2024/04/29

【超実践品質工学】設計・開発業務でこんなこと起こっていませんか~悪魔のサイクル~①

  設計・開発業務でこんなこと起こっていませんか~悪魔のサイクル~①

  視点をみなさんの職場,設計・開発の現場に移して,現状の仕事の進め方の考察をしていきましょう.これから説明する内容はワーストケースですが,みなさんの仕事の進め方にも当てはまり,「あるある」と思えたことは,忘れないようにより具体的にメモしておいてください.そしてそのあと,その現状が事実なのかどうかを現場・現実・現物(3現,つまりデータ)で押えておくことが重要です.これは,改善や問題解決の計画を立案する際に,最初に考えるべきことだからです.

  図1-4-1は,一般的な設計・開発のプロセス(仕事の進め方)における現状と問題点を示しています.これを「悪魔のサイクル」とよんでいます.サイクルですので,同じような出来事が開発のたびに起こります.順にみていきましょう.




図表1.4.1 設計・開発における「悪魔のサイクル」

 まず時計で12時の位置にある「リソース不足での設計・開発」から説明をはじめます.設計・開発部門におけるリソース(主にマンパワー,時間,お金)が十分にあってゆったりと仕事が進められる職場はほとんどありません.経営者は必要最小限のリソースで最大の成果を挙げたいと考えています.技術者は案件や対象機種を多くかかえ,また新規で未知の部分も多いため,検討に時間がかかります.設計仕様の変更を要求される場合もあります.計算や実験での検討時間が足りない場合は,過去の設計流用ですませたり,試作試験での検証の結論を先送りしたりして,不完全なまま次のステップに進んでしまいます.デザインレビューにも問題点がありそうです.十分検討時間を取るために,開発を早く始めればよいのですが,すでに出荷した製品のトラブル対応に追われる結果,現在の開発スタートも遅れてしまいます.(つづく)


2024/04/27

【超実践品質工学】「設計品質」とは何だ?②

  「設計品質」とは何だ?②(つづき)

 ところが,そのような「設計すべき」ものである「ねらい」がどのくらい設計図面に反映されたか,という品質もあります.これは品質目標ではなく,設計の結果です.この品質の中核となるものが,さまざまな使用条件や環境に対する機能の安定性です.いくら製造が図面通り正確に作ったとしても,この機能の安定性が設計で確保されていなければ,安定性の悪い製品が量産されて大量に出ていくだけです.そのあと,これらがお客様の使用段階で不具合を発生させます.

 製造段階の検査でわかるのは,部品の寸法や外観,完成品の性能的な特性(定格出力,騒音など)だけです.「設計した品質」が正しいかどうかは,製造現場では図面が正しいとしていますので,わかりません.「設計した品質」の確認や確保は設計・開発段階でしかできません(あるいは,使用段階で露呈するかです).つまり外観や性能だけでなく,機能の安定性まで確保した設計を,図面に反映させておかなければならないのです.

 そうしますと,一言で設計品質といっても,市場やお客様の要求を反映した企画としての設計品質は「ねらいの品質」,「品質目標」,「設計すべき品質」といえますし,設計した結果(図面)がどれくらいねらいに当たっているのか,その図面通りに作られた製品の品質は,「設計のできばえの品質」,「設計した品質」といって区別するとわかりやすくなります(図表1.3.1).設計した結果得られる機能の安定性は「設計した品質」の一部を指しています.断りなく「設計品質」といえば,「設計段階で決まる品質」程度の広い意味を表すこととします.

図表1.3.1 設計品質の分類と定義(筆者による分類)




2024/04/26

【超実践品質工学】「設計品質」とは何だ?①

  「設計品質」とは何だ?①

「設計品質」という言葉を筆よく使います.しかし,さまざまな人がいろんな文脈で使用するため,設計段階で確保すべき品質なのか,設計者の品質なのか,設計プロセスのしくみの品質なのか….さらに「品質設計」という言葉まで飛び出してくるので,頭がこんがらがります.ちなみに「設計品質」の定義 を調べると,以下のように記載されています. 


「品質特性に対する品質目標(JIS Q 9025).製造の目標としてねらった品質.ねらいの品質ともいう.(中略)また,実現された品質を製造品質あるいはできばえの品質という」

設計品質は「ねらいの品質」というので,お客様の期待を反映して何を設計すべきかという,企画の内容を指していることになります.それと対比させて「できばえの品質」は,上記の設計品質をねらって製造した,製品の実際の品質ということです.製造段階では部品寸法や材料,作業などのばらつきがありますので,厳密に図面の中央値どおりには作れません.中には図面の公差範囲をはずれて不適合品(工程内不良品)もでてきます.できばえの品質を測る指標として,不適合品率(工程内不良率)があります.

