2025/08/28

【超実践品質工学 解説】品質工学では「品質」はどう扱う?④

   品質工学で扱う「品質」とは④  (つづき)

 さいごに,グラフの一番下に示した,③の曲線です.お客様はカタログに記載されたとおりの「性能」を期待していますので,新品の段階や,あるいは使用しているうちに性能が低下してきたり,故障して性能や機能が維持できなくなったりすると,クレームになります.通常私たちが製品を使う際は,期待した期間(たとえば家電製品なら7~15年くらい)は新品の時に備わっていた性能は維持してほしいと考えます.蛍光灯やランプであれば明るさは変わらないでほしいし(実際は暗くなります),パソコンの処理速度は変わらないでほしい(実際はメモリへのアクセスなどが遅くなります)と考えます.また劣化の問題だけでなく,使い方の違いによって性能が変化してほしくないとも考えます.たとえば,自動車のブレーキは晴れの日の乾いた路面でも,雨の日の濡れた路面でも同じように効いてほしいのです(実際は異なります).このように,「新品と同じ性能を維持する」,「どのような条件でも同じ性能を発揮する」というのは,言われてみればそのとおりで,「あたりまえ」と感じます.

 このような品質のことを「あたりまえ品質」といいます(そのままですが,わかりやすいネーミングですね!).変化しない,故障しないで機能するのがあたりまえなのですから,充足度が上がっても(グラフの右側にいくほど故障が少ない),満足度が「あたりまえ」以上になることはありません.逆にそれが達成できなかったとき(グラフの左側)に満足度は大きくマイナスに振れます.その意味では,マイナスしかない品質です.このような種類の品質は,魅力的品質とは逆で,誰もが欲しくないと考えている品質です(お客様によって感じ方の程度は異なります).不具合や変化・変動はゼロが望ましいので,マーケティングや企画は関係なく,純粋に技術的な問題として取り扱います.「信頼性」や「耐久性」や「安定性」に関係する品質です.設計・開発段階での検討がまずいと,このような「あたりまえ品質」が十分でない悪い製品が出荷されてしまい,お客様に迷惑をかけることになります.

 以上3種類の品質について説明しましたが,実は品質工学で扱う品質というのは,主に「あたりまえ品質」の部分です.もちろん,性能抜きにしては製品や技術の評価はありえませんので,「一元的品質」も関係しますが,性能の確保は,品質工学の評価や改善の直接の対象ではないのです.「一元的品質」は,品質工学を適用する前の,機能設計と言われる段階で事前に確保しておくべきことです.要するに,「普通の条件でちゃんと動く」ものを作る段階です.品質工学で扱う「あたりまえ品質」は,そのような「ちゃんと動く」状態が,使用による劣化や使用条件によって左右されないかを扱うので,技術の仕上げのための品質といってもよいでしょう.


図表1.1.3 狩野モデル


2025/08/27

【超実践品質工学 解説】品質工学では「品質」はどう扱う?③

 品質工学で扱う「品質」とは③(つづき)

 つぎに,グラフの真ん中に示した,②の直線です.これは「一元的品質」とよばれていますが,あまりなじみがない言葉でしょう.これは性能を中心とした特性や,ランニングコスト,重量・大きさなど,満たされる度合いによって満足するものと考えてよいでしょう.みなさんパソコンを購入するときに,何に着目して選びますか.機能や性能,すなわち,CPUの処理速度,メモリやハードディスクの容量,ディスプレイの大きさ,通信機能の種類,重量,OSやソフトウェアの種類,そして価格と相談といったところでしょうか.その場合に,カタログ(仕様表)でこれらを機種比較して,価格が見合えば購入します.予算が決まっているので,すべて最高スペックというわけにはいかず,またその必要もないので,用途やその人が重点をおく項目(速度や容量や重量やソフトウェアの種類や有無など)によって強弱をつけるでしょう.

 これらの性能を中心とした一元的品質は,あらかじめカタログの仕様書などで明示されており,価格との比較で選択できるものと考えればよいのです.この場合,横軸の充足度(性能の高さ)と満足度の関係はどうなるでしょうか.性能が高いものはそれに見合う価格がついており,お客様はそれに納得して購入しています.ですので,魅力的品質のように満足度が大きく上昇することもありません.逆に性能が低い場合はそれで十分と考えて,価格の安いものを納得して選択した結果であり,性能が低いからといってクレームにはなりません.一元的品質に関する満足度のグラフは少し右肩上がりになります.この一元的品質は,競合他社としのぎを削る技術的な問題であり,またどれくらいのレベルが求められるのかといった,マーケティングや製品企画の問題も含んでいます.(つづく)


