たとえば鉄鋼メーカとして、材料の開発をする立場ではどのような機能やノイズ因子を考えればよいのだろうか。
製品は鉄鋼のカタマリであり、そのあとユーザは形状を変えるための加工(塑性変形を含む)をしたり、防食などのさまざまな特性を付加するために処理を行う。すなわち、製品を出荷したあと、鉄鋼メーカとしては不明なさまざまなプロセスをへて最終製品(ピアノ線やバネや金型など)になる。
極論を言えば、鉄鋼(材料)メーカがユーザのあらゆる使用条件を考える必要はない。ユーザの要求(鉄鋼のさまざなな要求特性)にあった材料を安定して作れればよいのである。
その場合の評価特性は、ユーザの要求に関係するもの、例えば構造材料であれば強度やヤング率に関する特性(荷重-変位特性など、もちろん用途によって変わる)になる。
ノイズ因子の中心はプロセスのばらつきであり、それは鉄鋼材料製造プロセスにおける熱処理などの履歴の安定性である。プロセスの特性値の中心値の設計は、どのような特性の鉄鋼を作るかの機能設計、チューニング問題であり、ロバスト設計の対象でない。
その意味では制御因子は、たとえば熱処理工程では冷却速度などを安定化させるための設計因子が中心となる。鉄鋼材料の組成(の中心値)は特性を決めるための機能設計、チューニングの因子であろう。組成のばらつきもノイズ因子と考えられなくもないが、組成がばらついても特性が一定となる技術が考えづらい場合は、組成の管理はQC的なものにならざるをえないだろう。
もう1つノイズ因子として重要なのは、大物の製品における処理の位置間ばらつきである。これはテストピースの形状を工夫して、位置間で処理の履歴が変わりやすようなものを考えるところが技術力である。あわせて、カタマリの内部の状態を計測する技術も必要である(実験なら破壊検査でもOK)。
材料メーカの場合、製品がその後客先でどのように加工、処理されるかは不明(ユーザの自由)であるので、材料の要求スペックを客先といかにすり合わせるかが重要である。
株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)
2 件のコメント:
統計的データ解析結果に基づく評価が主流だった時代から,n=1で評価してきた分野ですね.
平均値評価と,経験的安全係数の組み合わせ.この安全係数は使用者責任.
Runner_Totchanさん
いつもありがとうございます。
安全係数の求め方が経験に偏っている部分が多いのは課題と考えています。
損失関数の社内的理解がむずかしく、許容差設計的な考え方の普及の妨げになっていると考えています。
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