以前の投稿で、エネルギー機能と制御機能(いずれも下名の造語)の分類について論じた。社外の品質工学セミナーなどでも紹介しているが、機能を考えるときに、考えやすい、議論しやすいと好評だ。
弊社でも製造しているエスカレータを例にとってみよう。
エスカレータの目的である昇降移動を考えると、時間に対して移動量(高さの変化)を定義すると、これは制御機能である。ユーザが積極的に操作する信号はないが、しいて挙げれば時間の経過ということになる。
昇降移動にはもちろんエネルギーを使用しているので、エネルギー機能を考えることができる。必要な移動量(位置エネルギーの変化)に対して消費電力をいくら使ったかである。エネルギー機能の場合は感度(つまり少ないエネルギーで動くこと)が重要である。
ちなみに、電力と発生力のような機能表現はNGである。
力は発生するけども、まったく昇降移動(制御機能)に寄与しない、という場合もありえるからである。
ここで、エスカレータの乗客の人数は何因子になるか考えてみる。
制御機能に対しては、ノイズ因子でよい。人数が変わっても動きは変わってほしくないからである。
しかしエネルギー機能に対しては、人数が変わると昇降による位置エネルギーも大きさも変化するので、信号因子の一部と考えるか、標示因子である。
このように機能を制御機能とエネルギー機能に分けて考えることにより、評価の目的が明確になる。
品質工学には基本機能という考え方もあるが、生産技術以外は定義が明確でないように思う(識者でも意見が分かれる)。基本機能とは「技術手段が利用している物理メカニズム」、という説をとれば、上記の場合、エスカレータを昇降する手段(普通はモータだが、他にも可能性あるだろう)まで議論する必要がある。また、メカニズムもどのレベルまで落とし込むのかによってもかわってくる。さらに、モノ(手段)がまだない場合の基本機能とはどう考えるのか。
実はエネルギー機能と制御機能では動特性の意味、ひいてはSN比の意味する所も全くことなるので知らずに機能性評価やパラメータ設計をやると問題なのだが、あまり議論されない。基本機能の謎は深まるばかりである。
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