2007/05/21

T法の本質を考える(2)

 T法の本質を考えるのであれば数理の違いだけでなく、というよりむしろ、その目的の違いに踏み込まなければなるまい。

 前節で述べたように、T法では重回帰分析、マハラノビス距離、主成分分析などのように相関行列(の逆行列)を用いた、偏相関の考え方が入っていない--偏相関が入っていないからダメというのではなく、行列Rが正則でなく、統計的な方法で計算できない場合にT法を用いる--ので、各項目(説明変数)が予測値に対してどのように効いているかは、擬似相関も含めた表面上の解釈としてしか知ることができない。

 予測したい対象がどのようなモデルで説明できるのか、という科学的な目的であれば、確かに上記の多変量解析手法で用いる偏相関を考慮した方法が必要である。しかし、T法の場合--もっと広くMT法の場合--の目的は、予測システムの設計およびその評価である。従って、各説明変数の予測値への振る舞いは、擬似相関も含めた、表面上の振る舞いが単位空間(正常状態)と異なっているかどうかが分かればよいのである。擬似相関が単位空間と信号空間で差があり、それが普遍的なののであれば、その挙動もそのまま使ってしまおうということで、これを田口博士は「パターン」と言っているのであろう。

 従って、多変量解析による予測の手法と、T法とはまず目的を異にしており、その上でには項目が多数であったり、相関係数行列が正則でない場合、項目のσ=0の場合にも「予測システムの設計と評価」に対応できるようにした手法である。よって前節でも述べたが、T法では項目が制約条件が少なく大幅に増やせるため、一概に予測精度が低いとは言えない。最終的には予測のSN比の評価であり、最適予測システム設計のための一手段--しかもかなり制約条件のつかない汎用的な手段--と考えるのが妥当であろう。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

つるぞうさん
しばらく訪れていない間にずいぶん書き込まれましたね。
貴重な意見が多いのですがここを訪れる方はほとんどいないでしょう。
ここで述べられていることは一度品質工学学会誌に投稿されたらよいでしょう。
ぜひお願いします。