2025/01/13

田口の「部門評価制度」を読み解く(1)

品質工学の創始者である田口玄一博士(以下敬称略)により、1966年に日本規格協会から発行された、「部門評価制度」と題する書籍が発刊された。約60年前のことである。本稿では、本書の概要を紹介しながら、現代的な人的資本経営やエンパワーメントの概念とのつながりや、実践方法について論考していく。

本書冒頭部分は、当時の日本の企業における管理者育成の問題点と、その解決策としての部門評価制度の必要性を説いている。

田口は、戦後、多くの企業が米国から導入した管理者訓練が十分な効果を上げていないと指摘する。その理由として、管理者は多様な要因の影響を受け、自己の欠陥を認識し、自己変容を促すことが難しい現状を嘆いている。この問題に対する解決策として、本書で提案されている「部門評価制度」が紹介されている。

「まえがき」より、部門評価制度を提案する背景として、以下の三つの問題が挙げられている。

1. 市場シェア減少の原因究明と責任の明確化: 製品品質、研究開発、営業部門間の連携不足。営業部門に製品の市場価値評価を責任を持たせる必要性。

2. 個人の責任と自由のバランス: すべての従業員を一人前として扱い、仕事の成果に責任を持たせる。他人に迷惑をかけた場合の補償方法を明確にすることで、個人の自由と責任のバランスを保つことを提案。

3. 定量的かつ一元的な評価方法: 各部門の成績を定量的に評価し、事業部制では難しい製造部門と営業部門間の評価方法を提案。クレームと納期を相互に補償する一元的な評価方法を確立する必要性を指摘。

これらの問題解決策として、本書では設計品質と製造品質の分離つけかえ制期待する成績の一元化を提案している。これは、最高指揮者の意図に盲従する組織ではなく、個人が自発的に行動を決定する組織がより強いと考える田口の思想に基づいている。

筆者(鶴田)はこの「個人が自発的に行動を決定する組織」について本職で真剣に考え、価値創出の主役である企画・技術開発・設計部門のメンバーを対象に、設計品質リーダー(DQL)育成を実施してきた。

(つづく)


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