 設計品質についてもう少し掘り下げましょう.製造は「設計した」結果である図面にしたがって,その通りに部品や製品を作ります.指定された図面や,検査規格などにもとづいて,前記の「できばえの品質」を管理します.では,その「設計した」図面は正しいのでしょうか.これにも品質があります.上記の設計品質(ねらいの品質)には,まず「設計すべき」ものが正しいかどうかの品質を指しています.市場調査や製品企画で決められる目標ですね.上記のJISの定義はこれを表しています.(つづく)


2024/04/24

【超実践品質工学】開発の後期になるほど高くつく対策コスト

開発の後期になるほど高くつく対策コスト

 製品が出荷された後の使用段階での不具合やクレームの主要因は,設計・開発段階にあることはこれまで述べてきました.設計・開発段階での検討もれや考え方の修正はどの段階で行えばよいのでしょうか.図表1.2.1は,設計・開発段階での対策コストを1とした場合の,それ以降での修正コストの比率および金額を示しています.縦軸が対数(1目盛り10倍)になっていることに注意してください.

 設計・開発段階で不具合が発覚した場合の対策コストを1とすると,生産開始前でその10倍,製品出荷前で500倍,市場出荷後では実に10,000倍もの修正コストがかかることが示されています.製品の規模にもよりますが,この例では設計・開発段階に間違いと気づいた場合の修正コストは$30なっており,図面の訂正にかかる時間の人件費相当と計算されています.これが市場出荷後の不具合発覚となると,発生コストは$1,000,000すなわち1億円レベルと試算されているのです.つまり,設計・開発段階での見落としや間違いが市場出荷後まで見つからず,お客様の使用段階で発生してしまった場合,多くの場合製品全数への対応(交換,修理,保証など)になるため,膨大な対策費用が必要となるのです.人命が係わるような製品や,社会システムなどでは,社会に与える損失の大きさを考えると,さらに対策コストが大きくなることは明白です.

 この分析からもわかるように,不具合の発覚が後になるほど対策コストは文字通り指数関数的に大きくなっていきますので,品質への対応はできるだけ早い段階,できれば設計・開発の初期段階で行っておきたいわけです.技術者は優秀に問題を解きますので,見落としや間違いがわかりさえすれば,すぐにその対策を考えて,設計変更する,方式を変えるなどの対策を打てます.ですので,大事なことはいかに設計・開発の初期段階で,品質を「見える化」するかではないしょうか.そこで以降,「品質を見える化」するとはどういうことなのかを考えていきましょう.



図表1.2.1 製品開発の各ステップにおける不具合発生時のコスト

出典;H.Hamada(1991)Euro Pace Quality Forum.

2024/04/22

【超実践品質工学】品質工学で扱う「品質」とは④

  品質工学で扱う「品質」とは④  (つづき)

 さいごに,グラフの一番下に示した,③の曲線です.お客様はカタログに記載されたとおりの「性能」を期待していますので,新品の段階や,あるいは使用しているうちに性能が低下してきたり,故障して性能や機能が維持できなくなったりすると,クレームになります.通常私たちが製品を使う際は,期待した期間(たとえば家電製品なら7~15年くらい)は新品の時に備わっていた性能は維持してほしいと考えます.蛍光灯やランプであれば明るさは変わらないでほしいし(実際は暗くなります),パソコンの処理速度は変わらないでほしい(実際はメモリへのアクセスなどが遅くなります)と考えます.また劣化の問題だけでなく,使い方の違いによって性能が変化してほしくないとも考えます.たとえば,自動車のブレーキは晴れの日の乾いた路面でも,雨の日の濡れた路面でも同じように効いてほしいのです(実際は異なります).このように,「新品と同じ性能を維持する」,「どのような条件でも同じ性能を発揮する」というのは,言われてみればそのとおりで,「あたりまえ」と感じます.

 このような品質のことを「あたりまえ品質」といいます(そのままですが,わかりやすいネーミングですね!).変化しない,故障しないで機能するのがあたりまえなのですから,充足度が上がっても(グラフの右側にいくほど故障が少ない),満足度が「あたりまえ」以上になることはありません.逆にそれが達成できなかったとき(グラフの左側)に満足度は大きくマイナスに振れます.その意味では,マイナスしかない品質です.このような種類の品質は,魅力的品質とは逆で,誰もが欲しくないと考えている品質です(お客様によって感じ方の程度は異なります).不具合や変化・変動はゼロが望ましいので,マーケティングや企画は関係なく,純粋に技術的な問題として取り扱います.「信頼性」や「耐久性」や「安定性」に関係する品質です.設計・開発段階での検討がまずいと,このような「あたりまえ品質」が十分でない悪い製品が出荷されてしまい,お客様に迷惑をかけることになります.

