2026/08/23

【新規連載】100年時代を生き抜く「アンラーン」:DQLコースで未来を再定義⑥

 第6回:実践者のためのDQLコース――株式会社ジェダイトが提供する、成果と人材変容の場

これまで本連載では、アンラーンの必要性、成功体験から生まれる「思考のクセ」、変化を妨げる七つの壁、そして自らの思考を再定義することの重要性について述べてきた。

最終回では、株式会社ジェダイトが提供する「設計品質リーダー(DQL)育成コース」の具体的な内容を紹介する。

DQLコースは、アンラーンそのものを座学で教える研修ではない。また、品質工学や統計手法などの技法を習得することだけを目的とした講座でもない。

受講者が自社の実務テーマに取り組み、経営に貢献する成果を生み出す過程で、従来の仕事の進め方や判断基準を問い直す。そこで必要な知識を学び直し、周囲を巻き込みながら成果へつなげる。つまり、実際の仕事を通じてアンラーンとリラーニングを経験する、実践型の人材育成プログラムである。

DQLとは、経営に貢献するテーマを自らつくれるリーダー

設計・開発部門の人材育成というと、品質工学、統計解析、シミュレーション、AIなど、個別の手法を学ぶ研修が中心になりやすい。

しかし、どれほど高度な手法を身につけても、取り組むテーマそのものが経営課題と結びついていなければ、大きな成果にはつながらない。目的や目標が曖昧なまま、「使ってみたい手法」を起点に活動を始めると、手法の適用自体が目的化してしまう。

その結果、「品質が少し良くなった」「データを解析できた」という技術的な改善は得られても、それが売上、利益、開発期間、市場機会、将来の競争力にどれほど貢献したのかを説明できないことがある。

DQLコースでは、この「手法ありき」の発想を転換する。

最初に考えるのは、どの手法を使うかではない。自社の現状を分析し、経営や事業にとって解決すべき重要課題は何かを明らかにする。そのうえで、目的、目標、期限、期待される成果金額を設定し、必要な手法を選択する。

品質工学や統計手法、シミュレーション、AIなどは、テーマを実現するための有力な手段である。しかし、DQLコースの中心は、特定の手法を習得することではない。

経営的に重要なテーマを自ら設定し、計画を立て、必要な人を巻き込み、成果を定量的に示せるリーダーを育成することが、このコースの目的である。

コース開始前:候補者の選定と組織内の共通認識づくり

DQLコースでは、各部門から選ばれたリーダー候補者が受講する。活動期間は、基本となる1年間と、その後のフォローアップ期間を合わせた2年間で構成される。

また、候補者だけに活動を任せるのではなく、必要に応じて全社講演会や管理職向けセミナーも実施する。

これは、受講者だけが新しい考え方を学んでも、上司や関係部門が活動の目的を理解していなければ、実務での挑戦が進みにくいからである。テーマの実行には、時間、予算、部門間の協力、意思決定などが必要になる。上司や経営層が活動の意味を理解し、組織として支援する環境を整えることが欠かせない。

アンラーンを個人だけの努力にしないためには、本人を取り巻く組織の認識も同時に変える必要がある。

第1フェーズ:重要テーマを抽出し、成果への道筋を設計する

1年目の前半6か月は、実践すべきテーマの抽出と計画策定に充てられる。この期間が、DQLコースの成否を左右する重要な段階である。

まず、開講式や講演、設計品質に関する手法、テーマ設定、効果試算などについて学ぶ。同時に、受講者は自部門の現状分析を行い、問題を定義し、根本原因を検討する。

そのうえで、次のような視点から、本当に取り組むべきテーマを絞り込んでいく。

自社や部門が直面している重要な経営課題は何か

顧客や市場にとって、どのような価値を生み出すのか

何を、いつまでに、どの水準まで改善するのか

売上、利益、損失回避、開発期間などに、どの程度の効果があるのか

テーマを実行するために、誰の協力が必要か

成果を確認するために、どのような指標を使うのか

テーマの例としては、新製品開発による売上・利益の拡大、製品開発の遅れによる市場機会損失の低減、開発期間の短縮、出戻り防止による価値創造リソースの確保、新市場の開拓などが挙げられる。

講師との対話や調査・議論を重ねながら、受講者はテーマ提案書を作成する。前半の最終段階では、経営幹部に対してテーマ提案報告を行い、テーマの内容と効果試算について確認を受け、実施承認を得る。

ここで受講者がアンラーンするのは、「目の前の技術問題を解けば、それが成果になる」「得意な手法を使えば、よいテーマになる」という従来の発想である。

技術課題を、経営課題や顧客価値との関係から捉え直す。それによって、受講者の視点は、個別問題を処理する技術者から、成果への道筋を設計するリーダーへと広がっていく。

第2フェーズ:実務テーマを実行し、成果を定量化する

1年目の後半6か月は、前半で承認されたテーマを実行する期間である。

受講者は、テーマの内容に応じて社内外の関係者を巻き込み、計画した活動を進める。講師は定期的なコンサルティングを行い、進捗、問題点、目標達成の見通し、効果試算などを確認する。必要に応じて、品質工学、統計手法その他の実務に必要な追加セミナーも実施する。

DQLコースでは、知識を学んでから実務に戻るのではない。実務を進める中で必要となった知識を学び、その場でテーマへ適用する。

そのため、受講者は「知っている」と「使える」の違いに直面する。教科書どおりに進まない問題、部門間の意見の違い、計画時には見えていなかった制約などに向き合いながら、自分の考え方や計画を修正していく。

