2025/01/18

田口の「部門評価制度」を読み解く(6)

「つけかえ制」において、部門が赤字になった場合の評価・処遇について考えてみよう。以下は本書の記載内容からの論考である。

このような話は制度設計の段階でどのように定めるかによって大きく異なるだろうし、企業の文化や経営方針よって柔軟に対応すべきだとう。 下記、候補となるいくつかの可能性について検討してみよう。

可能性1:赤字はそのまま評価に反映される
つけかえによって生じた赤字を、その部門の業績評価にそのまま反映させる方法。 これは、責任と結果を明確に結びつけるという「つけかえ制」の原則に忠実な方法である。 しかし、部門の士気を著しく低下させる可能性があり、リスク回避的な行動を促進するかもしれない。 また、予期せぬ事態による赤字の場合、部門の努力とは関係なく不当な評価を受ける可能性も否定できない。

可能性2:赤字の一部を会社が負担する
会社が一定割合の赤字を負担することで、部門の負担を軽減し、士気を維持することができきよう。 これは、特に予期せぬ事態や、部門の努力では避けられない赤字の場合に有効である。 しかし、会社側の負担が大きくなりすぎると、制度の効果が弱まる可能性があり、負担割合の設定には、慎重な検討が必要となる。

可能性3:赤字の原因究明と改善計画に基づいた評価
赤字になった場合、その原因を徹底的に究明し、改善計画を策定することを重視する評価方法。 赤字自体よりも、原因究明と改善への取り組み姿勢を評価の重点に置くことで、部門の学習と成長を促すことができる。 この方法では、赤字が必ずしも悪い評価に繋がるわけではなく、改善努力が評価されるため、部門のモチベーション維持に繋がる可能性が高い。 ただし、そのための客観的な評価基準を設けることが重要である。

可能性4:目標達成度合いや他の指標との総合評価
赤字になった部門であっても、他の指標(例えば、顧客満足度、業務効率、新規事業への貢献など)で高い評価を得ている場合は、赤字の影響を軽減する、あるいは相殺するような評価を行うことができる。 これは、部門の活動を多角的に評価し、バランスの取れた評価を行うことを目指す方法である。 ただし、他の指標とのバランスをどのように取るのか、明確な基準を設定する必要がある。

「つけかえ制」の本来の目的に照らせば、それは問題の見える化と組織的な改善、成長、それによる企業の収益最大化であるので、上記の可能性3と4を合わせて検討することが最良と思われる(鶴田私見)。

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