2025/01/31

目的を見失わずに事業革新を実現するためのレベル別戦略

  事業改善、実践テーマを設定するときに事なことは、より上位のレベルがないがしろにされ、手法の枝葉末節議論や、目的と手段のはき違えになっていないかに留意すべきということである。いくら性能や良く、ばらつきの少ない製品を効率よく作ったとしても、それが売れなければ全く意味がないのだから。


LEVEL1 事業性の問題・・・コンセプトデザイン
 その製品やサービスがお客様に受け入れられて、製品が売れ、もうかるのかどうか、事業が継続できるのかどうか。つまり、企画の問題である。「よい品質」とは、顧客の要求に合致していることに他ならないので、すべてのスタート点はここにある。手段ではなく、どのような機能、どのような効用の製品やサービスを提供していくのかというテーマである。管理技術ではQFD(品質機能展開)、アイデア発想法、企画の7つ道具などがそのツールとなる。市場調査の手段として、IoT、ビッグデータ、AIを活用するデータサイエンスの分野も喧しい。なお、品質工学では「よい品質」における「価値・効用」の部分、すなわち「機能そのもの」は扱っていない。

LEVEL2 実現性の問題・・・システムデザイン
 顧客の要求が分かり(あるいは想定でき)、目標とする製品やサービスが定義できれば、次にそれを技術的に実現する必要がある。いわゆる研究開発による機能の実現、性能・エネルギー効率の確保の問題である(要求性能に信頼性やコストや環境性等が含まれることも多い)。これはできるだけ企画に先行するほうがよい。新しい方式を立案(発明、流用)し、どのような方式が良いのかを比較検討する。コンピュータシミュレーションや部分的なプロトタイプによる実験も含む。技術者の固有技術、知識、経験、センス、意欲などがモノをいう世界だ。最終的には特許などの知的財産権の独占につながるのだから、手法だけで答えが出る世界でないのは明らかだ。管理技術では、TRIZ、アイデア発想法などがそのツールとなる(最近では生成AIも併用)。信頼性の机上検討ではFMEA、FTAなどの信頼性工学を活用する。原理やメカニズムを解明するフェーズでは実験計画法や統計的手法を用いることもある。

LEVEL3 評価の効率化の問題・・・機能性評価
 考えたシステムの妥当性(特に機能の安定性)を効率よく確認できなければ、それを効率よく比較・改善することはできない。また、開発・設計の初期段階では、性能は見えても信頼性や寿命が分からないことは多い。長時間の信頼性試験、寿命試験に頼らずにこれらを短期間で見極めることは、開発の効率化に大きく寄与する。また、規定の開発期間内に多くのトライアンドエラーが可能となり、性能や信頼性のレベル向上にも寄与する。管理技術では品質工学の機能性評価(機能定義、ノイズ因子、SN比)がそのツールとなる。

LEVEL4 改善の効率化の問題・・・パラメータ設計
 同じシステム内においても、寸法や材料などの設計パラメータの条件変更により特性(ばらつきや平均値)を改善できる場合が多い(特に初めて採用したシステムの場合)。設計パラメータの条件の組合せの評価を効率的に行いたいというニーズがある。そのため直交表を用いることが多いが、一部実施実験である直交表での最適条件(候補)がはたして、実際の(仮想的には全条件を実施した場合の)最適条件と一致するのかどうかが問題となる。これを再現性という。すなわち、どこまで改善できるかはLEVEL2の基本設計にかかっているが、それを効率よく改善できるかどうかは、LEVEL3の評価の問題と、LEVEL4の再現性の問題である。管理技術では品質工学のパラメータ設計(機能性評価に加えて、直交表、要因効果図、確認実験、その他再現性確保のための手法)などがそのツールとなる。品質工学の研究会等ではいきなりこのレベルの話から入ることが多いと感じる(もちろん前提がきちんとあって、説明できるのなら問題はないのだが、直交表などのツールに振り回されているものも散見される)。

 これ以降にも詳細設計に入ってからの各スペックのバランスやトレードオフの問題もある。これらは多目的最適化や許容差設計の分野となる。事業ありき、システムありきでの仕事が中心の場合、このレベルの課題が出てくることは確かである。詳しく知りたい方は弊社のセミナーやコンサルを利用いただきたい。

2025/01/30

最速で若手を戦力化!若手技術者向けの設計品質講座(6回コース)

 普段は設計品リーダー向けのお手伝いを中心にしていますが、愛知県のメーカー様で若手技術者向けの設計品質講座(6回コース)を実施しました。最後に受講生より各自感想やコメントをいただきました。その中で、


「もっと早く知っていればよかった!」

という感想が多かったです。
そりゃそうです。これまでは自己流の開発の進め方、データの取り方で、不十分な解析しかできておらず、非効率や手戻りのムダだらけだったわけですから。AI・DX・機械学習の前にまず基本を押さえましょう!