この過程で解きほぐされるのは、「専門家である自分が正解を持っていなければならない」「一度決めた計画は変えてはいけない」「自分の部門だけで完結させたい」といった思考の固定化である。

実務では、最初から完全な答えを持つことはできない。仮説を立て、実行し、結果を確認し、必要に応じて計画を修正する。DQLコースは、このPDCAを実際のテーマの中で回すことによって、変化に対応できる思考と行動を身につける場となる。

1年目の最終段階では、経営幹部も参加する成果報告会を実施する。各テーマの進捗や技術的成果だけでなく、成果を金額で定量化し、投入費用との関係も含めて報告する。

「なんとなく良くなった」で終わらせず、活動が事業にどのような価値をもたらしたのかを経営層と共有する。この経験を通じて、受講者は技術成果を経営の言葉で説明する力を身につける。

第3フェーズ:フォローアップによって成果を定着・拡大する

DQLコースは、1年目の成果報告会で終了するわけではない。

経営効果の大きなテーマは、計画から成果の実現までに2年以上を要することも多い。そのため、2年目以降は、実践活動のフォローアップを行う。既存テーマを継続するだけでなく、実践中に生まれた新しい課題や、次に取り組むべきテーマについても相談・指導を行う。

このフォローアップには、研修を「一過性のイベント」にしないという意味がある。

一般的な研修では、受講直後には意欲が高まっても、日常業務へ戻ると従来の仕事の進め方に引き戻されやすい。DQLコースでは、実務テーマの進捗を継続的に確認し、問題が生じたときに相談できる関係を保つことで、学びを実際の成果へつなげる。

さらに、2年ごとなどのサイクルで新しい受講者を迎えることにより、先に修了したDQLが後輩の活動を支援する側へ回る。自分が学んだことを次のリーダーへ伝え、他のテーマにも応用することで、個人の経験が組織の知識へと変わっていく。

こうして、テーマ設定、実行、成果確認、フォローアップ、次世代育成という循環が形成される。

DQLコースが目指すのは、優秀な個人を一人育てることだけではない。継続的にリーダーを生み出し、改善と価値創造が自律的に繰り返される組織風土をつくることである。



受講者が得るのは、手法だけではない

DQLコースを通じて、受講者が得るものは、設計品質やデータ解析に関する知識だけではない。

経営効果の大きいテーマを設定する力、成果を金額で試算する力、経営層へ提案するプレゼンテーション力、関係者を巻き込むリーダーシップなどを、実際の活動を通じて身につける。

テーマを提案し、経営幹部の承認を受け、多くの関係者とともに成果を生み出す経験は、本人の自信につながる。その姿を見た周囲からの信頼が高まり、さらに大きなテーマを任されるという成長の循環も生まれる。

DQLは、品質手法に詳しい専門家にとどまらない。経営と技術をつなぎ、自ら価値創造の仕事をつくり、周囲を巻き込みながら実現できる人材である。将来のプロダクトマネージャーや組織責任者の候補としても、重要な役割を担うことになる。

実績が示す「仕事を通じた人材育成」の効果

株式会社ジェダイトの案内資料に記載された2023年度時点の集計では、同社設立後の7年間で、5社13期、100名以上のリーダー育成に関わっている。

受講者が取り組んだテーマの単年度効果試算は、1テーマ当たり平均約1億円、中央値約5,000万円であり、合計では120億円以上とされている。これらは実践企業自身が算出し、経営幹部が確認した数値を集計したものである。

もちろん、すべてのテーマが同じ規模の成果を生むわけではない。また、DQLコースは、短期間で特定の手法を覚えれば自動的に成果が出るというプログラムでもない。

成果の源泉となるのは、受講者自身が重要なテーマを選び、組織の協力を得ながら、計画と実行を粘り強く繰り返すことである。コースは、その活動を正しい方向へ導き、途中で止まらないように支援する仕組みである。

アンラーンを、実際の成果へ変える

DQLコースにおけるアンラーンは、過去の考え方を反省するだけの内省活動ではない。

「手法を学べば成果が出る」という考え方から、「経営的に重要な目的に応じて手法を選ぶ」という考え方へ変わる。

「技術的に改善できれば十分」という考え方から、「生み出した価値を定量化し、経営に説明する」という考え方へ変わる。

「自分の専門の中で解決する」という考え方から、「関係者を巻き込み、組織として実現する」という考え方へ変わる。

「研修が終われば学習も終わる」という考え方から、「実務、フォローアップ、後進育成を通じて学び続ける」という考え方へ変わる。

この変化は、講義を聞くだけでは生まれない。自社の重要テーマに向き合い、計画し、提案し、実行し、成果を報告する一連の経験を通じて初めて、自分の思考と行動が更新される。

DQLコースは、単なる「知的ドック」ではない。思考を点検するだけでなく、実際のテーマにおいて新しい行動を試し、経営成果を生み出し、その経験を組織へ定着させるところまでを支援する、実践型の人材育成・事業成果創出プログラムである。

株式会社ジェダイトが目指すのは、受講者の過去の成功体験を否定することではない。その経験を、現在の経営課題と結びつけ、次の時代にも価値を生み出せる力へと変換することである。

人を育てることと、事業成果を生み出すことを分けない。実際の仕事を通じてリーダーを育て、そのリーダーが次の成果と次の人材を生み出す。

その循環を組織の中につくることこそが、DQLコースの最終的な目的なのである。


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