の内容を指していることになります.それと対比させて「できばえの品質」は,上記の設計品質をねらって製造した,製品の実際の品質ということです.製造段階では部品寸法や材料,作業などのばらつきがありますので,厳密に図面の中央値どおりには作れません.中には図面の公差範囲をはずれて不適合品(工程内不良品)もでてきます.できばえの品質を測る指標として,不適合品率(工程内不良率)があります.

 設計品質についてもう少し掘り下げましょう.製造は「設計した」結果である図面にしたがって,その通りに部品や製品を作ります.指定された図面や,検査規格などにもとづいて,前記の「できばえの品質」を管理します.では,その「設計した」図面は正しいのでしょうか.これにも品質があります.上記の設計品質(ねらいの品質)には,まず「設計すべき」ものが正しいかどうかの品質を指しています.市場調査や製品企画で決められる目標ですね.上記のJISの定義はこれを表しています.(つづく)


2022/05/26

開発の後期になるほど高くつく対策コスト

 製品が出荷された後の使用段階での不具合やクレームの主要因は,設計・開発段階にあることはこれまで述べてきました.設計・開発段階での検討もれや考え方の修正はどの段階で行えばよいのでしょうか.図表1.2.1は,設計・開発段階での対策コストを1とした場合の,それ以降での修正コストの比率および金額を示しています.縦軸が対数(1目盛り10倍)になっていることに注意してください.

 設計・開発段階で不具合が発覚した場合の対策コストを1とすると,生産開始前でその10倍,製品出荷前で500倍,市場出荷後では実に10,000倍もの修正コストがかかることが示されています.製品の規模にもよりますが,この例では設計・開発段階に間違いと気づいた場合の修正コストは$30なっており,図面の訂正にかかる時間の人件費相当と計算されています.これが市場出荷後の不具合発覚となると,発生コストは$1,000,000すなわち1億円レベルと試算されているのです.つまり,設計・開発段階での見落としや間違いが市場出荷後まで見つからず,お客様の使用段階で発生してしまった場合,多くの場合製品全数への対応(交換,修理,保証など)になるため,膨大な対策費用が必要となるのです.人命が係わるような製品や,社会システムなどでは,社会に与える損失の大きさを考えると,さらに対策コストが大きくなることは明白です.

 この分析からもわかるように,不具合の発覚が後になるほど対策コストは文字通り指数関数的に大きくなっていきますので,品質への対応はできるだけ早い段階,できれば設計・開発の初期段階で行っておきたいわけです.技術者は優秀に問題を解きますので,見落としや間違いがわかりさえすれば,すぐにその対策を考えて,設計変更する,方式を変えるなどの対策を打てます.ですので,大事なことはいかに設計・開発の初期段階で,品質を「見える化」するかではないしょうか.そこで以降,「品質を見える化」するとはどういうことなのかを考えていきましょう.



図表1.2.1 製品開発の各ステップにおける不具合発生時のコスト

出典;H.Hamada(1991)Euro Pace Quality Forum.

2022/05/25

品質工学で扱う「品質」とは④

  (つづき)

 さいごに,グラフの一番下に示した,③の曲線です.お客様はカタログに記載されたとおりの「性能」を期待していますので,新品の段階や,あるいは使用しているうちに性能が低下してきたり,故障して性能や機能が維持できなくなったりすると,クレームになります.通常私たちが製品を使う際は,期待した期間(たとえば家電製品なら7~15年くらい)は新品の時に備わっていた性能は維持してほしいと考えます.蛍光灯やランプであれば明るさは変わらないでほしいし(実際は暗くなります),パソコンの処理速度は変わらないでほしい(実際はメモリへのアクセスなどが遅くなります)と考えます.また劣化の問題だけでなく,使い方の違いによって性能が変化してほしくないとも考えます.たとえば,自動車のブレーキは晴れの日の乾いた路面でも,雨の日の濡れた路面でも同じように効いてほしいのです(実際は異なります).このように,「新品と同じ性能を維持する」,「どのような条件でも同じ性能を発揮する」というのは,言われてみればそのとおりで,「あたりまえ」と感じます.

