2025/03/06

実験における交互作用への対策を体系的に理解できます!

 とある化学系メーカ様からの依頼で、交互作用にかかわる方策を短時間に理解できるセミナーが完成しました。オンラインセミナーを絶賛募集中です。

化学系の実験では交互作用の問題がつきまといます。そこで、そのような実験系でどのようにデータをとり、解析し、解釈すればよいかを横断的に解説します。

先日も関東の生化学系メーカー様で講演いたしましたが、主催者から内容に関して「感動した!」とのお声をいただきました。

著書「これでわかった!超実践品質工学」には未公開の内容です。


★お問合せ、お申込みは株式会社ジェダイトHpのお問合せフォームから。


<主な内容>

☑パラメータ設計における交互作用の問題と対応
    交互作用とは
    特性値がまずいケース
    実験誤差、ノイズ因子がまずいケース
    制御因子の取り方がまずいケース

☑直交表を使用せずに改善する方法

☑交互作用の小さい制御因子を探索する方法

☑交互作用を含めたモデル化の方法
    実験計画法
    応答曲面法



※コンピュータシミュレーションを用いた「逐次法」(別講座)について追加することもできます。

※セミナーにテーマ相談会を追加することもできます。同日連続開催がお得です。

※上記セミナーはパラメータ設計の目的や手順などの知識を前提としますので、不安な方はまず「機能性評価セミナー」、「パラメータ設計セミナー」をお勧めします。

2025/03/04

【基本的な統計の知識を習得】実験計画法初級セミナー2日間

 AIとデータサイエンスの分野は、近年急速に発展しており、それに伴って基本的な統計の知識の重要性も増しています。現代の技術者にとって、統計はデータを解釈し、有意義な洞察を引き出し、設計・開発に不可欠なツールとなっています。

 統計学の基礎をしっかりと学ぶことで、AIのアルゴリズムやモデルの背後にある原理を深く理解するスタートとなります。例えば、実験計画法では、1元配置の変動の分解を通じてその基本を学び、これが複雑なデータセットにおける変数間の交互作用の理解や、直交表を用いた高度な実験の設計へとつながります。

 さらに、Excelを使用した計算演習ツールは、高価な有償ツールを使用せずに、統計的な分析を行う方法を提供します。これにより、受講者のみなさんは実際の業務に直接応用可能なスキルを習得し、業務が効率化できます。

(Excel以外にも日科技研 StatWorksを使用する場合でも対応いたします)

統計の初歩から学びたい方は、統計解析スキルアップセミナーを先に受講していただくとスムーズです。(中心極限定理、分布の確率、信頼区間、有意差検定など)

 オンラインセミナーでも開催できます!

こちらから総合パンフレットをダウンロードいただけます。



1日目  ●品質改善と実験計画法  ●統計的データ解析の基礎  ●実験データの解析の考え方  ●一元配置実験 2日目   ●二元配置実験(繰返しのない場合)  ●二元配置実験(繰返しのある場合)  ●直交表による実験計画(2水準の場合)

実施形式 オンラインでの受講で、15~20名様程度まで受講可能。 Excelが操作できるPCを一人一台ご用意いただきます。 費 用 540,000円(2日間)+消費税。テキスト・ツール類費用、日当等の一切の費用を含みます。リモート開催を基本としています。 見積書を
お問合せフォームよりご用命ください。 ご希望により、事例相談(コンサル)を追加(有償)することができます 。

2025/03/03

「提言書は雛形を用いて短時間で業務改善提案が可能」などの生の声をご紹介②

  設計品質リーダー育成コースにご参加いただいた塾生からの声をご紹介いたします。いずれも経営幹部様への成果報告会で本人の口から報告された、気づきやリーダとしての心構えに関する生の声です。受講生の成長や熱気を感じてください!

