2006/03/03

設計品質のモノとコト

 今年度の品質工学研究発表大会(QES2006)のテーマは「モノ・コトの見極めに改革を」である。Kazz先生の掲示板http://www2.ezbbs.net/12/kazz/でも「モノ・コト」に関するお話は取り上げられている。

 品質工学に限らず、一般の技術開発、設計部門でも「設計品質」という言葉がたびたび話題に上っているだろう。「設計品質を向上しなければならない----」「このようなことが起こったのは設計品質が悪いからだ----」「品質工学で設計品質の革新を行おう----」といった具合である。誰もがさも設計品質という言葉を既成の定義された用語のように、また各人の解釈でこの言葉を使用しているが、職場や研究会のコミュニケーションにおいて、この言葉は共通認識として正しく使われているだろうか。「設計品質を良くするために品質工学を・・・」と言ったときに、各々の考える設計品質の認識は同じであろうか。

 筆者が思うに「設計品質」というときには、言外には2つの意味があるのではないかと思う。1つは製品や技術における設計の品質で、品質工学では機能性と呼ばれているものである。さしづめ「モノの設計品質」と言ってよいだろう。もう1つは人や組織、技術開発のやり方、スタンスに関する「コトの設計品質」があるのではないか。この2つは、近くて遠い課題で、前者は主に評価手法や改善手法などのツール的な部分、後者は人の考え方、組織の体質、哲学の部分の問題である。

 品質工学のこの両方の側面から具体的方法論や考え方を示しているが、現実の現場への浸透を考える場合には、それぞれ推進のやり方や、タイミング、もって行くべき場所(職制)をうまく切り分けてゆかなくてはならない。ツール的な真似事では設計品質への真因への到達や本質の改善ができず、また哲学や理念だけでは納得感のある推進展開にはならないのである。

 これはちょうど、カンバン方式に代表されるトヨタ生産システムの手法だけをまねしてもうまくいかないのと同じである。トヨタの成功の要因には、モノであるシステムと、コトである従業員のカイゼンに対するDNA(習慣といってもよい)が根底にある。品質工学をこのDNA、習慣レベルに根付かせるのは、トヨタシステムと同様、時間のかかる仕事であることは間違いない。トヨタシステムについても品質工学についても言えることは、最終的にはトップマネジメントの気づきと、信念であるということと、モノとコトに関する成果の定義を行う必要があるということである。

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