2009/04/06

技術者のあるべき姿に近づきたい人へ「品質工学ってなんやねん」レビュー



 ユダヤの訓えに「勉学は父、笑いは母」という言葉があるが、第1章は気軽にエピソードや笑いを交えながら、そして第2章はまじめに品質工学や技術者の本質にせまったのが、この「品質工学ってなんやねん」だ。関西品質工学研究会編となっているが、実際は第1章を研究会会長の芝野氏(コニカミノルタ)、第2章を同顧問の原先生が執筆されている。

 第1章のエピソード集は社内の品質工学のセミナーや講演のなかのちょっとした話題提供や、品質昼礼などにすぐ使えそうなものばかりだ。品質ではなく機能性を評価・改善する重要性は「豚のフン」の話で笑いがとれるばかりか、機能性の改善の大切さの理解も深めることができるであろう。若い読者で、田口先生のお話を聞いたことがない、という方は、このようなエピソードの一端にふれることで、より品質工学や田口先生を身近に感じることができるに違いない。難しい品質工学を平易なエピソードで説明できる、というのはよほど深い見識なないとできないことである。

 第2章は原先生らしい、厳しくも優しさあふれる品質工学論になっている。全体的に断定的な口調で書かれているが、これは癖のようなもので気にする必要はない。特に「ほんまもんの技術者とは」のところは多くの技術者が一度は読んでおくべき内容であろう(もちろん読んだだけではだめで行動しなければならないのだが)。これを読めば、単に品質工学の枠組みをツールと捉えるのではなく、技術者としてどうあるべきかという考え方として捉えることができることがわかるだろう。また、最後のリコーの細川氏の引用「理想を目指して技術開発を行うのと,妥協を目指して技術開発を行うのでは結果に大きな違いが出てくる」は下名の座右の銘の1つとなっている。

 新書サイズで1700円と、価格を確認せずにレジに持って行ってしまうと、レジの金額表示に一瞬「ギョッ」とする価格設定ではあるが、本の価値は、紙の量でも、筆者がどれだけ価値があると思っているかでもなく、読んだ人次第なのである。体系的にまとまったものでしっかり勉強するのもよいが、同書のような多角的なアプローチで品質工学の全体像にせまろうとする入門書が他にないという点からみても、一度は手にとって見る価値はある。


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