2017/03/13

エネルギー比型SN 比の解説⑨

4.4. 従来のSN比の課題(4) ~計算の複雑さ(使用面、教育面での困難性)
エネルギー比型SN比は式の形から分かるように、Veの計算(そのための交互作用項への分解)や自由度の考え方が不要であるため、計算が理解しやすく簡便である。用いる数理は、2乗和の分解だけである。全2乗和STと有効エネルギー成分  Sβが求まれば、有害エネルギー成分はSTSβで求められ、SN×β等への分解は不要である。

 -------------(4.3.4)

4.4節の補足
エネルギー比型SN比において、SN比の分子のSβからVeを引く必要がないと考える数理的な理由、品質工学の思想からくる理由、実務的な理由をいくつか挙げることができるが本稿では割愛する。ここでは、健常な事例ではSβに比べてVeは非常に小さな値であるという理由だけで、実務上は十分である。品質工学会誌に掲載された報文において、標準SN比を用いた40事例を調査した結果、VeSβに対する比は平均13000にすぎない。

なお、公知の事例でも、自由度の計算や2乗和の分解の計算を間違えているものが散見される。これは、計算の複雑さ、理解へのハードルの高さに原因の一端を求めることができるだろう。なぜそのような計算方法になっているのかの理解や、後進への教育の局面で、あまり本質的でない複雑な数理の部分で時間をかけるのは効率的ではない。

4節全体の補足
 2および4で従来SN比の4つの課題とそれに対するエネルギー比型SN比における解決策、その効果を検証してきた。ここでは、エネルギー比型SN比におけるそのほかの利点を付記しておく。
 エネルギー比型SN比の他の利点として、SN比の絶対値化が挙げられる。機能の安定性の相対比較に用いられてきた従来のSN比を、ノイズ因子による傾き(入出力の変換効率、変換係数)の変化率という指標にしたのである。つまり摂氏温度のように差だけに意味があるのでなく、絶対温度のように原点や比に意味を持つ尺度となった。たとえば機能の入出力のグラフ上で、傾きの大きさの1%ばらついていれば40db10%ばらついていれば20dbとなる。そのため、機能の安定性やMTシステムの予測精度に用いるSN比に対して、「○db以上」といった目標値を設定することが初めて可能となる。また、グラフのばらつきのイメージとSN比の値そのものに対応がつくため、計算間違いがあった場合に気が付きやすいことも実務的には重要である。
 本稿では割愛したが、エネルギー比型SN比は品質工学の重要な評価指標である「損失関数」とも完全に整合する尺度になっており1)、その点でも使いやすく、品質工学の本意に沿うものである。


参考文献
1) 鐡見, 太田, 清水, 鶴田:「品質工学で用いるSN比の再検討」, 『品質工学』, 18, 4, (2010), pp80-88 .

おすすめ参考書「エネルギー比型SN比 ― 技術クオリティを見える化する新しい指標


品質工学(タグチメソッド)のコンサル・研修・セミナー・講演のことなら
株式会社ジェダイト(JADEITE:JApan Data Engineering InstituTE)

0 件のコメント: