2009/11/16

品質工学入門10周年

 今月で初めて品質工学の存在を知って丁度10年になる。99年11月に、機械学会関西支部のセミナー(TM, TRIZ, QFDの概要が2日で分かる、といったような内容だったと思う)で、Kazz先生こと原和彦先生の講座でタグチメソッドを知ったのだ。

 上司からの勧めで聞きに行ったのだが、タグチメソッドといっても実験計画法のことだと漠然と思っていた。しかしその先入観は原先生の最初の一言で打ち砕かれることになる。

 「あなたがたがやっているのは技術開発ではない!」

 衝撃を受けた。いったいタグチメソッドとは何なんだ!?先生の話はツカミだけでは終わらない。下名が最も衝撃を受けたのは、技術工学で経済性が扱えることだ。つまり、損失関数に魅了された。こんな考え方があったのか!!(・・・しかし、損失関数の本当の意味や、それを実社会で運用する大変さは後ほど痛いほど分かってくるのだが、それはまた別の話・・・)

 損失関数だけでは話は終わらない。コンデンサの評価の例だったか、たくさんの品質特性を評価しなくても基本機能を考えれば1つの特性で評価でき、改善も1つの特性でできるだと・・・? しかもSN比という指標で比較すれば、短時間で寿命に匹敵する評価もできるとは・・・。 なに?直交表という実験の組み合わせの表を使うと、たくさんの因子を一度に評価できるだと・・・? それなら、今やっている○○の仕事はこれを使えばうまくいくのではないか・・・??

 ちょうどタイミングがよかったのだろう。この頃、下名は生産技術の研究所にいて、製造現場と量産品を相手に四苦八苦していたのだ。頭も使うが、とにかく5ゲン主義、足で稼ぐ仕事だ。そのなかで得たことももちろん多かったが、それでも悪い言い方をすでば、問題が発生してからの場当たり的な対応が多く、それに漠然と疑問を感じていたのだ。もっと、見通しよく仕事を進められないものか。。。

 そのような、漠然としつつも問題意識が芽生えていたことと、製造現場でばらつきと悪戦苦闘していたこと、そして生来のシステマチックな考え方が好きなこと、そして原先生の一撃が化学反応して、いっきに品質工学の道に魅了されていった。その日のセミナーが終わるや、梅田の紀伊国屋ですでに「品質工学講座1」を手にした自分がいたのだ。とにかく、もっと知りたい一心だった。

 それから10年、試行錯誤と独学で品質工学を学んだ時期、研究会や学会に参加して切磋琢磨した時期、会社で組織を立ち上げ開発・普及に精を出す現在・・・その時々でレベルや考え方も少しずつ変わってきたが、それでも10年間全くこれでいい、と思えることなく、またほかの方法論も勉強するけれどそちらに浮気することもなく、まだまだ勉強の日々が続いている。

 今後も品質工学を続けていくことになると思うが、得たものの中で一番かけがえのないのは、社外の人脈である。高名な先生方や著者の方からいろいろ教えていただいたり、励ましを頂いたり、また楽しくも厳しい研究会の仲間と切磋琢磨したりできることは、1つのことを少なからず突き詰めてきたからだろうと思う。 またそうすることで、ほかの分野の技術や手法、哲学的な考え方にも自然と興味がもてるようにもなった。

 品質工学は「道」であり、生涯学習であると感じている。

2 件のコメント:

Kazz さんのコメント...

Kazzです。
あなたの衝撃的な品質工学との出会いには感動しました。
あなたのような技術者ばかりであれば日本の企業環境は変わるのでしょうが,現実はまったく違う状況が起こっています。
人を育てるとか人を造るということは大変な事業です。松下幸之助もマツダの井巻社長も企業は人を造れば,その人が物を造るのだからまず人を造ることが大切だといっておられます。
ただ今,事業仕分け人が各省の無駄をバッサバッサと切って廃止や見直しをしていますが,国民の幸せとコストのバランスを考えて仕分けを行っている姿は,品質工学の考え方に通ずるものです。何故このような当たり前のことが行われなかったのか不思議ですが,改革はこのように難しいのですね。
貴方は本当に素晴らしい技術者です。これからも理想に向けて満身努力してください。

つるぞう さんのコメント...

いつもありがとうございます。

なかなか理想どおりには物事は進んでいきませんが、Kazz先生をはじめたくさんの仲間がいらっしゃるので日々邁進してゆけるのだと思います。

今後ともよろしくお願いします。