信頼性試験は万全な方法か~三つの壁~②(つづき)
■信頼性試験における三つの壁
さてこのように,設計で品質が確保できているかどうかのチェックは従来信頼性試験をおこなってきたわけですが,これが最良の方法なのでしょうか.以下に,信頼性試験における課題を三つの視点で示します.
(1) 複雑さの壁(品質に関係)
(2) 数の壁(コストに関係)
(3) 時間の壁(納期に関係)
まず「複雑さの壁」です.信頼性試験というと,一般には使用段階の環境を模擬していると思われがちですが,そうではありません.信頼性試験は,単一の要因に対する試験なのです.たとえば,高温放置試験,ヒートサイクル(温度の上げ下げ)試験,振動試験,…といったように,単一の要因について合格の基準値(例:80℃環境で1000時間放置したあと正常に動作すること)に対する合否を判断します.ところが,実際に製品を使用するときを考えてみてください.たとえば講演でレーザポインタを使っています.室内で使用していても,夏場と冬場では環境温度は異なります.また手のひらからの熱や塩分を含んだ水分などが伝わっています(高温,高湿,腐食性イオン).ボタンを繰り返し押しています(繰り返し応力,摩耗).講演の調子があがってきて,ポインタを振り回しはじめました(加速度,振動).誤って落としてしまうかもしれません(衝撃)(図表1.5.2).
このような一見,室内のマイルドな環境での使用でも,「さまざまな種類のストレス要因が」「同時に」「繰り返し・継続的に」(これらをまとめて「複合的に」といいます)製品に,加わりますので,製品の身になればたまったものではありません.自動車だともっと厳しい環境です.人工衛星の使用環境になると想像もできないですね.
つまり製品の使用段階では,信頼性試験で行っているような単一の要因だけでの環境や使い方というのはあり得ないのです.使用段階という非常に複雑な環境や使用条件が信頼性試験では模擬できていないのです.信頼性試験で合格して,出荷前の検査も合格したはずのピカピカの製品が,期待に反して短い試用期間で故障したり性能が低下したりすることがあります.信頼性試験の条件と使用段階の環境条件や使用条件が異なるわけですから,出荷前には思っても見なかった(でもよく考えればあり得る)ような「複合的な」条件で,不具合が発生するのです.したがって,製品の使用段階での品質を確保するためには,使用段階の条件に合うような複雑な条件で製品の品質の「実力」を調べる必要があることがわかります.
(つづく)
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