対象は、統計的手法初心の若手技術者中心で、内容は以下のようなカリキュラムです。初めてでも無理なく中級クラス(実務で活用できる)に到達できます。後半の3回は各自のデータ分析の具体的相談にのり、ディスカッションを通じて理解を深めます。

6回コース(各1日6時間)
1,2回目
 統計の基礎(基礎知識から区間推定、回帰分析まで)
3か回目
 重回帰分析と応答曲面法
4,5,6回目
品質工学(設計品質の重要事項、機能性評価とパラメータ設計)
※個別ディスカッション付

上記同社にてさらに受講メンバーを入れ替えて実施予定です。
彼らの中から将来設計品質リーダークラスの人財が出てくることでしょう。

費用:27万円×6回(消費税別、別途旅費発生時は実費)

2025/01/29

事業成果と人財育成の両立!設計品質リーダー育成コース

 機械系や化学系メーカー様で、設計品質リーダー育成コースを実施中! 先日、経営幹部様の前で成果報告会をさせていただきました。

ある材料加工品メーカー様の成果金額の単年度試算合計は7名で29億円となりました。他社様での同様の活動でも同レベルの効果が出ています。
幹部様より「活動にブレがない」とのお言葉をいただきました。
今後は、活動で創出したリソースを企画やR&Dという価値創出に向けていくことになります。



<前職から20年近い運営の実績!> 前職の設計品質(品質工学)を中心としたプロジェクト活動では、6年間で約900人のリーダを育成。ジェダイトではすでに大手製造業様6社、100名以上の塾生を育成(現塾生を含む)。 特に計画段階での、実践テーマの提言書作成指導が目玉です。 マインド醸成+スキルアップ(管理技術の講座)+実施提言書作成+実践 による人財育成(1年間+事後フォロー) 1期5~10名の成果試算金額は、数億~20億円以上の実績。 卒塾後は、実践活動の継続と後進育成。 このような活動を真剣に取り組みたい会社さんと、ご一緒に頑張りたいと思います。 冷やかし厳禁!意欲のある会社様のみご連絡をお願いいたします!

2025/01/28

設計開発だけじゃない!間接部門の品質工学・データエンジニアリング適用

 品質工学をどのような分野に適用していけるかを考え、実践していくのも品質工学の重要な研究テーマとなっており、現在進行形でさまざまな分野への適用が検討されています。以下、間接部門における品質工学の現状について解説いたします。参考文献は一例です。 

1)資材購買部門
 品証部門などの購入品(部品や材料)評価部門と協力して、機能性評価を実施し、価格とのバランスで最適な購入品を選定することが考えられます。また購入後も定期的にロット抜き取りで品質をチェックすることにより、メーカへのけん制や、低品質品が納入されたときの是正などに役立ちます。定期的な抜き取り評価を可能とするためには、短時間評価方法が必要で、そのために機能性評価が役立ちます。

2)人事部門
 人的資本経営を含め、古今を問わず重要なテーマです。田口玄一先生が提言された「部門評価制度」も品質工学の1分野とされます[1]。これ自体は古い提案ですが、内容的には古さを感じさせません。これは要するに、各部門の責任(期待する結果)を明確にして、結果の客観的な評価によって妥当な褒章を行うというものです。そのための評価基準の設定に提案の主眼があります。本ブログでも部門評価制度に関するシリーズの投稿がありますので、ご参照ください。
 また、1dbの改善がいくらの価値に相当するのかを研究した事例もあります[2]。
 また、人事評定を品質工学を用いて試みた事例も発表されています[3]。

3)企画部門
 どのような製品が好まれるかは、感性や好みの問題が大きいため、技術的に扱うことができません。しかしながら、食品や衣料品などの味や使い心地をMTシステムで評価した事例があります[4][5]。
 また品質工学とは直接関係しませんが、直交表を使った商品企画方法としてコンジョイント分析があります(商品企画の7つ道具の1つ)。企画のパラメータ設計といってもよいかもしれません。

4)営業部門
 MTシステムを用いた将来の販売予測、需要予測をテーマにした研究もあります[6][7]。

5)財務・経理部門
 為替レートや経済指標が業績に影響する場合、その予測は重要です。難しいテーマですが研究例があります[8]。

参考文献
[1]田口玄一:「部門評価制度」, 日本規格協会, (1966).
[2]白勢明三:「1デシベルはいくらに相当するか」, 品質工学, Vol. 12, No. 5, (2004) .
[3]奈良敢也:「TS法とT法を用いた人事考課システムの開発」, 第14回品質工学研究発表大会, (2006)
[4]森清康雄:「醤油醸造技術のMT法による 開発」, 品質工学, Vol.11, No.1, (2003)
[5]池田和子:「マハラノビスの距離によるジャケットの着心地の検討」, 品質工学, vol.5, No.2, (1997)
[6]永倉克彦:「両側T法を用いた建設機械の需要予測」, 第19回品質工学研究発表大会, (2011)
[7]天谷浩一:「売れる機械を予測する~マーケティングへのMTシステム適用を考える」, 第21回品質工学研究発表大会, (2013)
[8]永倉克彦:「両側T法を用いた経済予測」, 第20回品質工学研究発表大会, (2012) ほか一連の研究


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技術者のリカレント教育もお任せください! 