☑金額等の定量的な数値で問題点を明らかにする事で、問題の重要性・緊急性を関係者に共有しやすい。

☑困難なテーマほどリーダーが行動し、周りの協力を得ながら推進する。

☑品質工学の手順で結果を出すだけでなく、得られた情報を元にどう改善すべきかを考察する重要性を学んだ。

☑コース参加メンバーで議論することにより異なる視点からの意見や他事業部での活動情報を得ることができる。

☑「提言書」としてまとめることで、改善活動の価値を自身で客観的に把握するとともに、上位者に簡潔に提案することができる。

☑提言書は一定の雛形を用いて短時間で業務改善提案が可能なツールである。これを活用を推進することで、業務改善の面白さを実践しながら伝えていきたいと思う。

☑事実に基づく分析や、相手にわかりやすいデータの見せ方による説得力の大切さを学んだ。

☑仕組み一つでも設計者が、つい手を抜きがちなところを早めに指摘してもらえる効果がある。

☑上市後、如何に設計変更せずに済ませられるか、との視点が利益に繋がる。

☑課題を見過ごしたり、先送りにしていた。「変わらねば」との意識が強くなった。

☑これまで経験則や想像で手当たりに設計し、試作→評価→手戻り・再設計といった非効率的な設計・評価手法を改めることができると感じた。

☑効果金額の規模感を事前に知ることで、限られたリソースで会社の利益に貢献できる。

☑はじめは難しいイメージだったが、先生の説明で仕組みが理解でき、さらに実践で開発効率化に有益なツールであることが「発見」できた。

☑開発設計にとどまらず、QFD等の手法を営業や事業企画部門と共有して活用していく。

オンラインセミナー、コンサル等、お気軽にお問い合わせください。

2025/03/02

「コースで実践した提言/改善活動の有用性を改めて感じた」などの生の声をご紹介①

 設計品質リーダー育成コースにご参加いただいた塾生からの声をご紹介いたします。

いずれも経営幹部様への成果報告会で本人の口から報告された、気づきやリーダとしての心構えに関する生の声です。受講生の成長や熱気を感じてください!

☑社内の様々な人に接することで当社内の業務を知るきっかけとなり視野が広がった。その中で、様々な部署の仕事の進め方が今後の自分の業務改善に つながることがわかった。

☑期間や費用等、明確なビジョン・目標を開発初期より持ち、それらを部下としっかりと伝えて共有することで、生産性の高い組織をつくることができると感じた。

☑不良損失を未然防止することで、会社の利益に貢献できること、コストに対する意識を今まで以上に持つようになった。

☑実際に効果試算の数値が出てくると、ふだん意識していない程の効果があり、当コースで実践した提言/改善活動の有用性を改めて感じた。

☑お客様のための品質であることを再確認した。また、自分の取り組みで大きな金額を動かせることが分かった。

☑リーダーとして“この人が言っているなら大丈夫” と思われる技術者となるべく、現状に満足せず、期待の一歩先に進んでいく。

☑まだ”ばらつき”に対する考え方が弱い。ばらつきを考慮した設計、製造ができるように、知見や考え方の定着を牽引する人材になる。

☑改めて世の中とのギャップに気づいた。現状分析により理想との差、講師出身企業などとの他社との差。

☑クレーム対応は顧客満足向上のチャンス。その場しのぎではなく、お客様を第一に考えた対応を実施していく。

☑提言書によって最初に計画を整理できた。実際に取組む時にはアウトプットをイメージできるので、業務をブレずに遂行することが出来た。

☑講師や活動メンバーから、具体的な実施アドバイスを頂いた。自身の枠にとらわれずに活動するメリットを改めて感じた。

オンラインセミナー、コンサル等、お気軽にお問い合わせください。

2025/03/01

「品質」の言葉の定義、大丈夫ですか?