 このような品質のことを「あたりまえ品質」といいます(そのままですが,わかりやすいネーミングですね!).変化しない,故障しないで機能するのがあたりまえなのですから,充足度が上がっても(グラフの右側にいくほど故障が少ない),満足度が「あたりまえ」以上になることはありません.逆にそれが達成できなかったとき(グラフの左側)に満足度は大きくマイナスに振れます.その意味では,マイナスしかない品質です.このような種類の品質は,魅力的品質とは逆で,誰もが欲しくないと考えている品質です(お客様によって感じ方の程度は異なります).不具合や変化・変動はゼロが望ましいので,マーケティングや企画は関係なく,純粋に技術的な問題として取り扱います.「信頼性」や「耐久性」や「安定性」に関係する品質です.設計・開発段階での検討がまずいと,このような「あたりまえ品質」が十分でない悪い製品が出荷されてしまい,お客様に迷惑をかけることになります.

 以上3種類の品質について説明しましたが,実は品質工学で扱う品質というのは,主に「あたりまえ品質」の部分です.もちろん,性能抜きにしては製品や技術の評価はありえませんので,「一元的品質」も関係しますが,性能の確保は,品質工学の評価や改善の直接の対象ではないのです.「一元的品質」は,品質工学を適用する前の,機能設計と言われる段階で事前に確保しておくべきことです.要するに,「普通の条件でちゃんと動く」ものを作る段階です.品質工学で扱う「あたりまえ品質」は,そのような「ちゃんと動く」状態が,使用による劣化や使用条件によって左右されないかを扱うので,技術の仕上げのための品質といってもよいでしょう.


図表1.1.3 狩野モデル


2022/05/24

品質工学で扱う「品質」とは③

 (つづき)

 つぎに,グラフの真ん中に示した,②の直線です.これは「一元的品質」とよばれていますが,あまりなじみがない言葉でしょう.これは性能を中心とした特性や,ランニングコスト,重量・大きさなど,満たされる度合いによって満足するものと考えてよいでしょう.みなさんパソコンを購入するときに,何に着目して選びますか.機能や性能,すなわち,CPUの処理速度,メモリやハードディスクの容量,ディスプレイの大きさ,通信機能の種類,重量,OSやソフトウェアの種類,そして価格と相談といったところでしょうか.その場合に,カタログ(仕様表)でこれらを機種比較して,価格が見合えば購入します.予算が決まっているので,すべて最高スペックというわけにはいかず,またその必要もないので,用途やその人が重点をおく項目(速度や容量や重量やソフトウェアの種類や有無など)によって強弱をつけるでしょう.

 これらの性能を中心とした一元的品質は,あらかじめカタログの仕様書などで明示されており,価格との比較で選択できるものと考えればよいのです.この場合,横軸の充足度(性能の高さ)と満足度の関係はどうなるでしょうか.性能が高いものはそれに見合う価格がついており,お客様はそれに納得して購入しています.ですので,魅力的品質のように満足度が大きく上昇することもありません.逆に性能が低い場合はそれで十分と考えて,価格の安いものを納得して選択した結果であり,性能が低いからといってクレームにはなりません.一元的品質に関する満足度のグラフは少し右肩上がりになります.この一元的品質は,競合他社としのぎを削る技術的な問題であり,またどれくらいのレベルが求められるのかといった,マーケティングや製品企画の問題も含んでいます.(つづく)


図表1.1.3 狩野モデル



2022/05/23

品質工学で扱う「品質」とは②

(つづき)

