2006/01/26

企業の本当の価値と時価(株価)

品質工学では「社会的損失の総和の最小化」を目指している。
今回は、ホリエモンの事件についてこれを考えてみる。

マスコミは一時代を賑わせた人物の凋落をゴシップ的に騒ぎたてているだけのように見える。
一企業の金儲け主義の是非などは価値観の問題でどうでもいいことだ。
極論すれば、今回の事件では、QE的にはなにも社会的損失は与えていない。
ただ、高く買った人/売った人、安く買った人/売った人、手数料を払った人/受け取った人・・・がいるだけである。
知らざるものが損をするという市場経済主義のありのままの姿だけだ。
金融経済では社会の生産性はプラスマイナスゼロなのである。
(泥棒も社会的損失はゼロ、というジョークまである)。

実際に株式投資をやっている当事者なら当然分かっていることだと思うのだが、株価(時価相場)は実際の価値を表しているわけではなく、単なる投資家の「期待」にすぎない。
株価は「期待」は目に見えないものを相手にしている。
株価が半分になったからといって、その会社としての実際の戦力やリソースがすぐ半分になるわけではない(株価は信用力だから長期的な影響はある)。
「実際の価値」と「時価」との落差(歪み)はあって当然のもので、そのこと自体は問題視される類のものではない。
プロのトレーダならむしろ、時価の歪みは投資のチャンスになるものだ(アービトラージなどの手法がそれだ)。
今回のような事件で、粉飾決算をした会社(まだライブドアの有罪が確定していないので一般論とする)が人為的に「価値」と株の「時価相場」との落差を作ろうとしたのがルール違反なのは当然としても、日本の市場や株式、会計システムが透明性とか、公正さの部分でまだまだ未成熟で、ここまで野放しにしてきたことこそ問題だったということだ。
これが「実際に見えないもの=コト」の本質なのだと思う。

今回の事件による真の損失は何か。それは株式などの市場に与えたインパクトが最大の損失なのだろう。時価が下がったからではなく、こんな状況では投資家が逃げてしまいかねない。日本の景気回復ももう少しかかることだろう(景気は設備投資や個人消費などの「期待」なのだ」から)。

0 件のコメント: