2006/02/05

商品企画・研究開発・設計の区別

 先日、関西品質工学研究会で田口先生の講演の中で、フィルタ設計の例をとって、商品企画・研究開発・設計の区別のお話があったので、筆者の理解の範囲で解説する。

 対象は、ある周波数f0以上の入力信号をカットするローパス(ハイカット)フィルタの例である。もちろん、ローパスでもバンドパスでも同じである。このフィルタでは、顧客や電気回路設計者のニーズから理想的には、「ある周波数f0以上の入力信号は0に減衰させ、f0以下の入力信号は100%通過させる」という機能を要求されている。
どのような帯域のどのような性能のフィルタを製造・販売するかは、技術者の問題ではなく、製品企画の問題である。

 一方、企画が決定されたのち、その特性を満足するフィルタを実際に設計(理想的なフィルタの特性カーブに近づけるチューニング設計)するのは、設計者の役割である。

 またその源流で、商品企画に先立って、フィルタの特性カーブの安定性をスペックに関係なく改善しておくのは、研究開発の仕事である。この部分に、品質工学を活用して先行性のある評価改善を行っておくべきとしている。前述のようなフィルタの機能性は、製品企画であるフィルタの目的曲線(特性)とは全く別に、フィルタのカットオフ周波数(パワーが半値を示す周波数)の安定性を評価すべきとしている。

 その後で、特定の帯域の特定の特性のカーブにどう合わせこむかというのは、設計技術者の仕事というわけだ。合わせこむための制御因子の選択や、許容差設計のようなレスポンスの解析がその仕事ということになる。この部分は、大部分がコンピュータによって自動化される部分と考えており、商品企画でスペックが決まれば即座に設計が完了できるようにすべきだ。

 いずれにしても大切なことは、周波数を安定させたり、理想のカーブに近づけたりするためには、多くの制御因子が必要であるということだ。必要十分に複雑な回路でないと、これは実現できない。筆者も以前、SAW(弾性表面波)デバイスのバンドパスフィルタのプロセス(回路設計ではない)をやったことがあるが、やはりシステムである回路のほうのロバストネスが十分に確保できていないので、プロセスのマージンが小さく、非常に苦労した経験がある。プロセスなら社内のコストの話で済むが、市場に言ってからは、技術者はチューニングしに行けない。やはり、システムでのロバストネスを源流で確保すべきということなのだ。

 これは商品企画・研究開発・設計の区別を説明するには分かりやすくてシンプルな例でよいと思う。新人や若手技術者への教育に活用したい例題である。

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