昨日の関西品質工学研究会で、H社のSさんより「アブダクション思考」の紹介があった。概要を、かん吉さんの「わかった!ブログ」から部分的に引用する。
(引用ここから)
アブダクションとは?
「驚くべき事実Cが観察された。しかし、もし説明仮説Hが真であれば、Cは当然の事柄であろう。よって説明仮説Hが真であると考えるべき理由がある。」
via: これからの思考の教科書
1912年にドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナーは『大陸移動説』を発表しました。彼は大学の図書館で世界地図を眺めていて思ったのです。
「アフリカ西岸と、南アメリカ東岸の形はあまりにそっくりだ。昔はいったいだったに違いない。大陸は移動するのだ!」「そう考えれば他の多くの謎も説明が付く!」。
via: われが神だ~仮説的推論(アブダクション)によるジャンプ
同世代の同じ化石が、世界中に点在しているという理由も、昔は世界はひとつの大陸だったという仮説で一発で解決するそうです。ものすごいパワフルな仮説ですよね。
おそらくこれまでの新発見のほとんどが、アブダクションから生まれているはずです。論理的思考からは、大胆な仮説は生まれません。
(引用おわり)
研究会のSさんいわく、品質工学の機能の実現もアブダクション思考といえるのではないかということであった。つまり、「機能が理想的である(ありたい)」という事実に対して、「機能を設計するためのシステム・制御因子に関する工学的な知識」が前提としてあって、「考えたシステム・制御因子によって、機能が理想に近づく」という仮定を推論する。このプロセスがアブダクションである。
したがって品質工学のパラメータ設計に入ってる利得の推定や、再現性の確認は、アブダクションではなく、帰納、演繹を用いた「科学的な」仮説検証の方法だと理解した(品質工学扱っている対象は「技術的」だが、その仮説検証方法は「科学的」ということ)。
品質工学でアブダクション思考が可能となるのはない。またシステム選択や制御因子の考案は品質工学の範疇でもない。品質工学で可能なのは、アブダクション思考を用いた推論による発明・発見を、科学的検証方法によって「効率的」に検証することによって、評価の効率を高めることである。これによって、新しい時間を作り、その節約できた時間をまたアブダクション思考による発明・発見に活用できるようにすることで、技術開発の合理化に貢献するのである。
なお、アブダクションを行うためにはたくさんの規則・知識を知っており、経験してるほうが有利である。特に大きなブレークスルーを必要としない99%の発明は既存の組み合わせの範囲である。過去の知識をデータベース化して発明・発見を手助けするツールがTRIZ(発明的問題解決理論)である。しかし、ヴェーゲナーや、万有引力のニュートンのような世紀の発明・発見はのこり1%のひらめきや天才的な創造力が必要とされるのであろう。
株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)
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