品質工学で扱う「品質」とは④ (つづき)
さいごに,グラフの一番下に示した,③の曲線です.お客様はカタログに記載されたとおりの「性能」を期待していますので,新品の段階や,あるいは使用しているうちに性能が低下してきたり,故障して性能や機能が維持できなくなったりすると,クレームになります.通常私たちが製品を使う際は,期待した期間(たとえば家電製品なら7~15年くらい)は新品の時に備わっていた性能は維持してほしいと考えます.蛍光灯やランプであれば明るさは変わらないでほしいし(実際は暗くなります),パソコンの処理速度は変わらないでほしい(実際はメモリへのアクセスなどが遅くなります)と考えます.また劣化の問題だけでなく,使い方の違いによって性能が変化してほしくないとも考えます.たとえば,自動車のブレーキは晴れの日の乾いた路面でも,雨の日の濡れた路面でも同じように効いてほしいのです(実際は異なります).このように,「新品と同じ性能を維持する」,「どのような条件でも同じ性能を発揮する」というのは,言われてみればそのとおりで,「あたりまえ」と感じます.
このような品質のことを「あたりまえ品質」といいます(そのままですが,わかりやすいネーミングですね!).変化しない,故障しないで機能するのがあたりまえなのですから,充足度が上がっても(グラフの右側にいくほど故障が少ない),満足度が「あたりまえ」以上になることはありません.逆にそれが達成できなかったとき(グラフの左側)に満足度は大きくマイナスに振れます.その意味では,マイナスしかない品質です.このような種類の品質は,魅力的品質とは逆で,誰もが欲しくないと考えている品質です(お客様によって感じ方の程度は異なります).不具合や変化・変動はゼロが望ましいので,マーケティングや企画は関係なく,純粋に技術的な問題として取り扱います.「信頼性」や「耐久性」や「安定性」に関係する品質です.設計・開発段階での検討がまずいと,このような「あたりまえ品質」が十分でない悪い製品が出荷されてしまい,お客様に迷惑をかけることになります.
図表1.1.3 狩野モデル
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