2025/01/27

【6回の集中講座でエキスパートに】設計品質手法エキスパートセミナー(オンライン)

 好評の著書「これでわかった!超実践品質工学」の著者が 社内の設計品質手法エキスパートをしっかりと育成する他にはない本格的な6か月(6回)コースです! 

オンラインセミナーでも開催できます。

こちらから総合パンフレットをダウンロードいただけます。

【第1回】  品質工学の概要 
◆設計品質の重要性  ◆開発プロセスの課題とそれに対する作戦 ◆品質工学の目的  ◆本当に企業が実施すべきことは何か   ◆品質工学とは  ◆品質工学の全体像  ◆品質工学の進め方(テーマ設定から成果刈り取りまで) 

【第2回】  機能の安定性評価(1) 
◆機能とは何か、考える利点  ◆機能の考え方(基本ルールと2つのパターン)◆1秒機能(過渡特性)  ◆機能展開とスコーピング   ◆ノイズ因子とは何か ◆ノイズ因子の種類・水準・組み合わせの決め方  ◆P-diagram  ◆SN比とは何を評価するのか  ◆事例紹介 

【第3回】  機能の安定性評価(2) 
◆機能展開と機能分析の方法 ◆もれのないノイズ因子検討、 リスク未然防止の最新手法(クロスチェック付きなぜなぜ分析) ◆エネルギー比型SN比の数理と計算方法、演習  ◆事例紹介

【第4回】  品質設計と最適化(1) 
◆直交実験の実施リスクとそれに対する考え方  ◆2つの目的   ◆パラメータ設計の実施フロー  ◆制御因子  ◆P-diagram   ◆直交表とその使用目的  ◆データ解析と要因効果図  ◆確認実験と再現性  ◆実験失敗リスクの事前・事後対策  ◆事例紹介 

【第5回】 品質設計と最適化(2) 
◆パラメータ設計解析S/Wの使用方法  ◆コンピュータシミュレーション設計とその課題  ◆交互作用に対応する逐次法   ◆計算工数を大幅に減らすスノコ法(逐次ノイズ調合法)   ◆本当の制御因子を見つける方法  ◆事例紹介 

【第6回】  役立つ手法と推進展開 
◆多特性の場合の対応  ◆MTシステム(パターン認識による検査・管理自動化)  ◆品質二元表(最重要開発テーマの決め方)   ◆矛盾マトリクス(トレードオフがある場合のアイデア発想法) ◆品質工学の推進・人財育成方法 

※ご希望により、ほかの手法の追加なども可能です。講座体系をご参照ください。

実施形式
リモート形式(一部対面可)15名様程度まで受講可能。

費 用
1,620,000円(6日間)+消費税+旅費実費(オンラインの場合無料)。テキスト・ツール類費用、日当等の一切の費用を含みます。見積書をお問合せフォームよりご用命ください。

ご希望により、事例相談(コンサル)を内時間で含めたり、または追加することができます 。

2025/01/26

限定数のみの企業様へ対応!設計品質リーダーコース

   株式会社ジェダイトでは目先の問題解決だけでなく、設計品質リーダーを育成することを念頭においたお手伝いしています(その中で必ず定量的な効果も示していきます)。このようなリーダーを経営実行の中心部隊として育成し、人的資本の中核として経営に活用していくことが重要です。

 設計品質リーダーとは以下のような人物像を指しています。

①設計品質改善へのマインドがあり、後進育成の意欲があること。
②自ら設計品質改善活動(現状分析~提言~解決のPDCA)を経験したことがあり、さらにそれを継続していること。成功体験も重要だが、途中での失敗トラブルにあたり、考え抜き、それを最終的には打破すること。
③解決のための豊富な知識(手法や社内・社外の相談窓口・リソース等)を持ち、それを生かせること。

①は受講生の考えや入社してからの環境にも左右されますが、業務で品質トラブル解決の現場を経験したり、受講生の対する期待を折に触れ伝えたり、幹部・上司の覚悟を示していくことで、気づきを得たり、考えは変わっていきます。さらに講座では設計品質の重要性を解いたり、時には幹部の方に講話をいただいたりします。提言書や実践のマンツーマン指導で下名の経験も伝えていきます。

②についてはリーダ育成コースの前期で、現状分析~問題点~根本原因~課題~解決策(提言)の流れを経験し、後期はそれを実践していきます。1年間でPDCAを一通り経験することになります。テーマによっては一筋縄ではいかないものも出てくると思います(それくらいのテーマを設定する必要があります)。そのなかで弊社のような社外の知識リソースを含め、持ちうるリソースを総動員して、時には組織や権限を越えて「できない理由ではなく、どうすればできるのかを考える」マインドを育んでいきます。

③についても、講座の中でまずはコアメソッドとなる品質工学の話を順にしていきますが、品質工学だけで仕事が進むわけではありません。後期の実践の中でも必要な手法を補足したり、不定期に集合講座を開催することが可能です。