 このようなことをうまく説明したのが「狩野(かのう)モデル」という,図表1.1.3のチャートです.魅力的品質は①の一番上の曲線です.グラフの横軸は企画や設計がどれくらい達成できているか,物理的に満たされているかの度合(充足度)です.「魅力的品質」では右にいくほどデザインや使い勝手がよくなるということです.縦軸はお客様の満足度です.魅力的品質が少ない簡素なデザインや最低限の機能しかない製品でも,きちんとカタログや仕様書通りに機能してくれればクレームになることはありません.つまりグラフでは横軸で左にいっても,満足度は0付近までで下げ止まり,マイナスにはなりません.その一方で,魅力的品質を高めた製品は,人々を魅了し,非常に高価な対価を払ってでもそれを愛用したいというお客様も現れます.現在では1000円も出せば,正確に時を刻む(つまり,時計としての働きが正常な)腕時計が買えますが,世の中には100万円や1000万円の腕時計の市場もあるわけです.これを可能にしているのが魅力的品質です.繰り返しになりますが,これは好みの問題で,あまり技術とは関係ありません(技術者は薄給なので高級品とは関係ない,という意味ではないですよ!).


図表1.1.3 狩野モデル

(つづく)


2022/05/22

品質工学で扱う「品質」とは①

  普段,私たちが「品質がよい」というとき,それは何を意味しているのでしょうか.インターネットの表現からいくつか例を引いてみましょう.

 「○万円のインプラント治療.安くても品質が良い理由」

 「○○県の農作物は品質が良い」

 「テレビ・ラジオの受信品質が良い」

 「飲み物の品質が良い,○○ホテルのリバーサイドカフェ」

 「品質が良い日本製シルバーメタリック○○(製品名)」

 「品質がよいみんなのウェディング」

 「○○(放送局)の情報は品質がよいのでしょうか」

 「○○(宿泊施設)の温泉の品質が良い」

 ・・・いやはや,いろんなものに対して,品質が良いといえるものです.その製品を手にしたり,サービスを受けたりしたときに,他より感じが良くて,コスト的にも満足である,安心できる,自分の要求や好みに合っている…というのが全体的な意味でしょうか.

 携帯ミュージックプレイヤーやタブレットコンピュータ,携帯電話などで,必ずA社の製品を選ぶというファンが一定数いますね.その製品のデザイン(外観),ユーザビリティ(使いやすさ),持ったときの感覚,A社の製品に対する考え方…等々に魅力を感じて,多少他の部分―――価格が高いことや,一部の機能がついてないこと,あるいは耐久性が弱いことなど―――は目をつむってもA社の製品のお客様であることに満足を覚えるのでしょう.あるいはそのような自分に満足を覚える人もいるでしょう.高級車やバッグでも特定のブランドのファンである人がいますが,これも似たような感覚なのかもしれません.

 このような意味での品質を「魅力的品質」といいます.魅力的品質は,好みは百人百様であり,これが正解とよべるものありません.これは,どんな製品を企画して市場に投入するか,どんなイメージ戦略で売るのか,高級感を出した方がよいのか,デザイン,風合い,使い勝手などの差別化は…といったことがポイントとなる品質です.どちらかというと,マーケティング部門や製品企画部門に関係がある内容で,設計・開発の方には「あまり関係ないな」と感じる分野かもしれません.魅力的品質の一つの特徴は,それを洗練,高度化させることで,大きくお客様の満足度を上げられることにあります.(つづく)


2022/05/21

設計・開発プロセスのここが問題!目指すべきプロセスとは?②

(つづき)

 製造段階での「品質管理」は,戦後に活発化した組織的な活動や統計的な手法の活用によって,世界一といえるレベルに到達・成熟してきました.また製造の自動化・IT化,さまざまなフェールセーフ,エラープルーフ などの対策により,人による作業のばらつきやミス,勘違いなどによる不具合も起こりにくくなりました.それでも製造の間違いやミスが多いとすれば,それは製造しにくい設計がまずいからと考えるべきです.品質保証部門や品質管理部門で行われる製品や半製品の検査についても,検査にパスした「合格品」が使用段階でトラブルを起こしていることから,検査が漏れているのではなく,そもそも「合格品」の定義が間違っているということでしょう.合格したものはお客様の使用段階で不具合とならないように設計しておく必要があります.どのような状態を合格品として,何を(どんな特性値を),いくらの範囲で(どのような合否基準で)検査するのかを決定するのは,図面や仕様書を規定すべき,ほかならぬ設計・開発部門です.購入部品が起こしたトラブルについても,部品の評価基準を決めて,部品を選定した設計・開発部門です.部品評価の実務は専門の部隊が行っている場合も多いですが,その基準(方法やスペック)を決めるのは,やはり製品設計に精通した設計・開発部門の役割が大きいといえます.これらをまとめたのが,図表1.1.2です.

