2018/01/19

2種類の誤りがある場合のデジタルSN比とオッズ比は同一(3)

(前投稿からのつづき)
分離システムの評価指標は、有効成分(または有害成分)について排出口#1と#2で経済的な差があっても変化しないことが望ましい。経済的な差に対する校正は分離システムのSN比とは別の問題だからである。

※寄与率ρを用いて評価する、デジタルのSN比は、システムの品質の問題と、校正の問題が分離されていなかったので、田口氏自ら間違いを指摘し、修正した経緯がある。
「実験計画法第三版」24.2.4節(p.684)
「SN比の計算問題は、式(24.27)で解けたと思ったのが筆者の大きな誤りであった。式(24.27)には、校正問題すなわちソフトウェアの考慮が欠けていたのである(以下略)」

ここで、排出口#1に気泡Bが混ざるのは品質上の損失が大きい(それを防ぐのがこの分離システムだから)が、排出口#2に液体Aが混入する損失は小さいとしよう(収率が少し下がるだけだ)。

排出口#(回収側)において、液体Aが一単位得られる利得をa、気泡Bが一単位混入する損失をbとする(0<a<b、イメージ的にはa<<b)。排出口#2(廃棄側)については、液体Aを失う損失は前記の利得a(の消失)で、気泡Bを回収できる利得は前記の損失b(の救済)で表現されている。

オッズ比による利得/損失比
ηT''=10log[(a*yA1*yB2)/(yA2*b*yB1)]^2
  =10log(a/b)^2+10log[(yA1*yB2)/(yA2*yB1)]^2  (db)

デジタルのSN比による利得/損失比
ηTa=10log[(a*yA1*yB2)/(yA2*b*yB1)]^(1/2)
  =10log(a/b)^(1/2)+10log[(yA1*yB2)/(yA2*yB1)]^(1/2)  (db)

いずれも経済性に関係する第1項の成分だけがSN比に加えられるだけで、a,bの値によってSN比の相対比較には影響をおよぼさない。すなわち、校正(損失を最小にするための許容差設計)とは独立した、システムの品質評価の尺度になっている。

なので、システムを改善する際(パラメータ設計で最適水準を選ぶ際)には、統合されたこれらのSN比をそのまま使用してよいことになる(利得と損失のSN比を比べてトレードオフを取る必要はない)。

これらの式では損失金額を計算するときに、真数部[ ]^n が金額に比例するようにもとの単位系を調整するなど、留意する必要がある。

最後に注記しておくと、先の細川氏の報文でも述べられているように、yB1=0(回収側の気泡を0)を目標とした場合、これは校正の問題ではなく、高度な分離システムの品質改善問題である(報文では「開発活動」と言っている)。校正で可能なのは、一定の分離システムの品質において、上記の利得と損失のバランスを簡単な手段(制御因子)で調整することのみである。

【まとめ】
・オッズ比と2種類の誤りがある場合のデジタルのSN比(=エネルギー比型SN比)は、比例定数を除いて等価である。
・これらのSN比は、原料比の影響を受けない。
・これらのSN比は、校正(経済性を加味した調整)の影響を受けない。

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