 一般的にはこのような条件を満たすような人財は中々おりません。放っておいても伸びる人はごく一部です。そこで、リーダー候補をトップダウンで任命し、計画的な教育を中期的、継続的に実施していくことが必要になるわけです。

 このようなマインドとスキルを身に着けるためには、ひとことで言えば「経験」と「気づき」を得られるようなプログラム(講演、セミナー、実習、課題調査、実践指導)が必要です。


 またこのような活動を継続していくためには、社内での大目的の共有と各階層での得心、しくみの構築、成果見える化が必要となります。つまり1期単位の成果を数値(金額)で示し、それを積み上げていくことにより、幹部に活動の理解を得て、活動リソースを継続的に供給いただくことが必要なため、そのようなサポートも行っています。




<前職から20年の運営の実績!>
前職の設計品質(品質工学)を中心としたプロジェクト活動では、6年間で約900人のリーダを育成。ジェダイトではすでに100名以上の塾生を育成(現塾生を含む)。

特に計画段階での、実践テーマの提言書作成指導が目玉です。

マインド醸成+スキルアップ(管理技術の講座)+実施提言書作成+実践 による人財育成(1年間+事後フォロー)

1期10名の成果試算金額は、数億~20億円程度の実績。累積130億円。

卒塾後は、実践活動の継続と後進育成。

このような活動を真剣に取り組みたい会社さんと、ご一緒に頑張りたいと思います。
冷やかし厳禁!意欲のある会社様のみご連絡をお願いいたします!

2025/01/25

【交互作用への対応を全般的にカバー!】パラメータ設計応用コース(オンライン)

 交互作用への対応、多目的の最適化など、実践で悩ましい点に特化!パラメータ設計ツール付き!  オンラインセミナーでも開催できます。

※初心者の方、久しぶりに学びなおしたい方は、まず初級コースの受講をお勧めします!

こちらから総合パンフレットをダウンロードいただけます。


交互作用への対応方法① 
 ●パラメータ設計と交互作用 
 ●計画時の注意点(特性値、ノイズ、制御因子、計測) 
 ●制御因子の効果をあらかじめチェックする方法 
 ●再現性が得られない場合の緊急手段 
 ●コンピュータシミュレーションによる交互作用撲滅法 
 ●逐次法よりさらに効率よく設計するノイズ因子逐次調合法 
交互作用への対応方法② 
 ●ほんとうの制御因子とは何か 
 ●本当の制御因子を実験的に探索する方法
多目的問題への対応方法 
 ●機能を1つに決められないケース(化学・素材産業等) 
 ●多目的な機能や物性値の統合的設計方法 
 ●パラメータ設計ツールの説明、全体質疑応答 

実施形式
通常の講義形式で、40名様程度まで受講可能。 

費 用
540,000円(2日間)+消費税+旅費実費(オンラインセミナーの場合不要)。
テキスト・ツール類費用、日当等の一切の費用を含みます。
見積書をお問合せフォームよりご用命ください。
ご希望により、事例相談(コンサル)を内時間で含めたり、または追加することができます 。

2025/01/24

生産技術の評価は2つあり、機能もノイズも違う。

 溶接や接着などの接合技術、切削や穴あけなどの加工技術、成形や鋳造などの造形技術はいずれも生産技術と呼ばれるもので、ものづくりの基本となる技術である。


品質工学でもこれらの生産技術を対象とした機能性の評価や安定性の設計が実施されている。
生産技術の機能性評価、あるいはパラメータ設計の場合、評価対象が2種類あることを押えておくと、考えが整理できる。

1つは、(1)生産プロセスを対象とした評価、もう1つは、(2)生産したモノ自身を対象とした評価である。

溶接技術を取り上げた場合の機能を考える。(1)の場合の対象機能は、溶接機の機能である。溶接機のエネルギーの流れがスムーズで安定しているかどうかである。電力を効率よく接合部での熱に変換して、溶融(+冷却)させる機能である。(2)の場合は溶接した接合体自身の機能である。接合体に構造的な強度が求められるのであれば、荷重-変位特性や、保形性のような機能の安定性を評価することになる。

ノイズ因子(誤差因子)も変わってくる。(1)の場合、製造工程内のばらつきがノイズ因子となる。すなわち人・設備・材料・方法の4Mなどのばらつきである。いつも同じように作れるかどうかの評価である。(2)の場合、その接合体が製品に組み込まれて使用されるときの要因がノイズ因子である。使用条件や環境条件の外乱が中心となる。これはいつでも、どんな条件でも同じように使えるかの評価である。

これらの2つの評価は立場も異なる。(1)の評価は主に溶接機メーカの仕事であり、そのための装置の設計や改善に関係する。(2)の評価は溶接機を使用してモノを作る立場の仕事であり、要求(強度、剛性など)されたモノの設計や改善に関係する。

設計や開発のコンサルするときは、これらをまとめて下表のように説明している。


2025/01/23

田口の「部門評価制度」を読み解く(9)