 以上3種類の品質について説明しましたが,実は品質工学で扱う品質というのは,主に「あたりまえ品質」の部分です.もちろん,性能抜きにしては製品や技術の評価はありえませんので,「一元的品質」も関係しますが,性能の確保は,品質工学の評価や改善の直接の対象ではないのです.「一元的品質」は,品質工学を適用する前の,機能設計と言われる段階で事前に確保しておくべきことです.要するに,「普通の条件でちゃんと動く」ものを作る段階です.品質工学で扱う「あたりまえ品質」は,そのような「ちゃんと動く」状態が,使用による劣化や使用条件によって左右されないかを扱うので,技術の仕上げのための品質といってもよいでしょう.


図表1.1.3 狩野モデル


2024/04/21

【超実践品質工学】品質工学で扱う「品質」とは③

品質工学で扱う「品質」とは③(つづき)

 つぎに,グラフの真ん中に示した,②の直線です.これは「一元的品質」とよばれていますが,あまりなじみがない言葉でしょう.これは性能を中心とした特性や,ランニングコスト,重量・大きさなど,満たされる度合いによって満足するものと考えてよいでしょう.みなさんパソコンを購入するときに,何に着目して選びますか.機能や性能,すなわち,CPUの処理速度,メモリやハードディスクの容量,ディスプレイの大きさ,通信機能の種類,重量,OSやソフトウェアの種類,そして価格と相談といったところでしょうか.その場合に,カタログ(仕様表)でこれらを機種比較して,価格が見合えば購入します.予算が決まっているので,すべて最高スペックというわけにはいかず,またその必要もないので,用途やその人が重点をおく項目(速度や容量や重量やソフトウェアの種類や有無など)によって強弱をつけるでしょう.

 これらの性能を中心とした一元的品質は,あらかじめカタログの仕様書などで明示されており,価格との比較で選択できるものと考えればよいのです.この場合,横軸の充足度(性能の高さ)と満足度の関係はどうなるでしょうか.性能が高いものはそれに見合う価格がついており,お客様はそれに納得して購入しています.ですので,魅力的品質のように満足度が大きく上昇することもありません.逆に性能が低い場合はそれで十分と考えて,価格の安いものを納得して選択した結果であり,性能が低いからといってクレームにはなりません.一元的品質に関する満足度のグラフは少し右肩上がりになります.この一元的品質は,競合他社としのぎを削る技術的な問題であり,またどれくらいのレベルが求められるのかといった,マーケティングや製品企画の問題も含んでいます.(つづく)


図表1.1.3 狩野モデル



2024/04/20

【超実践品質工学】品質工学で扱う「品質」とは②

  品質工学で扱う「品質」とは②(つづき)

 このようなことをうまく説明したのが「狩野(かのう)モデル」という,図表1.1.3のチャートです.魅力的品質は①の一番上の曲線です.グラフの横軸は企画や設計がどれくらい達成できているか,物理的に満たされているかの度合(充足度)です.「魅力的品質」では右にいくほどデザインや使い勝手がよくなるということです.縦軸はお客様の満足度です.魅力的品質が少ない簡素なデザインや最低限の機能しかない製品でも,きちんとカタログや仕様書通りに機能してくれればクレームになることはありません.つまりグラフでは横軸で左にいっても,満足度は0付近までで下げ止まり,マイナスにはなりません.その一方で,魅力的品質を高めた製品は,人々を魅了し,非常に高価な対価を払ってでもそれを愛用したいというお客様も現れます.現在では1000円も出せば,正確に時を刻む(つまり,時計としての働きが正常な)腕時計が買えますが,世の中には100万円や1000万円の腕時計の市場もあるわけです.これを可能にしているのが魅力的品質です.繰り返しになりますが,これは好みの問題で,あまり技術とは関係ありません(技術者は薄給なので高級品とは関係ない,という意味ではないですよ!).


図表1.1.3 狩野モデル

(つづく)


2024/04/19

【超実践品質工学】品質工学で扱う「品質」とは①

  品質工学で扱う「品質」とは①

  普段,私たちが「品質がよい」というとき,それは何を意味しているのでしょうか.インターネットの表現からいくつか例を引いてみましょう.

 「○万円のインプラント治療.安くても品質が良い理由」

 「○○県の農作物は品質が良い」

 「テレビ・ラジオの受信品質が良い」

 「飲み物の品質が良い,○○ホテルのリバーサイドカフェ」

 「品質が良い日本製シルバーメタリック○○(製品名)」

 「品質がよいみんなのウェディング」

 「○○(放送局)の情報は品質がよいのでしょうか」

 「○○(宿泊施設)の温泉の品質が良い」

 ・・・いやはや,いろんなものに対して,品質が良いといえるものです.その製品を手にしたり,サービスを受けたりしたときに,他より感じが良くて,コスト的にも満足である,安心できる,自分の要求や好みに合っている…というのが全体的な意味でしょうか.

 携帯ミュージックプレイヤーやタブレットコンピュータ,携帯電話などで,必ずA社の製品を選ぶというファンが一定数いますね.その製品のデザイン(外観),ユーザビリティ(使いやすさ),持ったときの感覚,A社の製品に対する考え方…等々に魅力を感じて,多少他の部分―――価格が高いことや,一部の機能がついてないこと,あるいは耐久性が弱いことなど―――は目をつむってもA社の製品のお客様であることに満足を覚えるのでしょう.あるいはそのような自分に満足を覚える人もいるでしょう.高級車やバッグでも特定のブランドのファンである人がいますが,これも似たような感覚なのかもしれません.

 このような意味での品質を「魅力的品質」といいます.魅力的品質は,好みは百人百様であり,これが正解とよべるものありません.これは,どんな製品を企画して市場に投入するか,どんなイメージ戦略で売るのか,高級感を出した方がよいのか,デザイン,風合い,使い勝手などの差別化は…といったことがポイントとなる品質です.どちらかというと,マーケティング部門や製品企画部門に関係がある内容で,設計・開発の方には「あまり関係ないな」と感じる分野かもしれません.魅力的品質の一つの特徴は,それを洗練,高度化させることで,大きくお客様の満足度を上げられることにあります.(つづく)


2024/04/16

【超実践品質工学】設計・開発プロセスのここが問題!目指すべきプロセスとは?②(つづき)

  設計・開発プロセスのここが問題!目指すべきプロセスとは?②(つづき)

 製造段階での「品質管理」は,戦後に活発化した組織的な活動や統計的な手法の活用によって,世界一といえるレベルに到達・成熟してきました.また製造の自動化・IT化,さまざまなフェールセーフ,エラープルーフ などの対策により,人による作業のばらつきやミス,勘違いなどによる不具合も起こりにくくなりました.それでも製造の間違いやミスが多いとすれば,それは製造しにくい設計がまずいからと考えるべきです.品質保証部門や品質管理部門で行われる製品や半製品の検査についても,検査にパスした「合格品」が使用段階でトラブルを起こしていることから,検査が漏れているのではなく,そもそも「合格品」の定義が間違っているということでしょう.合格したものはお客様の使用段階で不具合とならないように設計しておく必要があります.どのような状態を合格品として,何を(どんな特性値を),いくらの範囲で(どのような合否基準で)検査するのかを決定するのは,図面や仕様書を規定すべき,ほかならぬ設計・開発部門です.購入部品が起こしたトラブルについても,部品の評価基準を決めて,部品を選定した設計・開発部門です.部品評価の実務は専門の部隊が行っている場合も多いですが,その基準(方法やスペック)を決めるのは,やはり製品設計に精通した設計・開発部門の役割が大きいといえます.これらをまとめたのが,図表1.1.2です.

 このように,設計・開発部門は製品の性能,品質,コストなどについて,大本のところで大きな責任を担っていることがわかります.そのため,使用段階での不具合の要因を整理すると,冒頭のようにほとんどが設計・開発段階に起因したものになるわけです.未知の事柄も多く,検討すべきことが多い上に,不具合が起こったときには現在の開発を置いても対応に駆り出されるのですから,設計・開発部門の方が忙しいのもうなずけます.

図表1.1.2 不具合の発生要因と設計・開発部門の役割


2024/04/15

【超実践品質工学】設計・開発プロセスのここが問題!目指すべきプロセスとは?①

 市場不具合の原因は,設計・開発段階で70~85%を占める

 自動車,家電製品,衣料品,食品,医薬品のような工業製品,あるいは発電所,電鉄,トンネルなどの社会インフラ,宇宙に打ち上げられるロケットや人工衛星に至るまで,人が作り,形があるものは,ハードウェアとよばれます.毎日のようにハードウェアの故障や安全性の問題,検査データの改ざんや手抜き工事,開発や検査のしくみ・組織のまずさなど,さまざまな形でハードウェアの技術の問題点が報じられています.いったい,我が国のものづくりはどうなっているのだ,という懸念をお持ちの方も多いと思います.意図的な改ざんや,想定外(と当事者がいっている)不具合が報じられる一方で,大部分の製造業や建設業等では日々技術開発にしのぎを削り,品質やコスト,サービスの改善に真摯に取り組んでいるのです.それでもさまざまな理由で,十分に不具合を予測できずに上記のような問題が繰り返し発生します.製品がお客様の手に渡り,使用される段階でのトラブルはどのようにして起こるのでしょうか.本書では主に工業製品を取り上げてその問題を考えていきます .

