設計品質リーダー(DQL)という新しい技術者像
私たち株式会社ジェダイトでは、このような能力を備え、技術によって自律的に経営成果を生み出す人材を「設計品質リーダー(DQL)」と呼んでいる。
DQLとは、単に品質工学や統計解析に詳しい専門家を意味するものではない。また、役職としての技術部長や設計課長を指すものでもない。
自ら重要な技術課題を発見し、達成すべき目標を設定し、必要な技術や手法を選択し、関係者を巻き込んで成果を生み出す。そして、その成果を顧客価値と企業の経営成果に結びつけることのできる技術者である。
そこでは、品質工学、実験計画法、統計解析、シミュレーション、さらにはAIなども重要な道具になる。しかし、道具を使いこなせること自体が目的ではない。
何のためにその技術を使い、何を実現し、どのような価値を生み出すのか。
その目的と手段を自ら考え、行動する能力こそがDQLの本質である。
また、DQLには組織を動かす力も欠かせない。優れた技術的解決策を考案しても、設計、製造、品質、営業などの関係者が協力しなければ、実際の製品や事業の成果にはつながらない。
したがって、DQLには技術力だけでなく、説明力、交渉力、リーダーシップ、意思決定力も求められる。
言い換えれば、DQLとは、技術の専門性を基盤として、経営的な視点で仕事を進めることのできるリーダーなのである。
技術者の育成は、経営そのものである
ここまで述べてきた問題は、決して技術者個人の意識改革だけで解決できるものではない。
経営者や技術部門の幹部が、技術者に何を期待し、どのような仕事を与え、何を成果として評価しているかが重要である。
例えば、技術者に対して細かい業務指示だけを与え、決められた仕様を予定通り完成させることしか求めなければ、自律的に課題を発見し、経営成果を考える人材は育ちにくい。
反対に、顧客や事業の課題を共有し、達成すべき成果目標を明確にしたうえで、その実現方法を技術者自身に考えさせれば、仕事の性質は大きく変わる。
技術者は単なる業務の遂行者ではなく、課題解決の当事者となる。
その過程では失敗も起こるだろう。しかし、合理的な仮説を立てて挑戦し、結果を検証し、次の行動へとつなげる経験は、自律的なリーダーの成長に不可欠である。
経営者は、成果を厳しく求めると同時に、必要な権限や資源、挑戦の機会を与えなければならない。責任だけを押しつけても、自律的な人材は育たない。
DQLの育成は、人事部門が実施する研修の一つではない。経営者自身が取り組むべき、企業の収益力と将来の競争力を高めるための経営戦略なのである。
「技術力の高い企業」から「技術で稼げる企業」へ
これからの製造業やテック企業が目指すべき姿は、単に高度な技術を蓄積した企業ではない。
自社の技術がどのような顧客価値を生み、その価値がどのように売上や利益へ変換されるのかを理解し、実際の成果につなげられる企業である。
そのためには、優れた専門技術者に加えて、技術と経営を結びつけ、自ら考え、判断し、行動するDQLが不可欠になる。
技術者を単なる開発・設計業務の担当者として扱うのか。それとも、自律的に価値を創造し、企業の成長を担う人材として育てるのか。
この違いは、長期的には企業の競争力に大きな差を生むはずである。
「技術力の高い企業」と「技術で稼げる企業」は同じではない。その違いを埋める人材こそ、設計品質リーダー(DQL)なのである。
では、こうしたDQLは、日々の仕事に対してどのような姿勢で取り組むべきなのだろうか。
次回は、多くの技術部門に根強く残る「できるだけ頑張る」という仕事の進め方を取り上げ、「これだけ実現する」という成果志向への転換について考えてみたい。
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