 「つけかえ制」で連想されるのが、京セラの「アメーバ経営」である。これは、つけかえ制とは異なるアプローチを持ちつつも、いくつかの共通点が見られる。両方とも組織運営において責任の明確化と自己管理を重要視するという点で通じるものがある。以下に両者の特徴と共通点を考えてみる。

「つけかえ制」の特徴

「つけかえ制」は、責任の所在を明確にすることで、問題の早期発見と解決を促進し、従業員の成長と組織の活性化を図る制度である。この制度では、責任の「つけかえ」を通じて、従業員が自己の行動とその結果に対する責任を自覚し、学習と成長の機会を得ることができる。また、失敗を許容し学びに繋げる文化の醸成も重要な要素である。

「アメーバ経営」の特徴
「アメーバ経営」は京セラが採用している経営手法で、組織を小さな単位(アメーバ)に分割し、各アメーバが独立して利益を追求する体系である。この方法では、各アメーバのリーダーが収支を明確に把握し、自己責任のもとで業績向上を目指す。経営の透明性と個々の自律性・責任感を高めることが特徴である。

共通点
責任の明確化: 両システムとも、個々の責任と自立を重要視しており、その明確化が組織運営の基本となる。
自己管理と自律: 「つけかえ制」と「アメーバ経営」はともに、従業員やチームが自己管理を行い、自立して業務に取り組むことを奨励する。
組織活性化と成長促進: 両方の手法は、組織内での積極的な学習と成長を促し、組織全体の活性化を図る。

総じて、「つけかえ制」と「アメーバ経営」は組織内の自主性と責任感を育てる点で共通しているが、具体的な運用方法や目的においてはやや異なるアプローチを取っている。どちらも組織の透明性と効率を高めるための有効な手法と言えるだろう。

株式会社ジェダイトでは、このような自主性と責任感を育てるための技術者教育である、設計品質リーダー育成コースを本職だけでも8年間運営し、100名以上のリーダーがコースを修了し、130億円以上の成果(顧客様企業での試算)を挙げている。今日的な、人的資本経営に欠かせないプログラムとなっている。

(一連の記事おわり)

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2025/01/20

田口の「部門評価制度」を読み解く(8)

 次に、特にテック企業の経営者、投資家にとって重要となる人的資本経営や人財開発の観点でみていこう。人的資本の情報については、昨今、ISO30414(人的資本情報開示のガイドライン)等でも企業に情報開示が求められている。

人的資本経営と部門評価制度:組織学習と人材育成の促進

部門評価制度は、人的資本経営の観点からも大きな可能性を秘めている。問題発生時の原因究明と再発防止策の検討は、組織全体の学習プロセスを促進し、人材育成に貢献する。これは以下の3点に集約できそうだ。

ナレッジマネジメントの強化: 問題解決のプロセスで得られた知見や教訓を組織全体で共有することで、同様の問題の再発防止に繋げる。データベースやナレッジ共有システムを活用することで、組織学習を効率化できる。いわゆる、「しくみ化」の問題だ。

部門横断的なプロジェクトチームの結成: 問題解決には、複数の部門の連携が必要となる。部門横断的なプロジェクトチーム(クロスファンクショナルチーム)を結成することで、多様な視点を取り入れ、より効果的な解決策を生み出すことができる。また、プロジェクトチームへの参加は、担当者にとって貴重な学習機会となり、人材育成にも繋がる。

スキルアップのための研修プログラムの提供: 問題解決に必要なスキルを特定し、研修プログラムを提供することで、担当者の能力開発を促進する。

例えば、開発・設計部門の例では、開発・設計初期段階で政府具合の原因を分析する過程で、新たな技術に関する知見が得られたとする(これには、品質工学の機能性評価や、信頼性工学のFMEA等が有効である)。この知見を組織全体で共有することで、他の部門でも同様の技術を導入する際の参考情報となり、組織全体の技術力向上に繋がる。

このように、部門評価制度は、ナレッジマネジメント、クロスファンクショナルチーム、研修制度などと連携させることで、より大きな効果を発揮する。これらによって、従業員のモチベーション向上や生産性向上に繋げることが期待できる。

(つづく)

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2025/01/19

田口の「部門評価制度」を読み解く(7)

 ここで、組織論の延長で「つけかえ制」とエンパワーメントの関係について考えてみよう。エンパワーメントとは、従業員が自己決定を行い、自らの職務においてより多くの権限と責任を持つようにする管理戦略である。このアプローチは、従業員のモチベーションを向上させ、職場での創造性やイノベーションを促進することを目的とする。具体的には、以下のような手法が含まれる。

