2014/10/05

理屈で分からないことにパラメータ設計を

設計には理屈で分かる部分と、理屈では分からない(難しい)部分とがある。機械、電気などでは前者の部分が大きく、電磁気、熱流体、振動音響、EMCなどとなってくると後者の比重が高くなり、高分子の合成化学、薬学、燃焼などどなると後者の領域が大きくなってくる(あくまで傾向で並べたので個々のケースで複雑さが異なるのは当然)。

理屈で分かる部分を定式化し、理屈では分からない部分を探求していくのが、科学・工学であり、アカデミアにはこの部分の進歩が期待されている。しかし技術の分野では、分からない部分があっても機能だけは納期までに実現させなければならないのである。

したがって、理屈で分かる部分の基本設計(主に、動作原理、性能の部分)とともに、理屈で分からない、動特性を含むロバストネスや、非線形性、交互作用の世界についてもなんらかの方法で一定の答えを出さなければならない。

一般には出力の平均的傾向は科学・工学的あるいは経験的に(これは体系化の度合いの違いでほぼ同じ意味だが)、理解・推測できる場合が多い。つまりモデリングが可能である。これらは物理の数式モデル(1Dモデル)で現象を記述することができる(電気・機械のRLCモデル、電磁方程式、各種の微分方程式など)。3Dフルモデルに行く前に、このような物理モデルを立てられ、ファーストオーダで出力傾向を見積もる、というのは設計者の基本的なスキルとして持っておくことが望ましい。

ところが物理モデルがわかっても、上記のような分からない部分が必ず残る(もしくは分からない部分が認識できないまま次の工程に進んでしまう)。そのため、出力の平均値だけでなく、ロバストネスはどうなのか、制御因子間の交互作用はないのか、ということを実験的に知る必要がある。理屈で分からない部分を実験的に見つける、あるいは検査するのが品質工学のパラメータ設計である。

面白いことに、パラメータ設計を使えば、理屈で分からなかったことを、理屈からわかるモデルを使って知ることができるのである。制御因子とノイズ因子の交互作用利用によるロバストネスの追求、(基本)機能やSN比という尺度を導入した解析の加法性の確保、再現性確認による交互作用のチェックなど、品質工学のアイデアがここで生きる。分からなかったことが分かるようになり、それを技術者が考察することで技術者の能力も技術そのものも向上していく。

そのためには、まず技術者が、理屈で分かる領域を広くする必要があり、そのためにはこれまでの知識の蓄積である科学・工学の基礎知識の獲得は必須である。パラメータ設計は工学的知識のない(浅い)技術者のためのブラックボックスの手法(魔法の杖)ではない。モデリング力のある強い技術者をさらに強くさせる、鬼の金棒である。


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

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