図表1.1.3 狩野モデル


2025/08/26

【超実践品質工学 解説】品質工学では「品質」はどう扱う?②

   品質工学で扱う「品質」とは②(つづき)

 このようなことをうまく説明したのが「狩野(かのう)モデル」という,図表1.1.3のチャートです.魅力的品質は①の一番上の曲線です.グラフの横軸は企画や設計がどれくらい達成できているか,物理的に満たされているかの度合(充足度)です.「魅力的品質」では右にいくほどデザインや使い勝手がよくなるということです.縦軸はお客様の満足度です.魅力的品質が少ない簡素なデザインや最低限の機能しかない製品でも,きちんとカタログや仕様書通りに機能してくれればクレームになることはありません.つまりグラフでは横軸で左にいっても,満足度は0付近までで下げ止まり,マイナスにはなりません.その一方で,魅力的品質を高めた製品は,人々を魅了し,非常に高価な対価を払ってでもそれを愛用したいというお客様も現れます.現在では1000円も出せば,正確に時を刻む(つまり,時計としての働きが正常な)腕時計が買えますが,世の中には100万円や1000万円の腕時計の市場もあるわけです.これを可能にしているのが魅力的品質です.繰り返しになりますが,これは好みの問題で,あまり技術とは関係ありません(技術者は薄給なので高級品とは関係ない,という意味ではないですよ!).


図表1.1.3 狩野モデル

(つづく)

【超実践品質工学 解説】品質工学では「品質」はどう扱う?①

   品質工学で扱う「品質」とは①

  普段,私たちが「品質がよい」というとき,それは何を意味しているのでしょうか.インターネットの表現からいくつか例を引いてみましょう.

 「○万円のインプラント治療.安くても品質が良い理由」

 「○○県の農作物は品質が良い」

 「テレビ・ラジオの受信品質が良い」

 「飲み物の品質が良い,○○ホテルのリバーサイドカフェ」

 「品質が良い日本製シルバーメタリック○○(製品名)」

 「品質がよいみんなのウェディング」

 「○○(放送局)の情報は品質がよいのでしょうか」

 「○○(宿泊施設)の温泉の品質が良い」



 ・・・いやはや,いろんなものに対して,品質が良いといえるものです.その製品を手にしたり,サービスを受けたりしたときに,他より感じが良くて,コスト的にも満足である,安心できる,自分の要求や好みに合っている…というのが全体的な意味でしょうか.

 携帯ミュージックプレイヤーやタブレットコンピュータ,携帯電話などで,必ずA社の製品を選ぶというファンが一定数いますね.その製品のデザイン(外観),ユーザビリティ(使いやすさ),持ったときの感覚,A社の製品に対する考え方…等々に魅力を感じて,多少他の部分―――価格が高いことや,一部の機能がついてないこと,あるいは耐久性が弱いことなど―――は目をつむってもA社の製品のお客様であることに満足を覚えるのでしょう.あるいはそのような自分に満足を覚える人もいるでしょう.高級車やバッグでも特定のブランドのファンである人がいますが,これも似たような感覚なのかもしれません.

 このような意味での品質を「魅力的品質」といいます.魅力的品質は,好みは百人百様であり,これが正解とよべるものありません.これは,どんな製品を企画して市場に投入するか,どんなイメージ戦略で売るのか,高級感を出した方がよいのか,デザイン,風合い,使い勝手などの差別化は…といったことがポイントとなる品質です.どちらかというと,マーケティング部門や製品企画部門に関係がある内容で,設計・開発の方には「あまり関係ないな」と感じる分野かもしれません.魅力的品質の一つの特徴は,それを洗練,高度化させることで,大きくお客様の満足度を上げられることにあります.(つづく)

2025/08/25

【超実践品質工学 解説】設計・開発プロセスでこんなこと起こってませんか?!②

   設計・開発プロセスのここが問題!目指すべきプロセスとは?②(つづき)

 製造段階での「品質管理」は,戦後に活発化した組織的な活動や統計的な手法の活用によって,世界一といえるレベルに到達・成熟してきました.また製造の自動化・IT化,さまざまなフェールセーフ,エラープルーフ などの対策により,人による作業のばらつきやミス,勘違いなどによる不具合も起こりにくくなりました.それでも製造の間違いやミスが多いとすれば,それは製造しにくい設計がまずいからと考えるべきです.品質保証部門や品質管理部門で行われる製品や半製品の検査についても,検査にパスした「合格品」が使用段階でトラブルを起こしていることから,検査が漏れているのではなく,そもそも「合格品」の定義が間違っているということでしょう.合格したものはお客様の使用段階で不具合とならないように設計しておく必要があります.どのような状態を合格品として,何を(どんな特性値を),いくらの範囲で(どのような合否基準で)検査するのかを決定するのは,図面や仕様書を規定すべき,ほかならぬ設計・開発部門です.購入部品が起こしたトラブルについても,部品の評価基準を決めて,部品を選定した設計・開発部門です.部品評価の実務は専門の部隊が行っている場合も多いですが,その基準(方法やスペック)を決めるのは,やはり製品設計に精通した設計・開発部門の役割が大きいといえます.これらをまとめたのが,図表1.1.2です.