  先日ある会社様へのコンサルで、「製品の品質が悪いので、製造工程の上流(投入材料、製造条件など)にもどって、工程条件と品質の関係を調べている」との相談を受けた。

 お手伝をし始めたきっかけが品質工学や多変量解析であったため、そのようなツールを使ったデータ解析を行っているようだ。しかし、確認のためその活動の目的を聞いても、どうも腑に落ちない。どうもデータ分析が目的になってしまっているようだった。

 そこで、こちらから「品質が悪い」というのは、具体的に以下のどのケースなのかを再度訪ねた(ここでは、企画の品質、すなわちその製品が売れるかどうかにかかわる品質は除外している)。

1)そもそも図面通りにものが作れず、適合品が十分にとれない問題(この場合、適合品が所定の機能、性能をもつことは前提にされていることが多い)

2)図面通りに作って、そのようになっていることも工程管理や検査によって確認しているにも関わらず、正常に機能するものが十分にとれない問題

3)上記をクリアして良品を出荷したにも関わらず、客先や市場でトラブルを起こす問題(出荷試験モレによる初期不良を除く)。

 これらはそれぞれ原因が異なるし、責任部門も異なる。つまり、「品質が悪い」ということが具体的にどういうことなのかを、活動する本人たちがしっかりと認識していないと、正しい活動にならないし、品質がなかなか良くならないばかりか、かえって悪くなってしまう場合もあるだろう。医者が患者の病状を知らずに治療をするようなものである。一部のコンサルタントでも、このような区別があいまいな人もいるので注意が必要だ。


1)は、標準どおりの作業で、図面どおりモノが作れる製造工程の工程能力(設計中央値に近いものを数多く作れる能力)の問題である。工程設計を行う生産技術部門によって実施する、工程設計段階の問題である。もう1つは実際にその工程を運用、管理する製造工程内の品質管理の問題である。前者の設計がうまくいっていないと、後者の活動の効果は限定的であるのはいうまでもない。
 なお、製造工程についても信頼性の問題が重要であり、上記の設計に含まれる。すなわち工程で規定される5M要素(材料、人、機械設備、方法、計測)に逸脱(間違いや変化など)が生じたときの影響を事前に想定して、工程設計にその対策を講じておく設計である。この工程の信頼性設計のチェックの用いるのが工程設計FMEA(PFMEA)である。

2)は図面通りのものが機能しないのだから、製品設計の中の機能設計(少なくとも設計中央値で目的の機能を発揮する設計)の問題である。この設計ができていなければ、たとえ製造段階でばらつきなく図面通りに製造しても、目的の機能をもつ製品はつくれないことになる。このような設計が製造段階まで流出したのだから、機能設計がまずいだけでなく、それをチェックするためのしくみ(デザインレビュー、機能試験など)も不十分であるということだ。機能や性能の上限は、どのような技術手段を選ぶか(システム選択)でおおむね決まってしまうので、大本をたどれば、源流の研究開発の段階の活動の不十分、不備
も考えられよう。
 なお、実際は製造でもばらつきが発生するため、設計中央値に適切な許容差をもうけて、その範囲の製造ばらつきが生じても機能する設計(許容差設計)も必要となる。その許容差の中でモノが作れるかどうかが1)の問題である。

3)は、良品(図面通りに作り、所定の社内試験や検査に合格したもの)が、市場(輸送、保管、使用のすべての段階)において、環境条件の違いや、ストレス、経時変化による劣化などの影響によって、故障(初期の機能や性能が低下、場合によっては完全に停止)する場合である。このような事態は、ユーザーの「これくらいの条件では使用できるだろう」「これくらいの年数は使用できるだろう」という暗黙の期待を裏切るので、クレームやブランドチェンジにつながる。
 これに対する事後の対応は品証やCS部門などになるが、そもそもこのようなことが発生しないように責任をもつのは、製品設計のうち信頼性設計とよばれる部分である。2)で製品設計には機能設計が必要と述べたが、それに加えてこの信頼性設計が必須となる。このような設計が市場段階まで流出したのだから、信頼性設計がまずいだけでなく、それをチェックするためのしくみ(製品設計FMEA(DFMEA)、デザインレビュー、機能性評価、信頼性試験など)も不十分であるということだ。

 冒頭の会社様の問題はおもに2)の問題であることがわかった。このように、現在起こっている「品質の問題」というのがどのような現象で、どこの工程(部門)の仕事に問題があるのかの根本原因をつきとめて対策を立案する必要がある。きわめて基本的なことだが、ちょうどそのような場面に遭遇したのでメモ程度に残しておく。