 このように,設計・開発部門は製品の性能,品質,コストなどについて,大本のところで大きな責任を担っていることがわかります.そのため,使用段階での不具合の要因を整理すると,冒頭のようにほとんどが設計・開発段階に起因したものになるわけです.未知の事柄も多く,検討すべきことが多い上に,不具合が起こったときには現在の開発を置いても対応に駆り出されるのですから,設計・開発部門の方が忙しいのもうなずけます.

図表1.1.2 不具合の発生要因と設計・開発部門の役割


2022/05/20

設計・開発プロセスのここが問題!目指すべきプロセスとは?①

 市場不具合の原因は,設計・開発段階で70~85%を占める

 自動車,家電製品,衣料品,食品,医薬品のような工業製品,あるいは発電所,電鉄,トンネルなどの社会インフラ,宇宙に打ち上げられるロケットや人工衛星に至るまで,人が作り,形があるものは,ハードウェアとよばれます.毎日のようにハードウェアの故障や安全性の問題,検査データの改ざんや手抜き工事,開発や検査のしくみ・組織のまずさなど,さまざまな形でハードウェアの技術の問題点が報じられています.いったい,我が国のものづくりはどうなっているのだ,という懸念をお持ちの方も多いと思います.意図的な改ざんや,想定外(と当事者がいっている)不具合が報じられる一方で,大部分の製造業や建設業等では日々技術開発にしのぎを削り,品質やコスト,サービスの改善に真摯に取り組んでいるのです.それでもさまざまな理由で,十分に不具合を予測できずに上記のような問題が繰り返し発生します.製品がお客様の手に渡り,使用される段階でのトラブルはどのようにして起こるのでしょうか.本書では主に工業製品を取り上げてその問題を考えていきます .

 ある調査 によりますと,図表1.1.1に示すように,AV製品のクレームの85%が設計責任であると報告されています.つまり製造不良などの生産部門の責任や,検査もれなどの品質保証部門の責任は高々15%ほどだというのです.これは一例にすぎませんが,クレームやお客様の使用段階での不具合の大半は,設計・開発段階の要因(購入品の評価・選定も含む)によると考えられています.つまり,設計・開発段階での仕事の質や,どれだけリソースを有効に投入したかによって,製品品質の大半が決まってしまいます.これはなぜなのでしょうか.(つづく)

図表1.1.1 製品クレームの要因の一例

出典:N-TZD研究会報告書 http://qcd.jp/pdf/corporateActivuty/n-tzd-R.pdf


2022/05/19

超実践品質工学の必要性③

 (つづき)

 そこで本書(「これでわかった!超実践品質工学」)では,理想論の立場ではなく,現場や実務者の立場を徹底します.つまり,これは実際に実行に移し,成果を出すための実務者のための書です.それゆえ意図的に「タグチイズム」から逸脱した場所もあります.筆者の思いは歩留り2割の部分を少なくとも8割にすることにあります .その中で読者のみなさんがいろんな気づきを得,実際に行動に移してしていただければこんなに嬉しいことはありません.