 このように,設計・開発部門は製品の性能,品質,コストなどについて,大本のところで大きな責任を担っていることがわかります.そのため,使用段階での不具合の要因を整理すると,冒頭のようにほとんどが設計・開発段階に起因したものになるわけです.未知の事柄も多く,検討すべきことが多い上に,不具合が起こったときには現在の開発を置いても対応に駆り出されるのですから,設計・開発部門の方が忙しいのもうなずけます.

図表1.1.2 不具合の発生要因と設計・開発部門の役割


2025/08/24

【超実践品質工学 解説】設計・開発プロセスでこんなこと起こってませんか?!①

  市場不具合の原因は,設計・開発段階で70~85%を占める

 自動車,家電製品,衣料品,食品,医薬品のような工業製品,あるいは発電所,電鉄,トンネルなどの社会インフラ,宇宙に打ち上げられるロケットや人工衛星に至るまで,人が作り,形があるものは,ハードウェアとよばれます.毎日のようにハードウェアの故障や安全性の問題,検査データの改ざんや手抜き工事,開発や検査のしくみ・組織のまずさなど,さまざまな形でハードウェアの技術の問題点が報じられています.いったい,我が国のものづくりはどうなっているのだ,という懸念をお持ちの方も多いと思います.意図的な改ざんや,想定外(と当事者がいっている)不具合が報じられる一方で,大部分の製造業や建設業等では日々技術開発にしのぎを削り,品質やコスト,サービスの改善に真摯に取り組んでいるのです.それでもさまざまな理由で,十分に不具合を予測できずに上記のような問題が繰り返し発生します.製品がお客様の手に渡り,使用される段階でのトラブルはどのようにして起こるのでしょうか.本書では主に工業製品を取り上げてその問題を考えていきます .

 ある調査 によりますと,図表1.1.1に示すように,AV製品のクレームの85%が設計責任であると報告されています.つまり製造不良などの生産部門の責任や,検査もれなどの品質保証部門の責任は高々15%ほどだというのです.これは一例にすぎませんが,クレームやお客様の使用段階での不具合の大半は,設計・開発段階の要因(購入品の評価・選定も含む)によると考えられています.つまり,設計・開発段階での仕事の質や,どれだけリソースを有効に投入したかによって,製品品質の大半が決まってしまいます.これはなぜなのでしょうか.(つづく)

2025/08/23

【生成AIで成果を加速!】設計・開発技術者のための教育コース体系

 昨今の高度化されたモノづくりでは、企画・開発設計を中心に統計学や設計品質手法さらには生成AIの活用が必須です。

 設計品質(QE等)や統計モデリングに精通したエンジニアがAIも活用することで、成果を加速すでるだけでなく、結果をブラックボックス化させず説明可能な設計が可能となります。

 株式会社ジェダイトでは、従来のセミナーに生成AIを積極的に取り入れ、技術士(経営工学-数理・情報)の講師から学ぶことができます。社内に居ながらにして手法や考え方を体系的に、漏れなく学ぶことができます。QC検定(2~3級)対策にも最適です。


 例えば、若手や開発担当者にはベーシックコース、中堅や開発リーダーにアドバンスコースのように受講していただくと効果的です。

 また特別なコースとして、計画と実践の指導を含んだ「設計品質リーダー育成コース」をご用意。次世代の開発リーダー、プロジェクトマネージャーを成果をあげながら育成します。詳細はこちら⇒ダウンロード

 標準的なプランで1日6時間講義・演習、さらにオプションで個別相談を追加することも可能です。

講師はどんな人?
1994年 京都大学(院・工学)修了。同年三菱電機株式会社に入社。
生産技術センターで設計・品質情報システムの構築・運用(DX、IoT、Industrie4.0)や、機械学習(パターン認識、AI)を用いた検査自動化などを実用化。研究所で社内電機製品の生産性向上、設計改善およびそれらのマネジメントに従事。出願特許の実施額は1000億円以上。
また全社設計品質リーダを6年間で888人育成し、e-Learningはのべ50000人以上受講、数10億円の業績改善に貢献。

【受講者の声(ごく一部)】
●10年以上の疑問が一気に解けました。先生の講座を受けないと、何年も遠回りすることになります。
●本で読む100倍以上理解できました!
●品質工学、信頼性、統計、機械学習。何を聞いても的確に答えてもらえて、とても心強かったです。
●交互作用にについて対応策を整理して説明してもらえた。このような相談相手が社内にほしい。

2025/08/20

必要な方に必死に読んで欲しい!人材育成・活用の要⑤

   ●本活動の経営層からの評価はどうなのか?

