2025/07/15

公理的設計の独立公理をさまざまな水栓方式で考察

先日の関西品質工学研究会(合宿)でもでた。公理的設計(Axiomatic Design)のうちの独立公理にかかわる話題である(以下この設計を独立設計と略す)。


独立公理では「ある機能を満たすための【設計変更】が他の機能に影響を与えない設計」としている。※独立設計に関わるのは【設計変更】であって、【信号水準の変更】ではない点に特に注意してほしい。


先日の研究会では、「レバーを縦に動かすと温度が、横に動かすと水量が変わる水栓(シングルレバー式混合水栓)」が独立設計と説明されていた。この設計の場合、【信号】(縦動作と横動作)と要求(温度と水量)はほぼ独立しているが、温度を調整する機構Sub1(カートリッジ内のセラミックディスクの回転により、冷水と温水の比率を変える)と水量を調整する機構Sub2(同じディスクのラジアル方向に並進させることで全体水量を変える)は同一のユニットに組み込まれ、お互いの機能をになう機構部品はディスクの穴部分で共有されており、【設計変更】により個別のサブ機能(温度と水量の調整)が互いに影響を受けやすい。これは独立設計ではない(穴の形状などでできるだけ独立に近づける工夫=すり合わせはされている)。そのほか研究会では「この設計は故障時のメンテナンス性が悪い」という意見もでたが、これは機構とサブ機能がCouplingしており、独立設計ではないからこそなのである。そのほか、1つのレバーで両方の調整が可能なので、子供などが誤って熱湯を出してしまう危険性も高い設計である。


それに対して、冷水用のコックと温水用のコックがついている古いタイプの水栓(ツーハンドル混合水栓)がある。これは機構や機構がもつ機能は独立している。冷水と温水の流量は個別に制御できるため、【設計変更】による機能干渉が起きにくく、サブシステムの機能単位では独立設計ということになる。しかし全体システムでの要求(全体機能)が、温度と水量の個別調整の場合、【信号】と要求は独立ではないので、使い勝手が悪い場合がある。

温度と水量が別々のレバーやダイヤルになっている水栓(サーモスタット混合水栓)は、現在の風呂場等で広く見かける設計である。この場合は、信号と要求は独立で、ダイヤルが離れているので外部からは別々の構造のように見えるが、内部ではハネなどを介して一体構造となっている。その意味でシングルレバー混合水栓と機構は異なるが、独立設計でない点は同じということになる。

独立設計でありかつ、信号と要求の関係も独立なバージョンとしては、独立チャンネル設計と呼ばれる水栓がある(分かりやすい構造図がみつからなかった)。冷水・温水それぞれに専用の流路チャンネルを設けて制御し、流量が変化しても混合比率が自動で補正されるものである。このような設計は一般に高価なので、価格まで含めた要求を考慮にいれると、独立設計だからといって必ずしも最適とは限らない(ユーザに要求レベルによって最適は異なる)。

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