2006/02/14

ドラッカーと田口博士の未来観

鼻持ちならないが、ドラッカーの言葉を引用する。


「未来を予測しようとしても無駄である」

       (「創造する経営者」より)

ドラッカーは企業経営のあり方を指してこう言ったのであるが、これは技術開発についても同様に言えることである。すなわち、市場に出て行った製品がどのような使い方をされ、どのような環境でどんな劣化のストレスを受けるのか、その1つ1つの現象について、またその総体について正確に予測することは不可能であり、もちろん完全に対策することも不可能である。

したがって通常は、JISや社内で取り決めた一定の規格試験や検査を行い、決められた環境試験の結果と、出て行くときの性能でOK、NGを判断して出荷している。そもそも考えても仕方ないと思っているので、そのような試験をやって市場でNGが出ても内心「仕方がない」と思っているのである。

では品質工学ではどうするか。これについてもドラッカーはこのような示唆を与えている。

「変化をコントロールする最善の方法は、自ら変化を作り出すことである」

       (「明日を支配するもの」より)

つまり、変化(この場合市場での使用条件や環境、劣化など)をコントロールすることはできない。できるのは開発設計段階で、それを自ら作り出すことであると。田口博士は図らずもドラッカーと同じように、技術の上流の開発設計段階で、「誤差因子」を導入することで、予測しても無駄と考えられていた「未来」を予測する方法を編み出し提言したのである。

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