 ある調査 によりますと,図表1.1.1に示すように,AV製品のクレームの85%が設計責任であると報告されています.つまり製造不良などの生産部門の責任や,検査もれなどの品質保証部門の責任は高々15%ほどだというのです.これは一例にすぎませんが,クレームやお客様の使用段階での不具合の大半は,設計・開発段階の要因(購入品の評価・選定も含む)によると考えられています.つまり,設計・開発段階での仕事の質や,どれだけリソースを有効に投入したかによって,製品品質の大半が決まってしまいます.これはなぜなのでしょうか.(つづく)

図表1.1.1 製品クレームの要因の一例

出典:N-TZD研究会報告書 http://qcd.jp/pdf/corporateActivuty/n-tzd-R.pdf


2024/04/14

最高に魅力的な仕事には、必ず統計学が必要になる

 統計データほどセクシーなものはない。積極的に使いこなそう。インターネットの世紀で最高に魅力的な仕事には、必ず統計学が必要になる。それは限られたオタクの世界に限らない。 ハル・バリアンは「個人にとって間違いのない選択肢は、値下がりしているモノと補完性のある分野で専門性を磨くことだ」と指摘している。データは、それを処理するコンピューティング能力とともに、確実に値下がりしている。私たちはビッグデータの時代に生きている。ビッグデータを理解するには、統計のプロが必要だ。データの民主化は、それを分析できる者が勝者となることを意味している。 データは二一世紀の剣であり、それを使いこなせる者がサムライだ。 だから戦士たちよ、剣を研げ。統計学を身に着けるのだ。

「数字は苦手なんだけど・・・・・・」という人もいるかもしれない。とくに後ろのほうに座っている、派手なカラーシャツを着たそこの君。だが心配はいらない。 希望はある。適切な質問を投げかけ、その答えを解釈する能力も、答えそのものを導き出すのと同じぐらい重要なスキルだ。どんな業界で働いていようとも、適切なデータを適切に処理することが、正しい意思決定にどのように役立つかをきちんと理解する必要がある。数字が得意な人々にどんな質問をするべきか、またその答えを活用する最適な方法は何か、学習しよう。 数字に強くなくても、賢明な選択のための数字の使い方を習得することは可能だ。

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ著「How Google Works」より。


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2024/04/13

「業務改善の面白さを実践しながら伝えていきたい」などのの生の声をご紹介②

  設計品質リーダー育成コースにご参加いただいた塾生からの声をご紹介いたします。いずれも経営幹部様への成果報告会で本人の口から報告された、気づきやリーダとしての心構えに関する生の声です。受講生の成長や熱気を感じてください!

☑金額等の定量的な数値で問題点を明らかにする事で、問題の重要性・緊急性を関係者に共有しやすい。

☑困難なテーマほどリーダーが行動し、周りの協力を得ながら推進する。

☑品質工学の手順で結果を出すだけでなく、得られた情報を元にどう改善すべきかを考察する重要性を学んだ。

☑コース参加メンバーで議論することにより異なる視点からの意見や他事業部での活動情報を得ることができる。

☑「提言書」としてまとめることで、改善活動の価値を自身で客観的に把握するとともに、上位者に簡潔に提案することができる。

☑提言書は一定の雛形を用いて短時間で業務改善提案が可能なツールである。これを活用を推進することで、業務改善の面白さを実践しながら伝えていきたいと思う。

☑事実に基づく分析や、相手にわかりやすいデータの見せ方による説得力の大切さを学んだ。

☑仕組み一つでも設計者が、つい手を抜きがちなところを早めに指摘してもらえる効果がある。

☑上市後、如何に設計変更せずに済ませられるか、との視点が利益に繋がる。

☑課題を見過ごしたり、先送りにしていた。「変わらねば」との意識が強くなった。

☑これまで経験則や想像で手当たりに設計し、試作→評価→手戻り・再設計といった非効率的な設計・評価手法を改めることができると感じた。

☑効果金額の規模感を事前に知ることで、限られたリソースで会社の利益に貢献できる。

☑はじめは難しいイメージだったが、先生の説明で仕組みが理解でき、さらに実践で開発効率化に有益なツールであることが「発見」できた。

☑開発設計にとどまらず、QFD等の手法を営業や事業企画部門と共有して活用していく。

オンラインセミナー、コンサル等、お気軽にお問い合わせください。

2024/04/11

「自分の取り組みで大きな金額を動かせることが分かった」などの生の声をご紹介①

  