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2025/02/28

品質工学会におけるバーチャルパラメータ設計の直近10年間の状況と今後の課題(まとめ)

Chat-GPT PlusでDeep Researchが使えるようになったので、さっそくニッチと思える分野の調査でお手並み拝見。品質工学会が提唱する「バーチャルパラメータ設計(VPD)」について、普通にGPT等に質問すると、バーチャルの意味をコンピュータシミュレーションやAIを使った設計ととらえる回答が多く、要を得ない。

そこでDeep Researchを使って、VPD直近10年間の日本の研究成果と今後の課題について調査してみた。特に製造業分野に焦点を当て、最新の論文や実践事例をまとめてもらった内容を紹介する。所要時間は10分ほどだった。出典も含めて詳細な内容まで踏み込んで全体を把握できるレポートは、なかなか便利そうだ。なお、ワードクラウドは別のツールで作成したものである。

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バーチャルパラメータ設計の研究動向(直近10年間)と製造業への応用

最新の研究論文・発表の概要

直近10年間、日本の品質工学会において「バーチャルパラメータ設計(Virtual Parameter Design, VPD)」は活発な研究テーマとなっており、賛否両論を含め盛んに議論されています ([PDF] バーチャル評価の現状と課題 (1) - 品質工学会)。VPDは、タグチメソッドに基づくパラメータ設計を“実物を用いず仮想的に”実施する手法で、専門家の知見シミュレーションによって製品・プロセスの性能評価を行う点に特徴があります ([PDF] バーチャルパラメータ設計の可能性と課題)。例えば、品質工学会誌では2022年に技術向上委員会による解説「バーチャルパラメータ設計の可能性と課題」が掲載され、VPDの意義や問題点が総括されています (品質工学会 学会誌「品質工学」)。この中では、VPDの黎明期として2005年頃のIHIにおける微小径ドリル加工最適化の事例にまで言及されており、当時から切削抵抗の測定結果を基にシミュレーションを活用したVPDの試みがあったことが紹介されています ([PDF] バーチャルパラメータ設計の可能性と課題)。

品質工学会の論文賞でもVPD関連の研究が頻繁に表彰されており、研究成果が蓄積しています。2016年には「バーチャル設計を用いたシャッタ機構の設計」が論文賞銀賞を受賞し (品質工学会 論文賞)、2017年にはコニカミノルタの埴原文雄氏らによる「構想設計へのバーチャル・パラメータ設計の活用の研究」が論文賞金賞を受賞しました (品質工学会 論文賞)。この研究は学会設立25周年特集号(品質工学Vol.25 No.5)に掲載され、大規模システム(デジタル複合機の画像形成プロセス)の全体最適化にVPDを適用した先駆的事例です (品質工学会 論文賞)。その後も品質工学研究発表大会などでVPDに関する発表が継続しており、例えば2022年にはリョービ株式会社・寶山靖浩氏による「金型補修のための肉盛溶接のバーチャル設計と機能性評価」が論文賞銀賞に選ばれています (品質工学会 学会誌「品質工学」)。このように、この10年間で論文誌や学会発表を通じてVPDの事例研究や手法論が着実に報告されてきました。

