2017/03/13

エネルギー比型SN比の解説③

2.3. 従来のSN比の課題(2) ~データ数による影響~

機能の入出力の理想的な関係が、ゼロ点比例式でない場合がある。このような場合に、前記のゼロ点比例式のSN比を用いると、入出力の非線形の成分(信号の影響による曲りの成分:たとえば2次の成分)が有害な成分として評価されてしまう。これに対処したのが、田口玄一氏によって考案された標準SNである6)(別途、デジタルの標準SN比もあるため、単に標準SN比という場合、この非線形の標準SN比を指すことにする)。これにより、出力の非線形の成分と、ノイズ因子の影響によるばらつきの成分を分離して、後者のみを評価できるようにした。すなわち図表2.3.1のようなデータを図表2.3.2にようなゼロ点比例式モデルに置き換えて評価する。



標準SN比は2.3.1で表される(21世紀型SN比ともいわれることから、添字を21Cとする。またゼロ点比例式のSN比であることを明示する場合は、添字を20Cとする)。ここに、「」がついた成分は非線形成分分離後であることを示す。またnはノイズ因子の水準数、kは信号因子の水準数、M'^2_barは非線形成分分離後の信号Mの各水準値の2乗の平均値(平均的な信号の大きさ)である。kM'^2_barは、有効除数 ともいう。

-------------(2.3.1)

2.3.14式の分子、分母は、それぞれ単位データ数(nk) 、単位入力量(M'^2_bar)あたりの出力の変動  (Sβ-Ve)と誤差分散(VN)を示している。-Veの部分については2.5で述べる。
さらに、標準SN比では2.3.14式の分母の誤差分散VNを変動/自由度の形で書くと、以下のようになる。


 -------------(2.3.2)
2.3.23式の第1項は、平均的な出力の大きさと出力のばらつきの大きさの比になっており、次元は、[y2]/[y2]=1、すなわち無次元である。第2項は、nkが全データ数なので次元をもたないが、標準SN比が(データ数-1:誤差分散の自由度)に比例することが分かる。したがって、データ数nk2倍になると、SN比は約2倍大きく表示されることになる。機能の安定性の尺度となるばらつきσの変化率が同等でも、SN比の表示値が、全データ数nkによって変わってしまうことは、従来の標準SN比の使用上で留意しておく必要がある。

参考文献
6) 田口, 横山:『ベーシックオフライン品質工学』, 日本規格協会, (2007), pp.77-82.

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