DQLは「勝つ確率」だけでなく「負け方」まで設計する
優れたDQLは、成功させる方法だけを考えない。
もし失敗した場合に、どこまで損失が出るのかも考える。
たとえば新しい生産設備を必要とする製品開発なら、最初から専用ラインを作らず、既存設備や外部委託を使って市場性を確認できないかを考える。
新しいAIサービスなら、最初から大規模なクラウドシステムを構築せず、既存ツールを使った簡易版で顧客価値を検証する。
新材料なら、量産金型を作る前に簡易試験片や加工品で重要特性を確認する。
つまり、
「成功する設計」だけでなく「失敗しても致命傷にならない開発の進め方」を設計する。
この能力があれば、成功確率の低いテーマにも挑戦しやすくなる。
これはギャンブルでいう資金管理に近い。
勝つ可能性があっても、一回の負けで全財産を失うような賭け方はしない。
研究開発も同じである。
「大穴狙い」と「高期待値テーマ」は違う
ここで注意したいのは、期待値で考えることと、大きな夢のあるテーマなら何でもよいということは違うという点である。
たとえば、
「成功すれば1000億円市場になる」
という研究テーマがあったとする。
しかし技術成立性はほとんど確認されていない。
顧客ニーズも曖昧である。
競合優位性もない。
それでも「成功すれば1000億円」と言えば、魅力的に聞こえる。
これは期待値というより、単なる夢物語である。
競馬でいえば、100倍の配当が付いているからといって、どんな馬でも買えばよいわけではない。
勝つ可能性がほとんどなければ、期待値は高くならない。
DQLが見るべきなのは、
市場規模だけではない。
顧客損失の大きさ。
自社の技術優位性。
競合との差。
成功までの時間。
必要投資額。
そして途中で得られる学習。
これらを総合して判断する必要がある。
つまり、
「夢が大きいテーマ」ではなく、「リスクに対してリターンが大きいテーマ」を選ぶ。
これが重要である。
技術テーマにも「オッズ」がある
ギャンブルの世界にはオッズがある。
勝つ可能性と、勝った場合の配当の関係である。
研究開発にも、目には見えないが似たものがある。
ある技術はすでに成熟している。
成功確率は高いが、競合企業も簡単に参入できる。
つまり成功しても大きな利益は得にくい。
別の技術は難しい。
成功確率は低い。
しかし成功すれば競合が簡単には追随できず、高い利益率を長期間維持できる。
この場合、後者には技術的な「オッズ」がある。
たとえば特殊材料、独自アルゴリズム、製造ノウハウ、特許、データ蓄積などが組み合わさると、成功したときの競争優位は非常に大きくなる。
DQLは技術テーマを見るとき、
「できるか、できないか」
だけを見るのではない。
「できたときに、どれだけ他社との差になるのか」
まで見る必要がある。
期待値の高いテーマには「非対称性」がある
魅力的な研究開発テーマには、ある特徴がある。
それは、成功したときの利益が大きく、失敗したときの損失が比較的小さいことである。
これを「非対称性」と考えると分かりやすい。
失敗すれば1000万円を失う。
しかし成功すれば数億円の新規事業になる。
こうしたテーマを複数持つことができれば、研究開発全体の魅力は高くなる。
逆に、
成功しても3000万円程度しか利益が出ないのに、失敗すれば1億円失う
というテーマは危険である。
成功確率が多少高くても、割に合わない。
簡単な例えを使えば、コイン投げである。
表なら100円もらえる。
裏なら100円失う。
これなら五分五分である。
しかし、
表なら1000円もらえる。
裏なら100円失う。
という条件なら、何度も参加する価値がある。
研究開発でも、
「当たるかどうか」だけでなく、「当たったときと外れたときの差」を見る。
これが期待値の考え方である。
※御社のプロダクト(製品・サービス)分野で同様の話が聞きたい!という場合は、どうぞご相談ください。
[無断転載禁止]