 さて本書は品質工学の中でも「機能性評価」と,それを中心に据えた設計・開発プロセスの革新・改善を扱っています.「機能性評価」はとても難しい言葉なので,「機能の安定性評価」あるいは「技術の実力の見える化」といってもよいと思います.この機能性評価をまず正しく理解し,実力の見える化を設計・開発の初期段階で実施することで,悪い部分は早い段階(やり直しが利く小さな段階)で直し,開発の最終段階での手戻りやお客様の使用段階での不具合を無くしていくことを狙っていきます.ベースである機能性評価がうまくいけば,直交表を使ったパラメータ設計も成功しやすくなります.また改善だけなら直交表を使わずとも機能性評価だけで可能であることも示します.あの面倒な―――というと語弊がありますが,実際たくさんの設計を試作・評価しなければならないので敬遠されがちな―――直交表の実験をしなくてもよいというだけでも,実務適用でのハードルがうんと下がるものです.直交表を使わない品質工学といってもいいですね.


2022/05/18

超実践品質工学の必要性②

(つづき)

 確かに,そのような技術開発が現実に行えるのなら最高です.それが究極的に目指すべき方向性であることも理解できます.しかし,とてもではないですが,筆者は前記のような設計・開発の現場に,これらの理想論をそのまま提案することはできません.それでも「困っている」現場―――もはや設計変更もほとんどできず,納期は迫り,なのに性能や品質が確保できていない状態―――では,藁をもすがる思いで品質工学らしきもの(これが単なる直交表実験を指していることが多い)をやってみよう,ということになることはあります.しかし,生半可な技術力,見よう見まねのやり方で実施してもうまくいくはずもなく,結局「品質工学は役に立たない」,「うちの現場にはレベルが高すぎる,難しい」,「うちの製品(技術)は特殊だから」などとして,やめてしまうのがオチなのです.無駄にした時間は帰ってきません.そのような経験は,一度でも社内で品質工学を試してみた方,人に勧めてみた方なら体験しているのではないかと思います.また上記のような理想的な開発が一気通貫で行えている事例が発表されているかというと,これが非常に少なく,また適用分野も限られています .そのため,推進・指導する側も,「本当に品質工学が提唱するような理想的な開発が行えるのだろうか」と疑問をもつことになるのです.

 さてパレートの法則によれば,社内教育やセミナーや本での自習などで品質工学に出会った人の中で,それを理解して「いいね」とアンテナが立つ人が2割くらいでしょうか.その中の2割が実際に行動を起こします.その中のさらに2割が品質工学でなんらかの成果をもたらすと考えると,成功するのは品質工学に何らかの形で触れた人の約1%という狭き門となります.こうなる理由はさまざまありますが,それでも残り99%の人には品質工学は不要な考え方なのでしょうか.非常に高度な技術力と倫理観をもつ一部の有能な技術者,リソースが潤沢にある開発組織,崇高な技術理念を実践できる企業だけのものなのでしょうか.品質工学は故田口玄一氏が半世紀を費やしてほぼ独力で創造した,技術論・方法論の結晶です.これを一部の技術者,組織だけのものとするのは余りにもったいないと考えるのです.より多くの方が,より広い範囲で品質工学を設計・開発の現場では使い,成果を出せないものだろうかと.(つづく)


2022/05/17

超実践品質工学の必要性①

  製造業の技術開発・製品設計・開発(以下,「設計・開発 」)の現場とはどのようなものでしょうか.実際,これらの現場の技術者は非常に多忙です.設計・開発のメインの業務以外にも,情報収集から企画,開発の管理,試作の手配,業者とのやりとり,部品や製品評価,不具合が起こった場合の対応,ドキュメンテーション,デザインレビューの対応,担当部分とのインターフェースとの調整,定例会議での報告(書いているだけで疲れてきた!)…等々,すべてを一人でやらなければならない場合も多いのが実情です.その中で,競合に打ち勝ち,成果を出さなければならないのです.