バーチャルパラメータ設計の成功事例と実際の活用方法

製造業分野では、VPDの適用によって開発初期段階から品質問題を予防し、設計最適化を図った成功事例が報告されています。コニカミノルタでは、複合機や光学機器の開発においてシミュレーションとパラメータ設計を融合し、試作品を作らずに設計パラメータの最適化を実現する開発プロセス改革に取り組みました () ()。例えば車載用特殊カメラの構想設計段階で、CAE(数値シミュレーション)モデル上に信号・ノイズ条件を設定して機能性を評価し、ロバストな設計案を導出しています () ()。この手法により、市場で発生しうる問題を前倒しで潰し込む成果を上げたとされています ()。コニカミノルタのシャッタ機構設計の事例(2016年銀賞)では、製品内部のサブユニットレベルでVPDを適用し、物理試験を行わずに設計案を評価・改良しました (品質工学会 論文賞)。さらにその続報として取り組まれた画像形成システムの構想設計(2017年金賞)では、複数の分野の専門技術者6名が評価者となり、各種設計因子の組み合わせに対する出力画像の品質を11段階評価するというユニークな手法が採られました (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)。L18直交表に割り付けた制御因子に対して人間の感性による評価を行い、1回目評価後に評価者同士で合議・認識共有した上で再評価することで、全員が合意する最適案を導出しています (構想設計へのバーチャル・パラメータ設計の活用の研究 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター)。その最適条件により現行比約10dBの機能向上(SN比改善)を達成し、並行して行ったCAEシミュレーションによる設計最適化結果とも同じ傾向であることを確認しています (構想設計へのバーチャル・パラメータ設計の活用の研究 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター)。このケースでは専門家の知見を仮想評価に活かしつつ、デジタルシミュレーションで裏付けを取ることで、バーチャル評価の妥当性と信頼性を高めた点が特徴です (品質工学会 論文賞)。

また、製造プロセス改善へのVPD活用例として、リョービ株式会社のダイカスト金型補修工程での事例があります (品質工学会 学会誌「品質工学」)。この研究では、肉盛溶接による金型補修に関して現場の2部署が抱える「どの条件が品質に効くか」という認識の違いに着目しました。VPDにより両部署の技術者が考える重要因子とその効果を仮想評価し、食い違っていたある要因について仮説検証実験を計画しました (金型補修のための肉盛溶接のバーチャル設計と機能性評価)。実際に双方の部署が影響があると主張した条件で試験片を作製し、溶接時の消費電力や溶接部の引張強度を計測したところ、優れる条件がどちらかが明確になり (金型補修のための肉盛溶接のバーチャル設計と機能性評価)、その結果を両部署で共有することで技能に関する共通理解の深化につながりました (金型補修のための肉盛溶接のバーチャル設計と機能性評価)。このようにVPDを切っ掛けに現場の勘所の検証と知見統一が図られ、プロセス改善に結びつけた点が成功要因とされています。

以上の事例から、バーチャルパラメータ設計は製品設計の構想段階から生産プロセスの改善まで幅広く応用されており、専門家の知識CAEシミュレーションを組み合わせて活用する実践例が蓄積されています。

製造業における導入のメリットと課題

製造業でVPDを導入するメリットとして、まず開発リードタイムとコストの削減が挙げられます。実物試作や大量の物理実験を行うことなく設計パラメータの効果を評価できるため、試行錯誤の期間を短縮し開発コストを抑制できます () (品質工学会 論文賞)。特に自動車部品や精密機器のように試作にコストが掛かる分野では、コンセプト段階で多数の設計案を仮想的に評価・比較できる意義は大きく、市場投入前に品質問題を予見して対策を打てる利点があります () (品質工学会 論文賞)。また、従来は各部署・サブシステムごとに最適化していた設計を、VPDによりシステム全体を俯瞰して統合的に最適化できる点も重要なメリットです (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)。実際にコニカミノルタの事例では、画像形成プロセス全体を見渡した評価手法によって従来手法の「サブシステムのつなぎ合わせによる開発」の殻を破り、将来の技術価値を見落とさない戦略的なシステム選択が可能になったと報告されています (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)。さらに、評価の迅速性も見逃せません。専門家の頭の中やデジタル空間上で評価が完結するため、短時間で結果を得ることができ、開発サイクルの高速化に寄与します (品質工学会 論文賞)。リョービの例では部署間の合意形成にもVPDが役立ち、部門横断的なコミュニケーション促進という副次的な効果も得られています (金型補修のための肉盛溶接のバーチャル設計と機能性評価)。

