2022/12/25

超実践品質工学の必要性①

 超実践品質工学の必要性①

  製造業の技術開発・製品設計・開発(以下,「設計・開発 」)の現場とはどのようなものでしょうか.実際,これらの現場の技術者は非常に多忙です.設計・開発のメインの業務以外にも,情報収集から企画,開発の管理,試作の手配,業者とのやりとり,部品や製品評価,不具合が起こった場合の対応,ドキュメンテーション,デザインレビューの対応,担当部分とのインターフェースとの調整,定例会議での報告(書いているだけで疲れてきた!)…等々,すべてを一人でやらなければならない場合も多いのが実情です.その中で,競合に打ち勝ち,成果を出さなければならないのです.

 その一方で,設計・開発における評価の効率化や,それによる製品品質の確保・向上,コストダウン等に品質工学(タグチメソッド)とよばれる,技術の評価・設計の方法論が紹介され,また期待されてきました.2000人規模の学会員を擁する品質工学会で数多くの事例が発表され,製造業で一定の成果が上がっているようにも見えます.いくつか品質工学の本やネットの記事を読んでみればわかることですが,品質工学は多くの点で理想論を提示しています .また想定する技術者のレベルも非常に高く想定しています .つまり正統な品質工学では,たとえば以下のことを要求しているのです(初心者の方へ:この箇条書きは,難しければ飛ばしても大丈夫ですよ!).

・すべての品質特性(燃費や騒音や発熱や寿命のような各種スペック)を一挙に改善できるような,本質的な“技術的な機能(働き)”を考える(生み出す)こと.【基本機能】
・そのような機能を改善する(すなわちすべての品質特性が良くなる)ような,設計をすること.そのためには,革新的な新しいシステム(技術的な手段)を考える(生み出す)こと.【システム創造・システム選択】
・そのようなシステムには,設計パラメータ【制御因子】間に悪い副作用【交互作用】ができるだけ少なくなるように,すなわち効果が期待した通りに再現するような設計をすること(【再現性】).その検査を直交表によって行うこと.【パラメータ設計】
・その検査の結果,交互作用が大きい,再現性が悪いとなった場合は,それは信用ができない技術なので,設計を見直すこと.
・しかもこれらのことを,製品設計が始まる前の,技術開発の段階で実施しておく(【先行性】)ことで,どんな製品にでも使える【汎用性】のある技術として準備しておくこと.

 確かに,そのような技術開発が現実に行えるのなら最高です.それが究極的に目指すべき方向性であることも理解できます.しかし,・・・(つづく)


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