 その一方で,設計・開発における評価の効率化や,それによる製品品質の確保・向上,コストダウン等に品質工学(タグチメソッド)とよばれる,技術の評価・設計の方法論が紹介され,また期待されてきました.2000人規模の学会員を擁する品質工学会で数多くの事例が発表され,製造業で一定の成果が上がっているようにも見えます.いくつか品質工学の本やネットの記事を読んでみればわかることですが,品質工学は多くの点で理想論を提示しています .また想定する技術者のレベルも非常に高く想定しています .つまり正統な品質工学では,たとえば以下のことを要求しているのです(初心者の方へ:この箇条書きは,難しければ飛ばしても大丈夫ですよ!).

・すべての品質特性(燃費や騒音や発熱や寿命のような各種スペック)を一挙に改善できるような,本質的な“技術的な機能(働き)”を考える(生み出す)こと.【基本機能】
・そのような機能を改善する(すなわちすべての品質特性が良くなる)ような,設計をすること.そのためには,革新的な新しいシステム(技術的な手段)を考える(生み出す)こと.【システム創造・システム選択】
・そのようなシステムには,設計パラメータ【制御因子】間に悪い副作用【交互作用】ができるだけ少なくなるように,すなわち効果が期待した通りに再現するような設計をすること(【再現性】).その検査を直交表によって行うこと.【パラメータ設計】
・その検査の結果,交互作用が大きい,再現性が悪いとなった場合は,それは信用ができない技術なので,設計を見直すこと.
・しかもこれらのことを,製品設計が始まる前の,技術開発の段階で実施しておく(【先行性】)ことで,どんな製品にでも使える【汎用性】のある技術として準備しておくこと.

 確かに,そのような技術開発が現実に行えるのなら最高です.それが究極的に目指すべき方向性であることも理解できます.しかし,・・・(つづく)


2022/05/16

設計品質改善へのマインドと後進育成の意欲があるリーダーを育成

  株式会社ジェダイトでは目先の問題解決だけでなく、設計品質推進リーダーを育成することを念頭においたお手伝いしています(その中で必ず定量的な効果も示していきます)。


 設計品質推進リーダーとは以下のような人物像を指しています。

①設計品質改善へのマインドがあり、後進育成の意欲があること。
②自ら設計品質改善活動(現状分析~提言~解決のPDCA)を経験したことがあり、さらにそれを継続していること。成功体験も重要だが、途中での失敗トラブルにあたり、考え抜き、それを最終的には打破すること。
③解決のための豊富な知識(手法や社内・社外の相談窓口・リソース等)を持ち、それを生かせること。

①は受講生の考えや入社してからの環境にも左右されますが、業務で品質トラブル解決の現場を経験したり、受講生の対する期待を折に触れ伝えたり、幹部・上司の覚悟を示していくことで、気づきを得たり、考えは変わっていきます。さらに講座では設計品質の重要性を解いたり、時には幹部の方に講話をいただいたりします。提言書や実践のマンツーマン指導で下名の経験も伝えていきます。

②についてはリーダ育成コースの前期で、現状分析~問題点~根本原因~課題~解決策(提言)の流れを経験し、後期はそれを実践していきます。1年間でPDCAを一通り経験することになります。テーマによっては一筋縄ではいかないものも出てくると思います(それくらいのテーマを設定する必要があります)。そのなかで弊社のような社外の知識リソースを含め、持ちうるリソースを総動員して、時には組織や権限を越えて「できない理由ではなく、どうすればできるのかを考える」マインドを育んでいきます。

③についても、講座の中でまずはコアメソッドとなる品質工学の話を順にしていきますが、品質工学だけで仕事が進むわけではありません。後期の実践の中でも必要な手法を補足したり、不定期に集合講座を開催することが可能です。

 一般的にはこのような条件を満たすような人財は中々おりません。放っておいても伸びる人はごく一部です。そこで、リーダー候補をトップダウンで任命し、計画的な教育を中期的、継続的に実施していくことが必要になるわけです。

 このようなマインドとスキルを身に着けるためには、ひとことで言えば「経験」と「気づき」を得られるようなプログラム(講演、セミナー、実習、課題調査、実践指導)が必要です。

