2025/07/13

【ポイント解説】過飽和計画におけるT法と正則化回帰の違い

過飽和計画における回帰分析では、説明変数の数が実験回数(サンプル数)を超えるため、通常の重回帰分析では解が一意に定まらず、多重共線性の問題が生じる。これに対処するために登場するのが、MTシステムのT法(およびMSR)と、正則化回帰(LassoRidge)である。それぞれの違いと優劣を比較してみよう。



1. T法(MTシステム)とは


手法名 T法(Taguchi Method)またはMSR(Multiple Single Regression)
基本原理 各説明変数と目的変数の関係を個別に単回帰で求め、相関を無視して合成
利点 - 項目数がサンプル数を超えていても計算可能
- 多重共線性の影響を受けにくい
- 寄与度の可視化が容易
欠点 - 相関を無視するため、交互作用や冗長性を考慮できない
- 統計的な厳密性に欠ける場合がある

2. 正則化回帰(Lasso・Ridge)とは

手法名 Lasso回帰(L1正則化)、Ridge回帰(L2正則化)
基本原理 回帰係数にペナルティを課すことで、不要な変数の影響を抑制
利点 - 多重共線性に強い
- モデル選択が可能(Lassoは係数をゼロに)
- 統計的に厳密で汎化性能が高い
欠点 - サンプル数が極端に少ない場合は不安定
- ハイパーパラメータ(λ)の調整が必要
- 実装に統計ソフトやスキルが必要

3.  優劣の比較

観点 T法(MT) 正則化回帰
多重共線性への耐性 ◎(相関を無視) ◎(ペナルティで制御)
統計的厳密性 △(経験則ベース) ◎(理論的に確立)
モデル選択 △(寄与度分析) ◎(Lassoで自動選択)
実装の容易さ ◎(Excelでも可能) △(Python/Rなどが必要)
解釈性 ◎(寄与度が明確) ◯(係数で判断)
汎化性能 △(過学習の可能性) ◎(交差検証で制御)

結局、どちらを使うべきか?

  • T法(MTシステム)は、実験回数が極端に少ない場合や、簡易な解析を素早く行いたい場合に有効。計算が簡単なため、Excelシートへの実装は容易。
  • 正則化回帰は、統計的な信頼性や予測精度を重視する場合に適する。特に、Lasso回帰は変数選択を兼ねるため、過飽和計画において非常に有用である。ただし、専用のソフトやプログラミングが必要となる。
  • パラメータ設計の応用で、直交表の代わりに過飽和の計画(カンファレンス行列)を使用する場合、これらの分析手法が有効となる。

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