せっかく理論があってもそれがあまりにも複雑難解でその道何十年の専門家しか理解できないという間は、それは大きな力を持つことが出来ず、それが簡略化されて大学1~2年の普通の学生でも扱えるレベルになったとき、初めて文明社会を動かす力を持つようになったのである。
(長沼伸一郎「物理数学の直感的方法(普及版)」より)
そのために必要なことは「簡略化」「統合化」「直観化」であるとしている。
品質工学の全体最適化の理念、基本機能、SN比、損失関数、再現による確認実験・・・などなど、田口哲学の根底に流れるのは、「技術や現象は複雑」→「個別の統合は全体にならない」→「その科学的把握は困難」→「なのでそれを簡略的に、統合的に、直感的に評価できる技術体系が必要」ということではなかったか。
そこに、冒頭の文章が現実味を帯びてくる。いかに分かるように伝えるかである。
理系の方はこの本は(特に本文よりも「やや長めの後記」だけでも)ぜったい読むべき1冊である。
実用的にも、rot(ローテーション)の直感的把握を理解するだけでも、目からウロコである。
こういう「頭のいい」文章に出会えると非常に、すっきりした気分になれる。
資格の専門的な勉強ばかりしていては視野が狭くなってイカン、と思い手にとった1冊が、意外にも資格の勉強の視野を広めることに役立った。これがセレンディピティというものか。
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