 またこのような活動を継続していくためには、社内での大目的の共有と各階層での得心、しくみの構築、成果見える化が必要となります。つまり1期単位の成果を数値(金額)で示し、それを積み上げていくことにより、幹部に活動の理解を得て、活動リソースを継続的に供給いただくことが必要なため、そのようなサポートも行っています。




<前職から15年来運営の実績!>
前職の設計品質(品質工学)を中心としたプロジェクト活動では、6年間で約900人のリーダを育成。ジェダイトではすでに5社、70名の塾生を育成(現塾生を含む)。

特に計画段階での、実践テーマの提言書作成指導が目玉です。

マインド醸成+スキルアップ(管理技術の講座)+実施提言書作成+実践 による人財育成(1年間+事後フォロー)

1期10名の成果試算金額は、数億~20億円程度の実績。

卒塾後は、実践活動の継続と後進育成。

このような活動を真剣に取り組みたい会社さんと、ご一緒に頑張りたいと思います。
冷やかし厳禁!意欲のある会社様のみご連絡をお願いいたします!

2022/05/15

「超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」⑩

 

5.3 設計品質リーダの人財育成を
 筆者が運営する株式会社ジェダイト(以下,弊社)では,設計品質リーダを育成する社内教育(研修と実践テーマのコンサル)を通じて,以上の活動を牽引できるような人財育成や活動のしくみ化を,国内の大手製造業を中心にトータルに支援している.
おおむね1社につき1期(1年)で10名前後の受講生を募り,月1回(人数により1~2日)の塾形式で実施している.上半期は主に実践テーマの抽出と計画の期間である.自職場の現状分析・問題定義・根本原因究明から真に解決すべき課題をあぶりだし,改善実践の提言として計画にまとめていく.平行して計画や実践に必要となるツール(機能性評価など)の講座を実施していく.
下半期は上半期の計画にもとづいた実践を各自の職場で行う.コンサル形式の実践検討会において,各自のテーマの進捗状況を確認,相談事項に対してディスカッションを行い,次のアクションを明確化していく.最終月には成果報告会を実施し,経営幹部やマネージャに参加いただく.各テーマの成果をさまざまな指標により金額で定量化し,本活動の費用対効果を見えるようにすることで,活動の継続を経営幹部にも再確認いただく.一例として,ある電気関連機器メーカーでは1期10名の受講者の成果(見込み)金額は約22億円と試算された.
以上をヒントとして社内推進方法を推進メンバーで再考いただくのもよいし,社内にそのような部隊がない,あるいはゼロからのスタートという場合でも遠慮なく弊社にご相談願いたい.

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超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」(6ページ)

(日本経営工学会の了承済)。

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2022/05/14

「超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」⑨

5.2 社内推進を成功させるポイント

 以下,前節の七つ特徴に対応させて,活用や推進をうまく進めるためのポイントを示す.

品質工学を活用する目的や,その必要性を理解,明確にして実施できるように説明する.そのような説明ができる講師の育成または招聘が必要.目的に合ったところで使用することになり,成果に結びつきやすい.また手段について納得して進めることになるので,やらされ感は少なく,自主性や継続性につながりやすい.もちろん,目的に応じて品質工学以外の管理技術も同時に使用していくことも重要である.

直交表にこだわらない運用の推進.品質の見える化(機能性評価)と比較による設計改善に重点を置いた活用を実施.直交表の活用は設計改善・最適化のためのオプションと位置づけ,強要しない.教育研修では機能性評価の背景や考え方を中心とする.パラメータ設計等の手順はツール化してだれでも活用できるようにする.

言葉や説明のしかたの重要性を認識.用語の意味を理解し,必要に応じて一般技術者が理解しやすい用語に置き換える.推進者・講師は,企業の文化や状況を考慮して,相手の立場に立った説明を行うことが必要.

講師の経験・体系化レベルは十分か.講師は十分な経験と考察にもとづいて,知識を体系化できており,実務で本当に必要な知識や困ったときの対処方法などを実践的に教えられる.機能の定義方法,ノイズ因子の抽出法,交互作用への対応方法などについて実用的なガイドラインや解決手段を豊富にもっている.

