2022/05/05

「超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」①

1. はじめに*

 品質工学やオペレーティングリサーチ,トヨタ生産システムなどのさまざまな経営工学技術は,仕事の効率化,品質向上を図るうえで非常に有用である.あらゆるムダを減らすことで技術者らの価値創出のための時間を作り出し,また創造性を発揮する手助けすることが経営工学技術の役割である.本稿では特に品質工学に焦点を絞り,著書「これでわかった!超実践品質工学」〔1〕で体系化した実践方法の一部を紹介する.また,とかく難しいと言われている品質工学の実践・推進の問題点について明らかにし,その解決のポイントを示す.

2. 品質の見える化の必要性

 以下は企画段階に関係する価値の問題ではなく,市場クレームや開発手戻りなどの損失(ムダや生産性悪化)に関係する品質の問題を取り扱う.すなわち性能の低下や故障などに関わる,機能のばらつきや信頼性の問題である.製品の市場クレームの大半は設計・開発責任(購入部品の選定を含む)という統計がある.このことは,出荷時に良品であったはずの製品が,使用段階の発生させる問題は,設計・開発段階で対処しておく必要があることを示している.しかし,製造段階の品質問題に比べると,使用段階で発生する問題のほうが見つけにくく,またその原因を事前に想定して,対策することは一般に困難である.

また,設計・開発段階で不具合を見つけ出せた場合の対策コスト(図面修正等)に比べると,量産開始後(金型修正,製法変更)や市場出荷後(クレーム処理,リコール)ではより甚大な対策コストがかかる .これらのことから,品質への対応はできるだけ早い段階で行っておきたい.そこで設計・開発の初期段階で,使用段階における”未来の品質”の見える化が重要となる(図1右上).

このための方法論として,品質工学の「機能性評価(機能の安定性評価)」がある.


図1 めざすべき設計・開発プロセス

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超実践品質工学の概要とうまく推進するためのポイント」(6ページ)

(日本経営工学会の了承済)。

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