2025/06/16

【つるぞうに聞く】品質工学と生成AIはデータエンジニアリングの要!

 聞き手「日本の1人当たりGDPが、かつて差をつけていた国々に抜かれてOECD加盟国の中でも21位という状況。これは気になりますよね」


つるぞう「そうですね」

聞き手「今日は、日本の強みである『ものづくり』を新しい技術でどう強化して、この状況を乗り越えていけるのか、その可能性について深く見ていきたいと思います」

つるぞう「はい。特に製造業の国際競争力強化は、本当に喫緊の課題ですよね」

聞き手「ですよね」

つるぞう「いろいろな方法はありますが、やはり日本の元々の強みである製品やサービスの性能品質、そして研究開発技術力を、現代のツールでどう磨いていくかが非常に重要になってきていると思います」

聞き手「その鍵として最近よく聞くのが、データサイエンスや生成AIですね」

つるぞう「ええ」

聞き手「でも正直なところ、データ活用は一部の巨大なテック企業だけの話かな、というイメージがありました」

つるぞう「かつてはそう見られていたかもしれませんね。しかし技術が進歩し、より多くの企業がデータ活用に取り組めるようになってきています」

聞き手「そうなのですね」

つるぞう「ただ一方で課題もあり、データを蓄積するところまではできても、それを本当に活用して事業貢献につなげる段階まで到達できているかというと、企業によって差が開き始めているのが現状です」

聞き手「差、ですか。具体的にはどういうところで差が出ているのでしょう?」

つるぞう「いくつかありますが、まずデータ活用の目的自体が曖昧だったりします。あとは、それを扱える人材の育成や確保が追いついていないこと」

聞き手「人材の問題ですね」

つるぞう「ええ。それから、高速で大量のデータを処理するためのシステム投資が壁になることもあります。ですので、早くから取り組んできた企業とそうでない企業とで、成果に二極化が進んでいるのが実情かと思います」

聞き手「なるほど。そういう状況の中で『データエンジニアリング』という言葉も最近耳にしますが、これはデータサイエンスとはまた違うアプローチなのですか?」

つるぞう「私たちが重視しているのは、いわゆる流行りのビッグデータというよりも、もっと身近な、例えば工場の生産ラインなどから日々生まれてくるような『普通のサイズ』のデータを、どう事業貢献に生かすかという点です」

聞き手「へえ、『普通のサイズ』のデータ」

つるぞう「はい。これを私たちは『データエンジニアリング』と捉えています。1年から数年先を見据えた事業の損益改善にダイレクトにつながるような、地に足のついたデータ活用というイメージです」

聞き手「普通のデータを地に足のついた形で活用する、と。具体的にはどのような方法があるのですか?昔ながらの統計分析だけではないのでしょうか?」

つるぞう「もちろん従来の統計解析も重要ですが、特に私たちが注目しているのは『品質工学』という分野です」

聞き手「品質工学?」

つるぞう「はい。これは実験を非常に効率化し、製品やプロセスを迅速に改善・最適化できる、とても強力な手法です」

聞き手「強力なのに、ですか」

つるぞう「ええ。ただ、難解だと思われているせいか、本来最も活用すべき製造業の現場での普及が、残念ながら十分に進んでいないという現状があります」

聞き手「そんなに強力なツールなのに普及していない。それはやはり難解だからというのが一番大きいのでしょうか?」

つるぞう「それが大きな理由の一つだと思います。ただ、その難解さを乗り越えてでも得られるメリットを、私たちが十分に伝えきれていなかったという面もあるのかもしれません」

聞き手「なるほど」

つるぞう「例えば、完璧なケーキを焼く実験を考えてみてください」

聞き手「ケーキですか、はい」

つるぞう「何百回も材料の配合を少しずつ変えて試すのではなく、品質工学は、ほんの特定の組み合わせの実験だけで、最適な配合や焼き時間を見つけ出す『設計図』を与えてくれるようなものなのです」

聞き手「へえ、それはすごい効率的ですね」

つるぞう「そうなんです。この強力さをもっと現場で使いこなせるように、手法自体もよりシンプルで分かりやすくする工夫が重要だと考えています」

聞き手「なるほど、効率的な実験計画ですか。それはすごく面白い視点ですね。そこに、最近よく聞く『生成AI』は、どう関わってくるのですか?」

つるぞう「生成AIは、例えば商品企画や新しいアイデアの発想といった領域で、その効率を高める可能性があります」

聞き手「アイデア出しとかで」

つるぞう「はい。ですから、現場改善を加速するデータエンジニアリング、特に品質工学のようなアプローチと、企画力を高める生成AI、この両輪がうまく回ることが重要になってきています。最近ではその境界線も、それほど意識されなくなってきている感じがありますね」

聞き手「ということは、品質工学のような実践的なデータエンジニアリングの手法で、まず現場の効率をしっかり高める。その上で、生成AIのような新しいツールで企画や開発をさらに加速させる。この組み合わせが、他社や他国との差別化につながるかもしれない、ということですか?」

つるぞう「まさにおっしゃる通りです。重要なのは、単なる改善や問題解決で終わるのではなく、新しい価値を創造していくことです」

聞き手「新しい価値」

つるぞう「データエンジニアリングで現場の効率を高めて無駄をなくし、リソースを生み出す。そしてその浮いたリソースを、今度は生成AIなども活用しながら、もっと付加価値の高い仕事や新しい挑戦に振り向けていく。こうした地に足のついたデータ活用こそが、本当の意味での競争力を高める鍵だと、私たちは考えています」

聞き手「単に流行りの技術に飛びつくのではなく、まず自分たちの現場にある普通のデータとしっかり向き合い、品質工学のような本質的で強力な手法と、生成AIのような新しいツールを戦略的に組み合わせるということですね」

つるぞう「ええ」

聞き手「それが、日本の産業がもう一度輝くための一つの道筋になるのかもしれないですね」

つるぞう「そうですね。ですから、今日のお話を是非皆さんの身近なところに引き寄せて考えてみてほしいのです」

聞き手「はい」

つるぞう「もしあなたの仕事や関心のある分野で、まだ十分に活用されていないデータや、眠っている手法があるとしたら、それは一体何でしょうか?そして、それを活用することで、どんな新しい価値が生まれる可能性があると思いますか?日本の産業全体の復興も、そうした一つ一つの現場での具体的な実践から始まるのかもしれませんよ」

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