技術者は「与えられた問題を解く人」でよいのか
日本企業の技術者教育を振り返ると、ある特徴がある。
学校でも企業でも、技術者は長いあいだ「与えられた問題を正しく解く能力」を鍛えられてきた。
要求仕様が提示されれば、それを満たす設計を考える。目標性能が与えられれば、それを達成する。故障が起きれば原因を分析する。コスト目標が設定されれば、部品や構造を見直す。
これらはもちろん重要な能力である。
しかしスマイルカーブの上流で必要になる能力は、少し違う。
そこでは、問題そのものが与えられていない。
「次に何を開発すべきか」という問いに、正解を示してくれる人はいない。「この技術に投資すべきか」「この市場に入るべきか」「この顧客課題は、本当に事業になるのか」という問いにも、解答集は存在しない。
必要になるのは、答えを出す能力よりも、まず「問う能力」である。
顧客は何に困っているのか。その困りごとはどれほど大きいのか。現在はどのような方法で対応しているのか。そこにまだ満たされていない要求はないか。技術が変われば、新しい価値を提供できないか。
そして、見つけた問いに対して仮説を立てる。
「この問題なら、われわれの技術で解決できるのではないか」。
ここから初めて研究開発が始まる。
この順序は重要である。
技術を持っているから用途を探すのではなく、価値のある問題を見つけ、その解決のために技術を使うのである。
もちろん、技術シーズから革新的な製品が生まれる場合もある。ただしその場合であっても、最終的に事業になるかどうかを決めるのは、その技術がどのような顧客価値に変換されるかである。
「品質を守る人」から「価値を設計する人」へ
そこで必要になるのが、私が「設計品質リーダー(Design Quality
Leader:DQL)」と呼んでいる人材である。
DQLという名前から、品質保証部門のリーダーや、設計審査の専門家を想像する人もいるかもしれない。
しかし、ここでいうDQLの役割はもっと広い。
DQLは、完成した設計をチェックする人ではない。
開発の初期段階から、「何をつくるべきか」「誰のどの問題を解決するのか」「どの技術に投資するのか」「どのリスクなら取る価値があるのか」を考え、研究、企画、設計、評価、事業化をつないでいく人である。
つまり、品質という言葉を「不良を出さないこと」と狭く捉えるのではなく、顧客にとって価値のある製品を、事業として成立する形で実現することまで広げて考える。
ここにDQLの本質がある。
そのためには技術だけでは足りない。
顧客を理解しなければならない。市場を見なければならない。競合を知らなければならない。原価も価格も考えなければならない。研究テーマにどこまで投資するのかを判断しなければならない。
しかも、一人ですべてを担当するという意味ではない。
営業、マーケティング、研究、設計、生産、品質、サービスなど、それぞれの専門家が持つ知識をつなぎ、製品として一つの方向へまとめる。その中心に立てる技術者が必要なのである。
この能力は、従来型の専門技術者の育成だけでは、なかなか身につかない。
※御社のプロダクト(製品・サービス)分野で同様の話が聞きたい!という場合は、どうぞご相談ください。
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