権限の委譲:上司が従業員に対して、決定を下す権限を移譲する。これにより、従業員は自分の仕事に対するコントロール感と責任感を強く感じるようになる。

情報の共有:組織内の重要な情報を従業員と共有し、彼らがより情報に基づいた決定を行えるようにする。

スキルと能力の向上:研修や教育を通じて、従業員のスキルと自己効力感を高めることで、彼らが新しい課題に自信を持って取り組むことができるよう支援する。

目標設定とフィードバック:明確な目標を設定し、定期的なフィードバックを提供することで、従業員が自身の進捗を理解し、改善点を識別できるようにする。

責任と成長を促す「つけかえ制」:エンパワーメントと人的資本経営の実現に向けて

現代のビジネス環境において、従業員のエンパワーメントと人的資本経営は、持続的な成長を実現するための重要なキーワードとなっています。本エッセイでは、提示された「つけかえ制」を、これらの概念と融合させながら、責任の明確化と組織活性化、ひいては人材育成を実現するための仕組みとして再構築します。単なる責任追及の制度ではなく、従業員の成長を促し、自律的な組織運営を可能にするための、進化した「つけかえ制」の可能性を探ります。

エンパワーメントと「つけかえ制」の融合:自律的な問題解決能力の育成

従来型の管理手法では、問題発生時の責任の所在が曖昧になりがちで、担当者は問題解決に主体的に取り組むインセンティブを持ちにくい状況にあった。「つけかえ制」は、責任の所在を明確化することで、この課題を解決する糸口となる。しかし、単に責任を「つけかえる」だけでは、担当者の萎縮や責任逃れを招き、組織全体の士気を低下させる可能性も孕んでいるのだ。

そこで、「つけかえ制」をエンパワーメントの促進に繋げるためには、以下の点が重要とななろう。

失敗を許容する文化の醸成: 「つけかえ」られた責任は、罰則ではなく、学習の機会と捉えるべきだ。失敗から学び、成長につなげるための組織文化を醸成することで、担当者は安心して挑戦できるようになる。

問題解決のための資源提供: 責任を負う部門には、問題解決に必要な情報、権限、そして人的・物的資源が適切に提供される必要がある。

フィードバックとコーチングの充実: 上司や同僚からの建設的なフィードバックやコーチングは、担当者の成長を加速させる。「つけかえ」られた責任を、成長の糧とするためのサポート体制を整えることが重要である。

例えば、製造部門が新しい技術を導入した結果、初期不良が発生し、営業部門の売上減少に繋がったとする。従来の管理手法では、製造部門は責任を問われ、萎縮してしまう可能性がある。しかし、エンパワーメントを重視した「つけかえ制」では、製造部門は「つけかえ」られた責任を、新たな技術を習得し、改善につなげる機会と捉える。組織は、製造部門に技術的なサポートや研修の機会を提供し、問題解決を支援することになる。

このような、成果を重視した問題解決と成長の機会を提供するためのサービスを本職株式会社ジェダイトで8年(成果試算金額130億円以上)、前職を含めて20年間提供してきた。設計品質リーダー育成コースにご興味がおありの場合、下記にアクセスして情報を入手していただきたい。

2025/01/18

田口の「部門評価制度」を読み解く(6)

「つけかえ制」において、部門が赤字になった場合の評価・処遇について考えてみよう。以下は本書の記載内容からの論考である。

このような話は制度設計の段階でどのように定めるかによって大きく異なるだろうし、企業の文化や経営方針よって柔軟に対応すべきだとう。 下記、候補となるいくつかの可能性について検討してみよう。

可能性1:赤字はそのまま評価に反映される
つけかえによって生じた赤字を、その部門の業績評価にそのまま反映させる方法。 これは、責任と結果を明確に結びつけるという「つけかえ制」の原則に忠実な方法である。 しかし、部門の士気を著しく低下させる可能性があり、リスク回避的な行動を促進するかもしれない。 また、予期せぬ事態による赤字の場合、部門の努力とは関係なく不当な評価を受ける可能性も否定できない。

可能性2:赤字の一部を会社が負担する
会社が一定割合の赤字を負担することで、部門の負担を軽減し、士気を維持することができきよう。 これは、特に予期せぬ事態や、部門の努力では避けられない赤字の場合に有効である。 しかし、会社側の負担が大きくなりすぎると、制度の効果が弱まる可能性があり、負担割合の設定には、慎重な検討が必要となる。

可能性3:赤字の原因究明と改善計画に基づいた評価
赤字になった場合、その原因を徹底的に究明し、改善計画を策定することを重視する評価方法。 赤字自体よりも、原因究明と改善への取り組み姿勢を評価の重点に置くことで、部門の学習と成長を促すことができる。 この方法では、赤字が必ずしも悪い評価に繋がるわけではなく、改善努力が評価されるため、部門のモチベーション維持に繋がる可能性が高い。 ただし、そのための客観的な評価基準を設けることが重要である。

可能性4:目標達成度合いや他の指標との総合評価
赤字になった部門であっても、他の指標(例えば、顧客満足度、業務効率、新規事業への貢献など)で高い評価を得ている場合は、赤字の影響を軽減する、あるいは相殺するような評価を行うことができる。 これは、部門の活動を多角的に評価し、バランスの取れた評価を行うことを目指す方法である。 ただし、他の指標とのバランスをどのように取るのか、明確な基準を設定する必要がある。

「つけかえ制」の本来の目的に照らせば、それは問題の見える化と組織的な改善、成長、それによる企業の収益最大化であるので、上記の可能性3と4を合わせて検討することが最良と思われる(鶴田私見)。

