2015/11/23

信頼性試験は万全の方法か(2)

 まず「複雑さの壁」だ。信頼性試験というと、一般には使用段階の環境を模擬していると思われがちだが、そうではない。信頼性試験は、ほとんどが単一の要因に対する試験なのである。

 たとえば、高温放置試験、ヒートサイクル(温度の上げ下げ)試験、振動試験、…といったように、単一の要因について合格の基準値(例:80℃環境で1000時間放置したあと正常に動作すること)に対する合否を判断する。

 ところが、実際に製品を使用するときを考えてみよう。たとえば講演でレーザポインタを使っている。室内で使用していても、夏場と冬場では環境温度は異なる。また手のひらからの熱や塩分を含んだ水分などが伝わっている(高温、高湿、腐食性イオン)。ボタンを繰り返し押している(繰り返し応力、摩耗)。講演の調子があがってきて、ポインタを振り回しはじめた(加速度、振動)。誤って落としてしまうかもしれない(衝撃)。

 このような一見、室内のマイルドな環境での使用でも、「さまざまな種類のストレス要因が」「同時に」「繰り返し・継続的に」(これらをまとめて「複合的に」という)製品に、加わるので、製品の身になればたまったものではない。自動車だともっと厳しい環境だ。人工衛星の使用環境になると想像もできない(笑)。

 つまり製品の使用段階では、信頼性試験で行っているような単一の要因だけでの使い方というのはあり得ないのだ。信頼性試験の条件において、使用段階という非常に複雑な環境や使用条件が模擬できていないのである。

 信頼性試験で合格して、出荷前の検査も合格したはずのピカピカの製品が、期待に反して短い使用期間で故障したり性能が低下したりすることがある。信頼性試験の条件と使用段階の環境や使用条件が異なるわけなので、出荷前には思ってもいなかった(でもよく考えればあり得る)ような「複合的な」条件で、試験では見つからなかった不具合が発生するのだ。

 したがって、製品の使用段階での品質を確保するためには、使用段階の条件に合うような複雑な条件で製品の品質の「実力」を調べる必要があることがわかる。


株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

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