 設計品質リーダー育成コースにご参加いただいた塾生からの声をご紹介いたします。

いずれも経営幹部様への成果報告会で本人の口から報告された、気づきやリーダとしての心構えに関する生の声です。受講生の成長や熱気を感じてください!

☑社内の様々な人に接することで当社内の業務を知るきっかけとなり視野が広がった。その中で、様々な部署の仕事の進め方が今後の自分の業務改善に つながることがわかった。

☑期間や費用等、明確なビジョン・目標を開発初期より持ち、それらを部下としっかりと伝えて共有することで、生産性の高い組織をつくることができると感じた。

☑不良損失を未然防止することで、会社の利益に貢献できること、コストに対する意識を今まで以上に持つようになった。

☑実際に効果試算の数値が出てくると、ふだん意識していない程の効果があり、当コースで実践した提言/改善活動の有用性を改めて感じた。

☑お客様のための品質であることを再確認した。また、自分の取り組みで大きな金額を動かせることが分かった。

☑リーダーとして“この人が言っているなら大丈夫” と思われる技術者となるべく、現状に満足せず、期待の一歩先に進んでいく。

☑まだ”ばらつき”に対する考え方が弱い。ばらつきを考慮した設計、製造ができるように、知見や考え方の定着を牽引する人材になる。

☑改めて世の中とのギャップに気づいた。現状分析により理想との差、講師出身企業などとの他社との差。

☑クレーム対応は顧客満足向上のチャンス。その場しのぎではなく、お客様を第一に考えた対応を実施していく。

☑提言書によって最初に計画を整理できた。実際に取組む時にはアウトプットをイメージできるので、業務をブレずに遂行することが出来た。

☑講師や活動メンバーから、具体的な実施アドバイスを頂いた。自身の枠にとらわれずに活動するメリットを改めて感じた。

オンラインセミナー、コンサル等、お気軽にお問い合わせください。

2024/04/09

「品質が悪い」ということが具体的にどういうことなのか

  先日ある会社様へのコンサルで、「製品の品質が悪いので、製造工程の上流(投入材料、製造条件など)にもどって、工程条件と品質の関係を調べている」との相談を受けた。

 お手伝をし始めたきっかけが品質工学や多変量解析であったため、そのようなツールを使ったデータ解析を行っているようだ。しかし、確認のためその活動の目的を聞いても、どうも腑に落ちない。どうもデータ分析が目的になってしまっているようだった。

 そこで、こちらから「品質が悪い」というのは、具体的に以下のどのケースなのかを再度訪ねた(ここでは、企画の品質、すなわちその製品が売れるかどうかにかかわる品質は除外している)。

1)そもそも図面通りにものが作れず、適合品が十分にとれない問題(この場合、適合品が所定の機能、性能をもつことは前提にされていることが多い)

2)図面通りに作って、そのようになっていることも工程管理や検査によって確認しているにも関わらず、正常に機能するものが十分にとれない問題

3)上記をクリアして良品を出荷したにも関わらず、客先や市場でトラブルを起こす問題(出荷試験モレによる初期不良を除く)。

 これらはそれぞれ原因が異なるし、責任部門も異なる。つまり、「品質が悪い」ということが具体的にどういうことなのかを、活動する本人たちがしっかりと認識していないと、正しい活動にならないし、品質がなかなか良くならないばかりか、かえって悪くなってしまう場合もあるだろう。医者が患者の病状を知らずに治療をするようなものである。一部のコンサルタントでも、このような区別があいまいな人もいるので注意が必要だ。


1)は、標準どおりの作業で、図面どおりモノが作れる製造工程の工程能力(設計中央値に近いものを数多く作れる能力)の問題である。工程設計を行う生産技術部門によって実施する、工程設計段階の問題である。もう1つは実際にその工程を運用、管理する製造工程内の品質管理の問題である。前者の設計がうまくいっていないと、後者の活動の効果は限定的であるのはいうまでもない。
 なお、製造工程についても信頼性の問題が重要であり、上記の設計に含まれる。すなわち工程で規定される5M要素(材料、人、機械設備、方法、計測)に逸脱(間違いや変化など)が生じたときの影響を事前に想定して、工程設計にその対策を講じておく設計である。この工程の信頼性設計のチェックの用いるのが工程設計FMEA(PFMEA)である。

