2008/07/13

新SN比登場

 技術品質の新しい評価尺度としてエネルギー比型SN比を学会に向けて提案した。多くの聴講者の来場と反響の大きさに驚くとともに、有益なご意見やアドバイスを多数頂き感謝している。その上、大会実行委員長賞まで頂き、品質工学の研究者として大きな励みとなっている。

 賞をいただいた原和彦大会実行委員長より、下記のようなコメントをいただいた。「新SN比の研究に対して文句をつける方が学会幹部に多いのだが、そのような方は何故だめなのかご自分の意見で反論しない。『田口博士がダメだというから駄目だ』では理由にならない。これからたくさんの事例で検証してその良さを認めてもらえる努力をお願いする。これからも進化発展は続くと思うが皆さんの力が必要だ。」

 今回提言した古くて新しいSN比は、ひとことで言えば「SN比の絶対値化」である。技術品質の相対比較に用いられてきた従来のSN比を、ノイズによるデータの変化率という観点で絶対値化することで、損失関数との整合性や、データ数によって変化する影響を改善した。つまり摂氏温度のように差だけに意味があるのでなく、絶対温度のように原点や比にも技術的に意味を持つ絶対尺度となった。また、SN比のもともとの意味である「有効エネルギーと有害エネルギーの比」になったことで、理解が容易になった。

 新しいSN比では計算方法は完全な記述統計となった。技術者導入した評価空間をユニバースとして、そこに現れたデータの平均とノイズによる変化をそのまま認めるのだと理解した。つまり技術者は、評価空間の中では分布を超越したユニバースの創造主である。これは品質工学の主張する、能動的で強い誤差因子の考え方や、評価の効率性追及、技術者の責任論に完全に符合すると気づき、品質工学の思想や戦略の深さに驚いた。

 我々は研究の中で、新しいSN比と損失関数の一致を示したが、それでも技術品質の真値は常に不明であり、その予測が品質工学の命題である。実際の損失を新しいSN比で評価できているのかどうかは、予め正解が存在する数理の問題ではない。SN比も損失関数も現実の品質に対する1つのモデル(仮説)に過ぎない。これに関しては、多くの事例の中でその妥当性を検証していく必要があると思っている。

 新SN比の内容は、その誕生のいきさつなどは、おいおい紹介していきたいと思う。

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