市場不具合の原因は,設計・開発段階で70~85%を占める
自動車,家電製品,衣料品,食品,医薬品のような工業製品,あるいは発電所,電鉄,トンネルなどの社会インフラ,宇宙に打ち上げられるロケットや人工衛星に至るまで,人が作り,形があるものは,ハードウェアとよばれます.毎日のようにハードウェアの故障や安全性の問題,検査データの改ざんや手抜き工事,開発や検査のしくみ・組織のまずさなど,さまざまな形でハードウェアの技術の問題点が報じられています.いったい,我が国のものづくりはどうなっているのだ,という懸念をお持ちの方も多いと思います.意図的な改ざんや,想定外(と当事者がいっている)不具合が報じられる一方で,大部分の製造業や建設業等では日々技術開発にしのぎを削り,品質やコスト,サービスの改善に真摯に取り組んでいるのです.それでもさまざまな理由で,十分に不具合を予測できずに上記のような問題が繰り返し発生します.製品がお客様の手に渡り,使用される段階でのトラブルはどのようにして起こるのでしょうか.本書では主に工業製品を取り上げてその問題を考えていきます .
ある調査 によりますと,図表1.1.1に示すように,AV製品のクレームの85%が設計責任であると報告されています.つまり製造不良などの生産部門の責任や,検査もれなどの品質保証部門の責任は高々15%ほどだというのです.これは一例にすぎませんが,クレームやお客様の使用段階での不具合の大半は,設計・開発段階の要因(購入品の評価・選定も含む)によると考えられています.つまり,設計・開発段階での仕事の質や,どれだけリソースを有効に投入したかによって,製品品質の大半が決まってしまいます.これはなぜなのでしょうか.(つづく)
図表1.1.1 製品クレームの要因の一例
出典:N-TZD研究会報告書 http://qcd.jp/pdf/corporateActivuty/n-tzd-R.pdf
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