2)は図面通りのものが機能しないのだから、製品設計の中の機能設計(少なくとも設計中央値で目的の機能を発揮する設計)の問題である。この設計ができていなければ、たとえ製造段階でばらつきなく図面通りに製造しても、目的の機能をもつ製品はつくれないことになる。このような設計が製造段階まで流出したのだから、機能設計がまずいだけでなく、それをチェックするためのしくみ(デザインレビュー、機能試験など)も不十分であるということだ。機能や性能の上限は、どのような技術手段を選ぶか(システム選択)でおおむね決まってしまうので、大本をたどれば、源流の研究開発の段階の活動の不十分、不備
も考えられよう。
 なお、実際は製造でもばらつきが発生するため、設計中央値に適切な許容差をもうけて、その範囲の製造ばらつきが生じても機能する設計(許容差設計)も必要となる。その許容差の中でモノが作れるかどうかが1)の問題である。

3)は、良品(図面通りに作り、所定の社内試験や検査に合格したもの)が、市場(輸送、保管、使用のすべての段階)において、環境条件の違いや、ストレス、経時変化による劣化などの影響によって、故障(初期の機能や性能が低下、場合によっては完全に停止)する場合である。このような事態は、ユーザーの「これくらいの条件では使用できるだろう」「これくらいの年数は使用できるだろう」という暗黙の期待を裏切るので、クレームやブランドチェンジにつながる。
 これに対する事後の対応は品証やCS部門などになるが、そもそもこのようなことが発生しないように責任をもつのは、製品設計のうち信頼性設計とよばれる部分である。2)で製品設計には機能設計が必要と述べたが、それに加えてこの信頼性設計が必須となる。このような設計が市場段階まで流出したのだから、信頼性設計がまずいだけでなく、それをチェックするためのしくみ(製品設計FMEA(DFMEA)、デザインレビュー、機能性評価、信頼性試験など)も不十分であるということだ。

 冒頭の会社様の問題はおもに2)の問題であることがわかった。このように、現在起こっている「品質の問題」というのがどのような現象で、どこの工程(部門)の仕事に問題があるのかの根本原因をつきとめて対策を立案する必要がある。きわめて基本的なことだが、ちょうどそのような場面に遭遇したのでメモ程度に残しておく。

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2024/04/08

独占インタビュー!? データエンジニアリングの重要性について語る!


 

聞き手

ジェダイトさんは社名の由来にもあるとおり、日本産業にこだわりを持っていますね。


つるぞう

その通りです。日本の一人当たりGDPは、3万6230ドルで、韓国、台湾、中国より高いものの、OECD加盟国34か国で20位です(2015年度)。残念ながら1970年以降最も低い順位になってしまいました。※インタビュー当時の数値データです。

聞き手

どのようにしていけばよいのでしょうか。

つるぞう

日本の特に製造業の国際競争力強化に向けては、税負担の問題や各種規制の問題も大きいですが、やはり日本企業の「製品・サービスの性能・品質」「研究開発・技術」という”強み”をより強くして戦っていく必要があります。

聞き手

その中で最近は、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)の利活用に代表されるような「データサイエンス」が次の柱として取りざたされています。

つるぞう

GoogleやAmazonのような超巨大企業はともかく、多くの一般企業ではこれらの言葉が先行し、「溜める」ことが目的化してしまい、肝心の「使って」事業貢献までつながっているところが、まだまだ少ないのが実態です。

聞き手

なぜデータサイエンスが言われているほど事業成果につながっていないのですか。

つるぞう

その理由は、データサイエンスによるビッグデータ活用のためには、活用の目的やビジネスモデルの明確化、データサイエンティスト育成または外注、高速・大量データ処理のための情報システムへの多額の投資、等のいくつかのハードルにあります。10年後20年後を見据えたときには確かにこの分野にかかる期待が大きいことは理解できます。

聞き手

ジェダイトさんの「データエンジニアリング」もそのような技術の一種なのでしょうか。

つるぞう

そうではありません。事業の損益に重要な1~数年先を見据えた場合、ほとんどの組織や企業が活用しているデータは、いわゆるビッグデータ(*1)でありません。半導体工場などのの量産プロセスから日々出力される大量のデータも、従来の統計解析で処理できるような「ふつうのデータ」なのです。もちろん、エンジニアが研究開発や実験のために採取するデータの量に関しては、言うに及びません。