一方、課題としては評価結果の信頼性と再現性が大きなテーマです。VPDでは人間の感性や経験に基づく評価を行うケースも多く、評価者が異なれば結果が変動するリスクがあります (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)。実際、前述の画像形成システムの研究でも「評価者(人)は計測器に相当する」と指摘されており、各人の評価にばらつきが大きい場合は従来のパラメータ設計と同様にSN比(評価の一貫性)が低下して有効な結論が得られにくくなると報告されています (品質工学会 論文賞)。この対策として、評価者の合議多面的な人材の選定によって主観の偏りを抑える工夫が必要とされています (品質工学会 論文賞)。しかし合議による平均化は極端に言えば「凡庸な結果」に収束する恐れもあるため、評価者一人一人のスキルと洞察力に依存する側面は否めません (品質工学会 論文賞)。また、シミュレーションモデルを用いる場合でも、そのモデルが現実の現象をどこまで忠実に再現できているかという懸念があります。品質工学では「必ずしも現象を忠実に再現する必要はなく、システムの機能さえ再現できればよい」とされますが () ()、現場の技術者にとってはシミュレーション精度への不安が残ることもあります。このように、バーチャル評価への信頼性と納得感をどう醸成するかが導入上の課題となっています (品質工学会 論文賞)。実務面では、VPDを実施できる人材育成(品質工学とCAEの両スキルを持つエンジニア)や、部署間で評価結果を共有・理解するための社内文化づくりも重要なポイントです。さらに、VPDで得られた結論を最終的に実機検証で裏付けるプロセスも依然必要であり、仮想評価と現実試験の接続をどう最適化するかも検討課題と言えます。

今後の研究の方向性と未解決の課題

バーチャルパラメータ設計に関する今後の研究方向性としては、上記課題への対応策を深化させることが中心になります。まず、評価信頼性の向上に向けて、シミュレーションとVPDのハイブリッドな活用が一層重要になるでしょう。既に先行事例では、VPDの結果を並行するCAE解析で検証し妥当性を確認する試みがなされています (品質工学会 論文賞)。今後はこのアプローチを発展させ、デジタルツインAIによる解析を組み合わせて仮想評価の精度と再現性を高める研究が期待されます。また、品質工学会では「VPDの可能性はシステム全体への適用範囲拡大、評価の速さとコスト低減にある」と指摘されており (品質工学会 論文賞)、より大規模・複雑なシステム(例えば自動車の統合制御システムや生産ライン全体の最適化など)への適用可能性が探られています。こうした分野では、部分最適の集合ではなく全体最適を実現する評価手法としてVPDの果たす役割が大きく、将来的な価値創出につながると期待されています (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)。一方で、「人を使った評価ゆえに残る課題」にどう取り組むかも未解決のテーマです (品質工学会 論文賞)。評価者の選定基準や評価プロセスの標準化、評価結果のばらつきを定量的に補正する手法など、VPD実施のガイドライン整備が今後の検討課題となります。実際、品質工学会の論文賞選考講評では「短時間で再現性のある評価ができることを示した」点や「複数コンセプトを評価できる可能性」を高く評価する一方、「信頼性と納得性に対する課題が多い」ことを認め、今後多くの事例を通じた技術蓄積に期待を寄せています (品質工学会 論文賞)。これは、様々な製品・プロセスでVPDを適用し知見を共有することで、手法の汎用性や問題点を明らかにしていこうという方向性を示唆しています。

最後に、品質工学会内部でも依然として慎重な意見はありつつも、VPDを含む「バーチャル評価」は今後の品質工学の重要な柱として認識されています ([PDF] バーチャル評価の現状と課題 (1) - 品質工学会)。社会全体のデジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り、設計段階のバーチャル化は製造業の競争力強化に不可欠となっています。その中で品質工学的アプローチを融合したVPDは、日本発の独自手法としてさらなる発展が期待されます。未解決の課題を一つ一つ検証・解決しながら、より多面的で信頼性の高いバーチャルパラメータ設計へと深化していくことで、製造業における新たな価値創造に寄与していくでしょう (品質工学会 論文賞)。

参考文献・情報源: 日本品質工学会誌「品質工学」論文・記事 (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)、品質工学会論文賞選定経緯 (品質工学会 論文賞) (品質工学会 論文賞)、企業技術報告 () ()、学会発表事例(コニカミノルタ、リョービ) (金型補修のための肉盛溶接のバーチャル設計と機能性評価) (構想設計へのバーチャル・パラメータ設計の活用の研究 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター)。



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