2025/01/17

田口の「部門評価制度」を読み解く(5)

 「つけかえ制」について例を挙げて考えてみよう。

例えば、製造部門のミスで不良品が発生し、その不良品を廃棄処分する費用が発生した場合、その費用は製造部門の業績から差し引かれる。これは、製造部門が不良品を作ったという「責任」を、費用という「結果」として明確に反映させるということだ。 単に「製造部門が悪いから費用を負担しろ」というのではなく、定量的に測定可能な指標を用いて、責任と結果を結びつける点がポイントである。

さらに、製造部門が新しい省コストの素材を採用した場合、製品の品質に問題が生じ、顧客からの返品が増加するケースを考えよう。この場合、返品にかかるコストやブランドイメージの低下による損失を数値化し、製造部門に「つけかえる」仕組みとする。この例は、短期的なコスト削減が長期的な損失につながる可能性を示唆しており、「つけかえ制」が、各部門に長期的な視点での意思決定を促す効果を持つことを示している。

重要なのは、「誰が悪いのか」という非難の対象を見つけることではなく、
「何が問題で、どうすれば改善できるのか」という問題解決に焦点を当てる
点である。 「つけかえ制」は、問題を発生させた部門に責任を負わせることで、問題解決への意識を高め、再発防止策を積極的に講じるよう促すことを目的としている。

費用への「つけかえ」は、そのための手段の一つに過ぎない。 重要なのは、透明性のある評価基準と、客観的なデータに基づいた損失の算出である。 どの部門が、どの程度の責任を負うべきなのかが、明確に示される必要がある。

結局、「つけかえ制」は、単に費用を負担させる仕組みというよりも、各部門の行動と結果を明確に結びつけ、責任感と改善意識を高めるための管理手法と理解するのが適切である。 最終的な目的は、企業全体の利益最大化である。 各部門が自らの行動に責任を持ち、改善努力を行うことで、企業全体の効率性と生産性が向上すると期待されている。

(つづく)

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2025/01/16

田口の「部門評価制度」を読み解く(4)

 「つけかえ制」を効果的に運用するためには、以下の点に注意する必要がある。

公平性: 評価基準の設定と責任の帰属において、公平性を確保することが重要。
透明性: 評価基準や責任の帰属プロセスを透明化することで、各部門の理解と納得を得ることができる。
柔軟性: 予期せぬ事態が発生した場合にも対応できるよう、柔軟な運用体制を構築する必。
教育とトレーニング: 「つけかえ制」の仕組みと運用方法について、関係者への教育とトレーニングを行う。
継続的な改善: 「つけかえ制」の運用状況を継続的にモニタリングし、必要に応じて改善を行う。

また、「つけかえ制」は、単独で運用されるのではなく、他の制度と連携して運用されることが効果的である。例えば、目標管理制度、人事評価制度、予算管理制度などとの連携によって、より効果的な運用が期待できる。

目標管理制度との連携では、各部門の目標達成度合いを客観的に評価し、責任の所在を明確化できる。人事評価制度との連携では、個人の貢献度を評価し、適切な人事配置を行うことができる。さらに予算管理制度と連携することで、各部門の予算執行状況を監視し、コスト削減を推進することができます。

あらためて、「つけかえ制」は、簡単に言うと、部門の活動によって生じた損失や費用を、その原因を作った部門に「つけかえる」仕組みである。 しかし、単なる罰則ではなく、より正確には「責任と結果を明確に結びつける仕組み」と捉えるべきだろう。

(つづく)

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2025/01/15

田口の「部門評価制度」を読み解く(3)

 部門評価制度のコアとなる「つけかえ制」についてみていこう。

従来の管理手法では、問題発生時の責任の所在が曖昧になりがちだったが、「つけかえ制」は、部門評価制度における責任の所在を明確化し、各部門の自主性と責任感を高めるための重要な仕組みである。問題の原因を作った部門に自動的に責任が帰属することにより、各部門は自らの行動に責任を持つようになり、問題の発生を未然に防ぐための努力を促す効果が期待できる。

「つけかえ制」の導入には、まず、各部門の活動における目標と評価基準を明確に定義する必要がある。各部門の活動が、他の部門の活動にどのような影響を与えるかを分析し、それぞれの活動がもたらす成果と損失を定量的に評価できる指標を設定する。例えば、製造部門であれば、製品の品質、納期、コストなどが評価基準となり、営業部門であれば、売上高、顧客満足度、市場シェアなどが評価基準となる。

これらの評価基準に基づいて、各部門の活動が他の部門に与える影響を数値化する。例えば、製造部門の納期遅れが営業部門の売上減少に繋がる場合、その影響度合いを定量的に評価し、製造部門にその損失を「つけかえる」。この数値化には、因果関係の分析、データ分析、シミュレーションなどの手法が活用される。

「つけかえ制」では、単に責任を「つけかえる」だけでなく、その原因究明と再発防止策の検討も不可欠。問題が発生した場合、原因を特定し、責任を負う部門が再発防止策を講じることが求められる。この過程において、関係各部門間の情報共有と協力が重要となる。

