視点をみなさんの職場,設計・開発の現場に移して,現状の仕事の進め方の考察をしていきましょう.これから説明する内容はワーストケースですが,みなさんの仕事の進め方にも当てはまり,「あるある」と思えたことは,忘れないようにより具体的にメモしておいてください.そしてそのあと,その現状が事実なのかどうかを現場・現実・現物(3現,つまりデータ)で押えておくことが重要です.これは,改善や問題解決の計画を立案する際に,最初に考えるべきことだからです.
図1-4-1は,一般的な設計・開発のプロセス(仕事の進め方)における現状と問題点を示しています.これを「悪魔のサイクル」とよんでいます.サイクルですので,同じような出来事が開発のたびに起こります.順にみていきましょう.
図表1.4.1 設計・開発における「悪魔のサイクル」
まず時計で12時の位置にある「リソース不足での設計・開発」から説明をはじめます.設計・開発部門におけるリソース(主にマンパワー,時間,お金)が十分にあってゆったりと仕事が進められる職場はほとんどありません.経営者は必要最小限のリソースで最大の成果を挙げたいと考えています.技術者は案件や対象機種を多くかかえ,また新規で未知の部分も多いため,検討に時間がかかります.設計仕様の変更を要求される場合もあります.計算や実験での検討時間が足りない場合は,過去の設計流用ですませたり,試作試験での検証の結論を先送りしたりして,不完全なまま次のステップに進んでしまいます.デザインレビューにも問題点がありそうです.十分検討時間を取るために,開発を早く始めればよいのですが,すでに出荷した製品のトラブル対応に追われる結果,現在の開発スタートも遅れてしまいます.(つづく)
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