聞き手

「データエンジニアリング」では扱うデータもやり方も違うのですね。

つるぞう

その通りです。当社は、この日常扱う大量のデータを、事業貢献のために迅速に利活用するための「データエンジニアリング」を推し進めています。これらに用いる手法は、従来から活用されている統計解析や信頼性工学はもちろん、実験データを飛躍的に効率的に採取し、製品やプロセスを迅速で改善・最適化するための品質工学を含みます。特に品質工学は日々進歩しており、また一般には難解と考えられているため、活用すべきである製造業での普及は遅々としています。

聞き手

逆に言えば、データエンジニアリングを駆使できれば他社や諸外国と差別化が図れるとうことですね。

つるぞう

そういうことです。データエンジニアリングのさまざまな手法を駆使して、活用できるデータを増やしていくことで、製品の価値向上(性能・品質)、生産性向上、ロス低減などの事業貢献を地に足をつけて加速し、差別化することができます。

聞き手

統計解析や品質工学を活用するコンサルティングは従来もあったかと思いますが。

つるぞう

当社は「超実践品質工学」などの独自の方法論によって、分かりやすく、成果につながる「データエンジニアリング」で製造業をお手伝いします。詳しくは、「ジェダイトが選ばれる5つの強み」をご覧ください。

聞き手

それによって、業績向上・顧客満足、ひいては世界競争力強化、日本産業の復興につなげていくということなんですね。

つるぞう

それが、当社の使命と考えています。

聞き手

ありがとうございました。


*1)「3V」と言われる、「Velocity:高速に更新され」、「Variety:広範囲・非定形なデータ」であり、結果として「Volume:大量」となるデータのこと。

本ウェブサイトのモデル写真はイメージです。


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Amazon1位獲得の品質工学の本 「これでわかった!超実践品質工学」

2024/04/05

通算3000テーマ以上指導し、累計120億円以上の活動成果

 株式会社ジェダイトでは、「わかりやすく、成果がでる」をモットーとして、国内製造業様の開発・設計の生産性と価値向上、人財育成を支援します。

 Amazonの経営工学カテゴリで1位となった「これでわかった!超実践品質工学」(増刷継続中)の著者で技術士の、つるぞうこと鶴田明三が直接指導。

 前職の大手電機メーカから現職まで約30年間培った経験とオリジナルのノウハウ・メソッドで、数々の品質改善、生産性向上、約1000名の設計品質リーダ育成の実績を挙げてまいりました。

 本職だけでも通算3000テーマ以上指導し、累計120億円以上の活動成果を上げております(※顧客様試算数値集計)。

 コンサルティング顧問契約、設計品質リーダ育成、社内研修、オンラインセミナー(ウェビナー)・講演、解析ソフトウェアのご紹介・販売まで、多岐にサポートいたします。

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2024/04/04

「質問もごまかすことなく明確に答えてくれた」などお客様の声をご紹介!

  セミナー・研修にご参加いただいたお客さまからの声をご紹介いたします。

いずれも受講後アンケートから得た、生の声です。ありがとうございます。


非のない良いセミナーだった。東京にも来てほしい。大阪のみではもったいないです。
※全国対応いたします。

タグチメソッド、信頼性、統計、機械学習。何を聞いても的確に答えてもらえて、とても心強かったです。

☑本で読む100倍以上理解できました!

☑とにかくセミナー内容が濃い!初めて知ることも多くためになりました。

品質工学の社内導入に当たっての前段階での本質的な説明部が丁寧で大変理解しやすかったです。

10年以上の疑問が一気に解けました。先生の講座を受けないと、何年も遠回りすることになります。

☑他の市販テキストには記載されていないことも含まれており分かりやすかったです。まず鶴田先生の本を読むべき

☑こちらのつたない課題説明に対しても丁寧に紐解いて、自分の理解以上に整理いただけました。

☑以前他社でボールを飛ばす研修を受けたときには、手順しか理解できなかったが、この講座で真の意味がわかった

☑交互作用にについて実験前、実験後の対応策を整理して説明してもらえた。このような相談相手が社内にほしい

これまでは抜けだらけということが認識できて怖くなった。DRの前準備が大事ということがわかった。


☑社内でもすでに活動しているが、基本的な部分の抜けや勘違いがあったと感じた。

☑具体的な講師の事例がよかったし、質問もごまかすことなく明確に答えてくれた

☑質疑応答にたくさんの時間を割いたので、色々な視点・気づきがあり大変よかった。

☑何でも答えてくれるので、実は社外講師を鶴田先生おひとりに集約しました

☑率直な感想は「もうちょっと講義を受けたかった・・・!」でした。分かりやすく、面白く、あっという間でした。


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