2010/09/19

QES2010で発表した「総合損失SN比」の狙い

 QES2010「微小信号の機能性が重要な場合の評価方法」で機能性評価データの変化率を重視した評価指標を提案した。このなかの質疑応答で、「変化率を重視したい場合、データの対数をとって従来の計算方法を行う方法も考えられそうだが、いかがか」との質問をいただいた。その点について、今回発表の狙いも含めてお答えしたい。

 変化率を重視して評価する方法はいくつかある。田口玄一博士の「品質工学の数理」p.37の解析方法、河村敏彦先生の「平均2乗対数損失に基づく SN 比」もその例である。今回の発表は提案の評価尺度のユニーク性を主張したいのではなく、

(1)変化率を重視すべき機能――この発表では「機能 B」と称している――の場合でも機械的に従来 SN比を用いている事例が多いことに対する注意喚起と、
(2)どのような場合に使い分けが必要かを明確にしたところに力点がある。

 また今回必ずしも成功はしていないが、
(3)このような新しい評価方法の提案に対してどの方法がよいのかを客観的に判断できる「評価尺度の評価尺度」つまり「メタ評価尺度」の必要性を訴えたことである。

 ただし、あえて今回提案の「総合損失 SN 比」の優位性を述べるとすれば、
①田口博士の損失関数とシームレスにつながっているので品質工学の体系に大幅な変更を必要としない、
②損失関数を元とした尺度であるので経済的な合理性がある、
③SN 比は従来同様対数をとった db 単位で用いるため、評価尺度としての加法性が担保されやすい、
④2 乗和分解や自由度の概念が不要で理解しやすい、
などであると言える。

 学会ではまだ「エネルギー比型SN比」の議論が始まったところであるが、QES2010の発表内容ではそれをもすでに否定(というより、使用できる範囲を制約)している部分もある。一読いただければ幸いである。

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