「つけかえ制」を導入することで、以下の効果が期待できる。

責任の明確化: 問題発生時の責任の所在が明確になるため、原因究明と再発防止策の検討が迅速に進められる。

自主性と責任感の向上: 各部門は自らの行動に責任を持つようになり、自主性と責任感が向上する。

部門間の連携強化: 問題発生時には、関係各部門が協力して原因究明と再発防止策の検討を行うため、部門間の連携が強化される。

業務効率の向上: 問題の早期発見と解決により、業務効率が向上する。

企業全体の利益最大化: 各部門が企業全体の利益を考慮した行動をとるようになり、企業全体の利益最大化に貢献する。

(つづく)


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2025/01/14

田口の「部門評価制度」を読み解く(2)

「個人の責任と自由のバランス」

田口は、「すべての人を一人前として扱うことは同時に、自分の仕事の結果に責任を持たせる」と述べている。これは、個人の自由と責任が表裏一体であるということだ。自由な行動を許容する一方で、その行動の結果に対する責任を明確に負わせることで、個人の主体性と組織全体の効率性を両立させるといことだ。

単に「自由」を与えるだけでは、責任感の欠如や、他者への迷惑行為につながる。そこで、田口は、他人に自由を認めることは「その人が自分に与える迷惑をたんに黙認することではない」としている。

さらに「誰でもより大きな目的のために、あるいはうっかりして他人に迷惑をかけることがある」という。しかし、だからといって自由を制限するのではなく、迷惑行為が発生した場合には責任の所在を明確にし、損害の補償や再発防止策を講じることで、個人の自由と組織全体の秩序を維持するための仕組みを構築するということだ。

「部門評価制度」

これまでの単なる技術や設備投資に頼る時代から、人材育成と活用が重要となる時代への転換が強調されている。従来の恐怖心や経済的刺激による管理手法では不十分であり、人間への深い洞察に基づいた管理への転換が必要であると。これらの仕組みとして、田口は部門評価制度を提案し、以下のように説明している。

評価基準の設定
部門評価制度が従来の「手段の標準化と統制」とは異なり、「期待する結果」を明確化し、手段は自由に、結果を評価するという考え方である。品質、納期、コストの3要素を基に、各部門に期待される結果と、定量化すべき要素を導き出す。例えばクレーム損失や納期遅れによる損失の評価は、実害主義に基づいて行うべきである。

つけかえ制
成績不振の原因を他部門に押し付けるのではなく、マイナスの原因を作ったところに損害がチャージされる仕組みを作ることで、各部門の真の実績が明らかになり、真剣さが引き出される。「つけかえ制」は自己管理のためにも必要不可欠な制度である。 さらに、「つけかえ制」の原則として、つけかえを受ける部門の責任者が認めた場合に成立するとし、前工程の遅延を例に、責任の所在を明確にすることを説明しています。

(つづく)

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2025/01/13

田口の「部門評価制度」を読み解く(1)

品質工学の創始者である田口玄一博士(以下敬称略)により、1966年に日本規格協会から発行された、「部門評価制度」と題する書籍が発刊された。約60年前のことである。本稿では、本書の概要を紹介しながら、現代的な人的資本経営やエンパワーメントの概念とのつながりや、実践方法について論考していく。

本書冒頭部分は、当時の日本の企業における管理者育成の問題点と、その解決策としての部門評価制度の必要性を説いている。

田口は、戦後、多くの企業が米国から導入した管理者訓練が十分な効果を上げていないと指摘する。その理由として、管理者は多様な要因の影響を受け、自己の欠陥を認識し、自己変容を促すことが難しい現状を嘆いている。この問題に対する解決策として、本書で提案されている「部門評価制度」が紹介されている。

「まえがき」より、部門評価制度を提案する背景として、以下の三つの問題が挙げられている。

1. 市場シェア減少の原因究明と責任の明確化: 製品品質、研究開発、営業部門間の連携不足。営業部門に製品の市場価値評価を責任を持たせる必要性。

2. 個人の責任と自由のバランス: すべての従業員を一人前として扱い、仕事の成果に責任を持たせる。他人に迷惑をかけた場合の補償方法を明確にすることで、個人の自由と責任のバランスを保つことを提案。

3. 定量的かつ一元的な評価方法: 各部門の成績を定量的に評価し、事業部制では難しい製造部門と営業部門間の評価方法を提案。クレームと納期を相互に補償する一元的な評価方法を確立する必要性を指摘。

これらの問題解決策として、本書では設計品質と製造品質の分離つけかえ制期待する成績の一元化を提案している。これは、最高指揮者の意図に盲従する組織ではなく、個人が自発的に行動を決定する組織がより強いと考える田口の思想に基づいている。

筆者(鶴田)はこの「個人が自発的に行動を決定する組織」について本職で真剣に考え、価値創出の主役である企画・技術開発・設計部門のメンバーを対象に、設計品質リーダー(DQL)育成を実施してきた。

(つづく)


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