開発の後期になるほど高くつく対策コスト
製品が出荷された後の使用段階での不具合やクレームの主要因は,設計・開発段階にあることはこれまで述べてきました.設計・開発段階での検討もれや考え方の修正はどの段階で行えばよいのでしょうか.図表1.2.1は,設計・開発段階での対策コストを1とした場合の,それ以降での修正コストの比率および金額を示しています.縦軸が対数(1目盛り10倍)になっていることに注意してください.
設計・開発段階で不具合が発覚した場合の対策コストを1とすると,生産開始前でその10倍,製品出荷前で500倍,市場出荷後では実に10,000倍もの修正コストがかかることが示されています.製品の規模にもよりますが,この例では設計・開発段階に間違いと気づいた場合の修正コストは$30なっており,図面の訂正にかかる時間の人件費相当と計算されています.これが市場出荷後の不具合発覚となると,発生コストは$1,000,000すなわち1億円レベルと試算されているのです.つまり,設計・開発段階での見落としや間違いが市場出荷後まで見つからず,お客様の使用段階で発生してしまった場合,多くの場合製品全数への対応(交換,修理,保証など)になるため,膨大な対策費用が必要となるのです.人命が係わるような製品や,社会システムなどでは,社会に与える損失の大きさを考えると,さらに対策コストが大きくなることは明白です.
この分析からもわかるように,不具合の発覚が後になるほど対策コストは文字通り指数関数的に大きくなっていきますので,品質への対応はできるだけ早い段階,できれば設計・開発の初期段階で行っておきたいわけです.技術者は優秀に問題を解きますので,見落としや間違いがわかりさえすれば,すぐにその対策を考えて,設計変更する,方式を変えるなどの対策を打てます.ですので,大事なことはいかに設計・開発の初期段階で,品質を「見える化」するかではないしょうか.そこで以降,「品質を見える化」するとはどういうことなのかを考えていきましょう.
図表1.2.1 製品開発の各ステップにおける不具合発生時のコスト
出典;H.Hamada(1991):Euro Pace Quality Forum.
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