2025/01/17

田口の「部門評価制度」を読み解く(5)

 「つけかえ制」について例を挙げて考えてみよう。

例えば、製造部門のミスで不良品が発生し、その不良品を廃棄処分する費用が発生した場合、その費用は製造部門の業績から差し引かれる。これは、製造部門が不良品を作ったという「責任」を、費用という「結果」として明確に反映させるということだ。 単に「製造部門が悪いから費用を負担しろ」というのではなく、定量的に測定可能な指標を用いて、責任と結果を結びつける点がポイントである。

さらに、製造部門が新しい省コストの素材を採用した場合、製品の品質に問題が生じ、顧客からの返品が増加するケースを考えよう。この場合、返品にかかるコストやブランドイメージの低下による損失を数値化し、製造部門に「つけかえる」仕組みとする。この例は、短期的なコスト削減が長期的な損失につながる可能性を示唆しており、「つけかえ制」が、各部門に長期的な視点での意思決定を促す効果を持つことを示している。

重要なのは、「誰が悪いのか」という非難の対象を見つけることではなく、
「何が問題で、どうすれば改善できるのか」という問題解決に焦点を当てる
点である。 「つけかえ制」は、問題を発生させた部門に責任を負わせることで、問題解決への意識を高め、再発防止策を積極的に講じるよう促すことを目的としている。

費用への「つけかえ」は、そのための手段の一つに過ぎない。 重要なのは、透明性のある評価基準と、客観的なデータに基づいた損失の算出である。 どの部門が、どの程度の責任を負うべきなのかが、明確に示される必要がある。

結局、「つけかえ制」は、単に費用を負担させる仕組みというよりも、各部門の行動と結果を明確に結びつけ、責任感と改善意識を高めるための管理手法と理解するのが適切である。 最終的な目的は、企業全体の利益最大化である。 各部門が自らの行動に責任を持ち、改善努力を行うことで、企業全体の効率性と生産性が向上すると期待されている。

(つづく)

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