2016/10/06

品質工学シンポジウムinおおさか 終了

 本日10月6日、エルおおさかで「品質工学シンポジウム in おおさか」が盛大に開催され、成功裏に終了いたしました。・・・いや、まだ懇親会は続いていますね。

 いま、伊丹空港で羽田行きの飛行機を待っているところです。明日7日の「標準化と品質管理全国大会」で講演があるため、後ろ髪を引かれながら上記懇親会を30分で抜け出してきたところです(泣)。

 さてそのシンポジウム。今回はそれぞれに面白いテーマがそろい、質疑応答も時間ぎれ続出で大変盛り上がったのではないかと思います。

 もうすぐ搭乗時刻ですので、個々のテーマのコメントは別便にて。。。



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10/8追記
下記の5事例と出版記念講演が発表された。概要と感想を簡単に示しておく。

招待事例
「むき身カキの鮮度保持技術の開発」 高辻 英之     広島県立総合技術研究所

鮮度低下の速いむき身カキの流通範囲拡大を狙い、カキの鮮度評価技術開発と、鮮度保持設計を実施した事例。個別の研究としてはユニークで評価できる。最後に損失関数による改善効果が示されていたが、カキの冷却や遠隔地までの輸送などのエネルギー損失まで計算に入れておけばより「マクロな視点」の研究になったのではないか。

中部品質工学研究会
「MTシステムへの1提案-APRT法の考え方と手順-」 出島 和宏  ブラザー工業
「APRT法のメリットと適用例」 井上 清和  アイテックインターナショナル

コンサルティングファームを経営されている井上社長から、主成分の分布と特徴に活用した新しいMTシステムの一提案が示された。さまざまな事例で優位性が示されており、解析の1つの選択肢になりそうだ。解析の最終ステップでRT法を用いるために、特徴データ(主成分得点Z/固有値λ)を累積しているが、累積はデータを平均化させる作用があり情報損失につながるのではないかと考える。単位空間のZ/λを信号として素直に動特性で評価したらどうなるのか、興味をひいた。

出版記念講演
 「ロバストネスの最適化による開発期間の短縮とコスト低減」 田口 伸    ASI

新刊「タグチメソッドメソッド入門」によせた講演。さまざまな話が展開されたなかで、下名からは「開発期間の短縮達成のための考え方」の「単に要求を測って要求を満たすのではなく、機能を測って機能の効率とロバストネスを最適化する」の部分について質問した(他の聴講者が少し疑問に思ってるのではないかと思う内容を、先回りしてあえて質問させていただいた)。おおかたの開発設計現場では「単に要求を満たす」のが大変だからである。開発設計期間の大半が、機能設計や性能確保に追われ、開発終盤で発現する不具合に悩んでいるのである。リソースが限られたなかでなかなかパラメータ設計という直交表の実験は行いにくい。これに対してどうすればよいかということである。田口伸氏は「理想論だが」と前置きした回答(省略)であったが、そのうえで下名としてはどうすればよいかを考えていきたいのである。

滋賀品質工学研究会
 「エアーブローの機能性評価」 日指英雄  村田製作所

圧電素子デバイスの金属接着部分の剥離不良を撲滅するために、金属接着部の荷重変異特性の変化の計測で評価時間を大幅に減らした事例。王道の機能性評価のテーマである。少し気になったのは、繰り返し荷重で剥離不良がでたので、ノイズも繰り返し荷重としているが、これでは再発防止にしかならない。接着剤の変更をともなっているので、温度や湿度の影響、新しい接着剤からのアウトガスによる回りの部品に対する影響など、変更点に対して留意しておくべき点はいくつかあったように思う。

京都品質工学研究会
 「経営戦略としての品質工学」 芝野 広志  京都府中小企業特別技術指導員 TM実践塾

MTシステムを用いて、業績を予測したり、また業績をロバストにするための設計を検討した研究。研究テーマじたいが壮大で早々に成果がでるものではないため、研究は緒に就いたところである。後半の設計の部分よりも、まずは前半の予測をできるようにすることが先決であろう。本ブログの投稿にも書いたが、予測精度は少なくとも「前期と同じ」と予測した場合よりもよくなければならない。「前期と同じ」と予測した場合でも、業績の真値と予測値の相関はある程度高くなってしまうのである。「前期とくらべてどれだけ業績が変化するか」を予測するのが正解である。

関西品質工学研究会
「SKYACTIV開発への品質工学の適用」  武重 伸秀  マツダ

HV、EV自動車全盛の時代に、内燃機関エンジンのパフォーマンス向上に品質工学などの管理技術を総動員してSKYAVTIVを開発、上市し、業績をV字回復させた。ポイントは、エンジンが有効な仕事をできるように、4つの低減すべき損失から、7つの開発すべき基本技術にばらしたところ、さらにその技術をシミュレーションで検討できるようにしたところである。これにより技術開発がめざすべき方向が明らかになり、個々の技術を品質工学などで高めることで、高効率なエンジンを達成できた。この成功には、エンジン全体の技術を見渡せる優秀なプロジェクトリーダー(担当役員)の存在も見逃せないだろう。品質工学を活用した、大きな開発の成功事例として、さらに情報の開示を望みたい事例である。

株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)


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