最終月の成果報告会では、経営幹部にも参加いただきます。各テーマの成果を金額で定量化し、本活動の費用対効果を示し、本活動の継続を経営幹部に再確認いただきます。数多くの幹部の方々から「活動にブレがなく、本物だ(取締役事業部長様)」、「リーダーの成長が目に見えて今後が楽しみ(技術部長様)」等の肯定的評価をいただいております。

経営幹部に対して最も説得力があるのは、受講生のやる気と自信にあふれた成長と、成果金額でしょう。受講者の声や具体的数値については、弊社HPに掲載の前号までの内容をご参照ください。

●いますぐそのような活動を進めていきたい!

社内にそのような講師や推進部隊がいない、あるいはゼロからスタートしたいという場合は、弊社にご相談ください。ただし「お気軽に」とは申しません。本気で変わりたいという会社様限定とさせていただきます。命の時間を使って、本気で取り組む会社様ともに仕事をしていきたいと考えておりますし、ご一緒できることを心から楽しみにしております。


(本記事おわり)
まとめて読みたい方はこちら⇒ https://data-engineering.co.jp/s/-dmp8.pdf


2025/08/19

必要な方に必死に読んで欲しい!人材育成・活用の要④

   ●上記活動のための効果的なソリューションとは?

 このような課題を効果的に解決するソリューションとして、かねてより「設計品質リーダー育成コース(DQL)」をお知らせしてきました。

スクール形式の社内教育(研修と実践テーマのコンサル)を通じて、設計品質作りこみ活動を牽引できるような人財育成や活動のしくみ化を、トータルに支援しています(詳細は前2号の内容をご参照)。

 特に上半期は、実践すべきテーマの抽出と計画の期間としており、本コースの目玉です。受講生が自職場の現状分析・問題定義・根本原因究明から真に解決すべき課題をあぶりだし、改善実践の提言として計画にまとめていきます。これをテーマごとに徹底指導いたします。

 目的・目標値が明確な「儲かる」テーマをしっかりと設定することで、どのような手法を用いて改善していくのかが明確になり、成果がでます(品質工学ありきではありません)。たとえ当初は目標に達成しない場合でも、明確な計画とアドバイスにもとづきPDCAのCheck & Actが適正に働くため、継続して実践できるようになります。

 スクールでは平行して実践に必要となるツール(品質工学、統計手法など)の講座を実施しています。下半期は上半期の計画にもとづいた実践活動です。コンサル形式の実践検討会において、各自のテーマの進捗状況を確認、相談事項に対してディスカッションを行い、やる気の火を灯し続け、継続して活動できるよう支援しています。


(その⑤につづく)

まとめて読みたい方はこちら⇒ https://data-engineering.co.jp/s/-dmp8.pdf


2025/08/18

必要な方に必死に読んで欲しい!人材育成・活用の要③

   ●社内推進を成功させるポイント

 以上を踏まえて、どのように社内推進していけばよいのでしょうか。

①設計品質の作りこみや、品質工学を活用する目的、その必要性を明確にして、実践できるように説明する。目的に応じた手法を活用することになり、成果に結びつきやすい。また手段について納得して進めることで、やらされ感は少なく、自主性や継続性につながりやすい。品質工学以外の管理技術も同時に使用していくことも重要である。

②講師は十分な経験と考察にもとづいて、知識を体系化できており、実務で本当に必要な知識や困ったときの対処方法などを実践的に教えられる。スキル授与だけでなく、マインドに火をつけることができる。

③経営的な成果にコミットした活動。現状分析から「何をなすべきか」を明確にし、そこから目標値(成果金額と期限)を設定する。成果を必ず金額で定量化することが仕組み化されており、定期的にそれらが集計・評価され、経営幹部に報告され、活動継続の判断がされる。

④計画に入れて実施することと、しくみの整備。まずトップにより目的や適用展開の枠組みが明言することが重要であり、各階層でそれが理解、腹落ちされること。リピートや横展開や後進育成のしくみを整備し、自主的なリピートや展開につなげていくことが必要である。




(その④につづく)

まとめて読みたい方はこちら⇒ https://data-engineering.co.jp/s/-dmp8.pdf