エネルギー比型SN比の活用.計算は一度理解したらツールに任せる.教える側も教わる側も負担が減り,計算よりも本質的な部分,アタマを使うべき部分に費やす時間を増やせる.

経営的な成果にコミットした活動.現状分析から「何をなすべきか」を明確にし,そこから目標値を設定する.成果を必ず金額で定量化することが仕組み化されており,定期的にそれらが集計・評価され,経営幹部に報告される.

計画に入れて実施することと,しくみの整備が重要.ボトムアップの場合であっても,少なくとも実施担当者の上長とスケジュール,リソース,成果について握り合って,進捗がフォローされていることが必要.トップダウンの場合,まずトップにより目的や適用展開の枠組みが明言することが重要であり,各階層でそれが理解,腹落ちされること.リピートや横展開や後進育成のしくみを整備し,自主的なリピートや展開につなげていくことが必要である.


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2022/05/13

「超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」⑧

5. 品質工学の推進と展開

5.1 社内推進がうまくいっていない組織の特徴

品質工学を社内で推進しようとしても,腰が重い,実施したとしてもリピートや定着に繋がらないなどの問題を散見する.以下筆者の指導経験に基づき,活用や推進がうまくいっていない組織の特徴についてまとめた.

手段ありきで,目的や必要性が分からずに「手法を適用」している.やらされ感ばかりでやる気が出ず,リピートにつながらない.その結果,活動が成果に結びついていない.

品質工学といえばすぐに直交表実験と考え,それを強要しがち.教育研修でも,直交表実験の手順を教える傾向が強い.

定義や意味をよく考えずに専門用語を濫用している(特に「基本機能」,「設計品質」など),田口玄一の言説を受け売りする推進者・講師.「失敗したことが成果」,「技術力がない証拠」などと場をしらけさせ,実践者のやる気をなくさせる.

講師の実践経験,知識体系化レベルが低く,手法の表面的な説明や,天下り的な教科書の説明に終始.明示的な手順や数式以外は,「担当者が考えること」と責任を丸投げしてしまう.

田口のSN比にこだわる(あるいはそれしか知らない)ため,自由度,期待値,純変動といった,設計・評価の実務には無用な知識を説明しなければならず,講座が冗長・退屈になる.その結果,教育に時間を浪費し,受講生は数理が理解できず挫折したり,品質工学は難解という印象をもってやらなくなったりする.

計画時にテーマの位置づけや目標値が明確化されないまま,目先の困っているテーマでもって,見切り発車のまま手法を当てはめる進め方が目立つ.「なんとなく良くなった」レベルで終わっている.経営幹部に成果が見えていないので活動に対して半信半疑である.

しくみがない.ボトムアップでは,推進者と担当者の直接取引のような形で,職制が関知しないまま実施するため,進捗が職制としてフォローされず,他の仕事が優先されるなどしていずれやらなくなる.トップダウンの形をとっている場合においても,特に中間管理職層で腹落ちできておらず,形だけ担当者にやらせる状況に陥る.その結果,よほどマインドに優れた担当者,職制でないと自主的なリピートや展開につながらない.

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2022/05/12

「超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」⑦

 4.6  機能性評価の使いどころと効果

以上のような機能定義,ノイズ因子設定,SN比定義を実験計画段階でしっかり実施しておくことが,評価の手戻りを防ぐために重要である.これをP-diagramと呼ばれる図(図4)にまとめて,機能ブロック図や特性要因図等とともに関係者でレビューするとよい(図1の右上参照).

 機能性評価の主な使いどころは,設計・開発の初期段階における,短時間での設計の見える化・改善と,購入部品の選定である.さらに直交表を用いたパラメータ設計(機能の安定性の改善)を実施する場合も,ベースは機能性評価であるため,その実験計画の質が重要である.

図4 P-diagramの例

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