2010/11/10

「実験計画法第3版」と対訳「System Of Experimental Design」

 「実験計画法第3版」(以下、DOE-V3)につづき、その対訳である「System Of Experimental Design」(以下SED)を古本で入手した。

 内容は全く同じで、ほとんど意訳を含まず、田口博士のニュアンスを残す意味であろうか、1文節ごとの逐語訳になっている。もちろん、日本語において言葉足らずの(省略されている)ところは英文では文意を崩さないように文法に則った補完がなされている。その点、原文の回りくどい表現も、そのまま回りくどく翻訳されている。

 翻訳者はTQCの大家 Don Clausing博士によるものなので、ネイティブチェックは万全である。品質工学の英語表現を学ぶ好書といえる。

 SEDを読んで(自分の実力で)意味が取れない部分があっても、DOE-V3に対応する日本語の文章に戻って理解することができる。また、DOE-V3に記載されている日本語の側からみて、「こういう時に英語ではどのように表現するのだろうか」という答えを、SEDで辞書的に対応付けて調べることができるので、大変便利である。いわゆる洋書の和訳とかその逆は、意訳や内容の省略を多く含んでおりこのような使い方はできない。例を挙げよう。

DOE-V3(p.615):「式(22.22)の分母のβ^2は、式(22.19)のβ~hatの値を2乗して推定するとよいと思われる。しかしながら、式(22.19)の2乗β~hat^2は、β^2の少し過大な推定になる。」

SED(p.630):"It would seem advisable to estimate β^2 in the denominator of equation (22.22) by squaring the value of β~hat in equation (22.19). However, the squared β~hat of equation (22.19) is a somehow exxcessive estimate of β^2."

「~してよいと思われる(It would seem advisable to~)」、「少し過大な推定(a somehow exxcessive estimate)」など、原文のニュアンスを逃さない、ニクイ逐語訳になっている。もちろん、「分母」を通貨切り下げのデノミと同語源の「denominator」というのか、など役に立つ語や表現を知ることも多い。このセンテンスなどは、暗誦してそのままSN比のディスカッションに使えそうである。

DOE-V3(p.657):「目的特性のとる値が1つしかない場合」
SED(p.674):"the case where the values which desired characteristic takes are only 0 or 1"

これは逆に日本語の「値が1つしかない」ではほぼ意味が不明なところを、英語なら逆にすっきりと意味が理解できる。「値をとる」というときの「とる」はtakeでよいことも分かる(意外とこういう簡単な動詞とか前置詞は迷いますよね~)。

品質工学関係の英語を実際に使われている表現で学びたい、という方にはお勧めである。

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