2008年に米国でT社製エアバッグが暴爆(設計値以上の出力で爆発)して内部の金属片が噴き出し,乗員を死傷。ガス発生剤の成型工程や成型後の吸湿防止措置が正しく行われず、密度が不足したガス発生剤が組み込まれた可能性がある。これにより、エアバッグ展開時にインフレーター内圧が異常上昇。インフレーター容器が破損して飛び散り、出火や乗員が負傷する恐れがある。最大9000万台のリコールの可能性 もあり、処置費用は1兆円以上に 及ぶとみられる。
図出典:http://blog.livedoor.jp/zzcj/archives/51878610.html
ガス発生剤(硝酸アンモニウム)は非常に吸湿・変質しやすい材料であることは、既知の故障モード(壊れ方)であった。ガス発生剤が変質して以上爆を起こした場合の影響分析とその対策が不足していた、設計・開発起因の問題とみる。
この事故は以下の少なくとも5つの段階の検討もれがあり、このうち1つでも(望ましくは2つ以上)確実に実施していれば事故は防げていたと考える。
①吸湿しても変質しにくいガス発生剤とする(硝酸アンモニウム以外を使用)
②吸湿してガス発生剤が変質しても異常爆発しない設計とする(より高い相安定化)
③異常爆発しても容器が破損しない設計にする(流路や容器の構造・強度設計)
④容器が破損しても、金属片など鋭利なものが飛散しない設計にするか(容器の材料・構造設計)
⑤金属片が飛散しても、運転手の方向には飛ばないように設計する
②吸湿してガス発生剤が変質しても異常爆発しない設計とする(より高い相安定化)
③異常爆発しても容器が破損しない設計にする(流路や容器の構造・強度設計)
④容器が破損しても、金属片など鋭利なものが飛散しない設計にするか(容器の材料・構造設計)
⑤金属片が飛散しても、運転手の方向には飛ばないように設計する
性能やコストを優先して、吸湿しやすい硝酸アンモニウムを使用した上、その対策を工程の除湿だけに頼ってしまった。これは製造ミスではなく、製造工程の設計ミスである。ルール不徹底は工程の故障モードなので、これはPFMEAでリスク管理すべき項目であった。
もっとも重要なのは、金属片飛散→運転手死傷という重大な最終影響を考慮できなかったことである。正しく故障モードの把握と、その影響解析を行い、上記の1つでも2つでも対策が行えていれば・・・と惜しまれてならない。
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